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Data.91 東の果てに集う

 以前のエリカは前髪で左目を隠し、眼鏡をかけていた。髪色は薄い金。

 ……そう考えるとまだ面影がある方か。

 ショートの髪は全体的に左に流れていてまるで流星のようだ。メガネは目立つ赤。髪色もビビットな黄色。

 装備も以前の茶色い革装備ではなく、全体的に明るい黄色を基調としている。


「あなた……エリカ・トリックよね?」


 一応確認しておく。


「うわぁ~! 覚えていてくれたの! 嬉し~!」


「いやぁ、そのアチルから話を聞いていたというか……なんか雰囲気変わったわね」


「でしょ~? マココさんと別れてから自分なりのスタイルって言うのをイスエドの村付近を冒険しながら探したの」


 その結果がこれというワケね。


「そうなのね。まあ、楽しんでそうで良かった良かった」


「ほんとかなり楽しいですねぇ~。昔はリアルと同じように人に気をつかい過ぎてましたけど、もう一人の自分、この世界での冒険者として今は生きてるって感じ!」


 ……彼女も頼りになりそうね。


「あっ! 紹介するね! この子は相棒のサドンちゃん。かわいいでしょ?」


 丸っこいトカゲがこちらを見ている。

 これ立ち上がったら二メートルぐらいあるんじゃない……。


「マー?」


 しかもなんか変な鳴き声だし……。


「ちょ~っとおまぬけそうな顔してるけど、耐性も多くて足も速いの。私が使う雷属性のスキルの影響を受けないのも最高!」


 話が長くなりそうだからここで本題を切り出そうっと。


「それは凄いわね。エリカとサドンちゃんも戦力として考えていいのかしら?」


「もちろん! その為に怪我した兵士さん達を送り届けてここまですぐ戻ってきたんだから!」


「そう、じゃあいろいろとここまで起きたことの説明を……」


「あっ! あそこにいるのはアチルちゃ~ん!」


 エリカは手に雷を帯電させる。


「えいっ!」


 そして、それをナイフのような形に変え、アチル目がけて投げつけた。


「ちょっ!?」


 電気ナイフの速度は速く、一瞬で見張りやぐらの手すりに刺さった。

 エリカとナイフは雷のロープのような物でつながっている。


電瞬雷線(でんしゅんらいせん)!」


 エリカの体が電気となり、雷のロープを伝ってナイフの位置へ、つまり見張りやぐらまでこれまた一瞬で移動した!


「アチルちゃん久しぶり~!」


「ぎゃあっ!! ビックリした!!」


 アチルに背後から抱きつくエリカ。気配すら感じさせぬ早業。

 これは期待できるわね。スキルの使い方は置いといて……。


「もー、エリカさん驚かさないでくださいよ! しかもまた電瞬雷線を使いましたね! 手すりが焦げちゃってるじゃないですか! ちょっとの移動は普通にしましょうって前も言いましたよね!?」


「す、すいません……」


 珍しくアチルが怒っている。まあ、それだけ親しい仲とも受け取れる。


「まあまあ、アチル。そのくらいにしてエリカにも今の状況を説明してあげましょう」


「んー、マココさんがそう言うんでしたらこのくらいにしておきましょう」


 説教が終わった二人の元へはしごを登って向かう。

 おー、急造の見張りやぐらでも結構高いし、遠くまで見通せてなんだか爽快ね。


「ん? よくよく考えると私が村を行き来していた時間で、どうやってこんな丸太の壁とか見張りやぐらとかを建てたの?」


「それを今から説明するわ」




 > > > > > >




「なるほどなるほど~。では、その可愛いと評判のハーフエルフの見に行こうかな~」


「シュリンは怒ると怖そうだからやめといたほうがいいってか、やめなさい」


 その場では笑ってるけど後で引くくらいやり返してきそうなイメージがあるわ、シュリンには。


「じゃあ、これからずっとここで見張り? それはなんだかなー……あっ、魔石がたくさん必要って話だったね? 私、村周辺というか東のダンジョンには詳しいんだけど、確か魔石がたくさん採れるダンジョンがあった気がするなぁ~。今から行かない?」


 確かにずっとここにくぎ付けというのもアレだけど、流石に今ここを離れるには心配事が多すぎる。

 せめてクロッカスが復活してからね。さっき様子を見たけど、ずいぶん元の形に修復されていた。中身も元のままだったら良いのだけど……ッ!

 空気が揺らぐ。何か来たッ!

 本能的に魔石ブーメランを投擲する。


 グシャ!グシャ!グシャ!


 三つの音。丸太の壁の向こうから飛んできた何かが撃ち落とされた音。

 一つは私が撃ち落としたとして、後二つは……。


「痛っ! いたたたたたっ!」


 一つはアチルだ。正確にはカースドクロスボウに宿る心であるクララが反応して撃ち落としたみたい。

 アチルは壁の方向に背を向けていたから、右腕がひねりあげられるような体勢での射撃になってしまった。今は肩を抑えてうずくまっている。


「もう一つは……」


 追撃が来ないか警戒しつつ周囲を観察。

 見つけた。サイクロックスが【岩砲(がんほう)】で飛来物を撃ち落としていた。

 しかも威力不足だったためか、飛んできた物の原型が残っている。


 <バレットホッパー:Lv35>。

 これは本当にバッタ……なのかな。まるで弾丸のような頭部をしていて、虫っぽさが薄い。脚も太く強靭になっていてまるで効率を計算され尽くした部品のようだ。おかげで大して気持ち悪さは感じない。


「く、また油断してしまいました……。マココさんといると甘えてしまいます……」


 立ち上がったアチルが私の傍まで寄ってくる。


「バレットホッパーでしたか……。こいつは真っ直ぐにしか跳べないので、注意深く見張りをしていれば跳びかかる準備動作をしているところを仕留められるはずなんですけど……」


「まあ、上手くいかない時もあるわよ。気にしない気にしない。にしても奇妙な見た目ね」


 今、ストライダーが細長い足でツンツンしている瀕死のバレットホッパーを指差す。


「虫系のモンスターは体が大きくなった代わりに飛行能力が退化したものが多いんです。その分、本来持っていた特徴が強化されていて攻撃方法がユニークなんですよね。おかげで戦う方は大変です」


「そうねぇ。こんなのをずっと注意し続けないといけないなんて無理よ。早く門だけでも完成させないと」


 あっ、ストライダーが足でバレットホッパーにトドメをさした。

 ……まさか経験値稼ぎしてた?

 守護者(ガーディアン)たちは真面目に仕事してるなぁ。彼らの成長も楽しみね。


「クコココ……マココだったっけ? お兄……あたしと同じ『悪魔』の心を宿すモノの持ち主として、それなりの実力は持ってるみたいじゃん?」


「あっ、クララったらやっと立ち直ったの?」


 アチルが右手の『カースドクロスボウ』を撫でる。


「お、落ち込んでないわ! 誰があんな話した事もない奴のことでへこむか! クココッ!」


 ガントレットからクロスボウが分離し、変形した。


「改めて自己紹介。あたしはクララ! そしてこの姿は邪悪なる(カース・オブ・)啄木鳥(ウッドペッカー)!」


 クロッカスのカラス形態よりかなり小柄なキツツキ。それが彼女の生命形態(ライフフォーム)みたい。

 黒色がメインなのはクロッカスと同じだけど、赤とか紫じゃなくてピンクがところどこと入っているのがかわいい。


「アチルやエリカから話は聞いていたぞマココ。相当評判が良かったから期待してたけど、ガッカリせずにすんでよかったわ」


「そりゃどーも」


「それに比べてアチルは何よ。油断し過ぎじゃん! いつもの集中力はどこいったの!?」


「うう、ごめんなさい……」


 クララの長いくちばしでツンツンつつかれるアチル。


「クララも敵に気付いてたなら教えてくれれば良かったのに~」


「エリカもねぇ……。索敵能力に優れたジョブなんだから真っ先に気付きなさいよ」


「遠距離からの攻撃は専門外だもーん」


「もー! この子達ったら!」


 コンコンコンコンッ!

 見張りやぐらの柱をくちばしで突っつきだすクララ。


「あー! クララダメだって! 壊れちゃいますよ!」


 アチルが必死に止める。

 門が出来るまでヤグラが持つか心配な扱いね……。


「むっ! ほらほらふざけてる間に新手が来たわよ」


 全員門の向こう側に注目。

 (うごめ)く影がまた見えた。が、今回はかなり多い。10……20はいるか。


「またですか……。これじゃ休む暇がありませんよ!」


 アチルが戦闘準備をしつつ嘆く。

 確かにこれから勢いが増してくるというのならもっとこちらにも手数がほしい。

 守護者たちのように自動で迎撃してくれるシステムをもっと用意出来ればいいんだけどね。敵が範囲に入ったら勝手に攻撃してくれる大砲とか。

 シュリンが起きたら聞いてみよう。


「ふふふ……『電瞬のエリカ』と呼ばれる私の戦闘能力をお見せしよう。いくわよサドンちゃん!」


「マー」


 エリカはやぐらから丸太へ、丸太から地面へと跳ぶ。

 サドンちゃんは丸太の壁に張り付いて登り、それを乗り越えた。


「クララ、私たちも!」


「汚名返上しないとね」


 アチルとクララもエリカに続く。


「私も行くか」


「ああ、そうだな」


 ……またいいところで来るじゃない。


「あら、調子はもういいの?」


「いや、ダメだぜ」


「何で起きてきたのよ!」


 思わずツッコんでしまった。

 クロッカスはカラス形態でヤグラの手すりに留まっていた。

 見た目はほぼ修復されている。


接続形態(リンクフォーム)は無理だ。俺のダメージがマココにも反映されるからな」


「無理する必要はないわ。あのくらい私たちでどうにかなる」


「体が動くのにジッとしてるのは性分じゃなくてな。まあ、後ろからサポートぐらいはするさ。俺自身のスキルは俺だけでも使えるじゃん? 相手が虫ならよく燃えるだろう」


「……危なくなったら引っ込むのよ」


「命を懸けるほどの戦いではないことはわかってるさ。リハビリってやつだ」


 中身が変わってないようで本当に良かった。これで一つ心配事が消えた。

 一つ解決したらまた一つ……。今度は目の前の敵を片付けるとしましょうか!

今回で年内の更新は最後にになりそうです。

それにしては普通の話になりましたが、なかなか季節感を出すのは難しいですね。

記念といってはなんですがAUOは100万PVを突破しました!ありがとうございます!何もかも読者のみなさんのおかげです!

いろいろ迷いながら考えながらの執筆ですがまた来年も読んでいただけると嬉しいです。アドバイスや感想も待ってます!

それではよいお年を!

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