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Data.83 アイテムボックス

 フサァ……っと草原に降り立つ。


 ◆現在地

 旋風の吹き渡る草原


 位置表示も地上のものに変わる。

 つまり、これにてダンジョンから脱出完了ということだ。


「さて、アイテムボックスはクリア条件を満たした瞬間入手できるという話ですが、何が起きるんですかね? 僕、そこはあえて調べてないんですよ」


「私も」


 『証』の入手時にも演出があったのだから、【アイテムボックス】入手時にも何らかの演出があると思いたい。

 もうすでにステータスに追加されててそれだけって事はないと思うけど……。一応チェックしておこうかしら。


 と、思った矢先手の甲が光り輝く。

 赤青緑三色の光は絡み合い、空中へ飛び出し、人の形を作る。


『三つの試練を乗り越えし者たちに、空間を操る(すべ)を授けん……』


 三色の羽を持つ妖精が両手を広げると周囲に光の花びらが舞う。

 そして、それは私たちに降り注いだ。

 しばらくして妖精はニッコリ微笑んだ後、姿を消した。

 これで……手に入ったってことでいいのよね?


「早速見てみましょう」


「そ、そうね」


 ステータスを開く。


 ◆ステータス詳細

 ―――基本―――

 ネーム:マココ・ストレンジ

 レベル:54(↑10up)

 レイス:人間

 ジョブ:回帰刃狩人(ブーメランハンター)

 ―――装備―――

 ●武器

 邪悪なる(カース・オブ・)大翼(ウイング):☆55

 超電磁ブーメランHC(ヘビーカスタム):☆38

 HS(ハンドスピナー)ブーメランRM(ライトメタル)(×6):☆20

 ●防具

 霧の盾:☆40

 牛角のカチューシャ:☆2

 鉄包帯のはらまき:☆10

 風来の狩人のポンチョ:☆25

 風来の狩人のベスト:☆18

 風来の狩人のシャツ:☆15

 風来の狩人のハーフパンツ:☆15

 風来の狩人のグローブ:☆12

 風来の狩人のブーツ:☆12

 ●装飾

 聖なる首飾り:☆25

 ―――技能(スキル)―――

 ●任意

 【塵旋風(ジンセンプウ)】Lv17(↑5up)

 【ブーメ乱舞(ランブ)】Lv16(↑4up)

 【猛牛(ブル)ブーメラン】Lv5(↑2up)

 【昇龍回帰刃(ドラゴンブーメラン)】EVOLv10(↑6up)

 【回帰する生命ブーメラン・オブ・ライフ】Lv2

 ●常時

 【悪戯心を持つ者】

 【(シン)回帰刃(ブーメラン)術】EVOLv15(↑7up)

 【解体】Lv24(↑4up)

 【回復魔術】Lv2

 【腕力強化】Lv24(↑6up)

 【アイテムボックス】


 あ、あったーーーー!!

 なんか他にも見慣れないスキルが増えてるけどとにかく【アイテムボックス】がある!!


「やりましたね、マココさん!」


「うん!」


 長かった戦いもこれにて決着!

 いやぁ、本当に良かった……。


「早速その効果のほどを……アイテムボックス!」


 アランが懐から取り出したポーションのビンを持ち、スキルを発動する。

 すると、そのビンが消えた。


「す、すごいぞ、これは! どうやら入るアイテムの数は全部で100個! こうやって入れた物をボックスウィンドウで確認する事も出来ますよ!」


 空中にウィンドウを出現させ、先ほど入れたポーションのビンをタッチ。

 再びポーションはアランの手に収まった。


「入れられる物はアイテムのみ。つまり、武器とか防具とか素材とかアイテムとしてのステータスが表示される物のみみたいですね。あと、思い浮かべるだけでアイテムを取り出す事も出来るようなので、戦闘中でも使えそうです!」


「あ、ありがとう……」


 全部シンプルに説明してくれたわ。

 100個か……恐ろしく便利ね。

 でも、レベルの表示がないから容量を大きくするにはまた何らかの特殊な手段が必要になると予想できる。


「とりあえず回復アイテムとか入れとこーっと!」


 テンションの高いアランはどこに持っていたのか、多数のアイテムをボックスに入れ始めた。

 私も一応手に入れた素材とかを入れておく。

 うぉぉぉ……何度も言うけど便利。しかし、考えなしに物を入れるとすぐいっぱいにもなりそう。数週間もしたら拡張しないかなぁとか考えてそうだ。


「マココはーん!」


 ボックスに感動していると、背後からやってきたベラに声をかけられる。

 他のみんなも一緒のようだ。


「まさか待っててくれたの?」


「そりゃもちろんですわ! 上から飛んで降りてくるからビックリしましたわ! まぁ何はともあれ、無事アイテムボックスをゲット出来たようやな!」


「ええ、みんなのおかげよ」


「またまた~。あたしらこそマココはんのおかげでゲットできたみたいなモンやで!」


「いいなぁ~、マココさんのところはお迎えがあって……」


 さっきまでテンション高かったアランが今度は拗ねている。

 忙しい人だ……。


「んー? そこにいるじゃないお仲間さんがー」


 アイリィがアランの背後を指差す。

 そこにはいつの間にか獅子舞のような獣を模した被り物をしたプレイヤー?がいた。


「わっ!! クリカ・ラいたの?」


 ポクポクポクポクポク……

 歯を打ち鳴らすクリカ・ラと呼ばれた存在。


「はー、そうなのか。ありがとう」


 何言ってるかわかるんだ……。


「おおっ!? そこにいるのはかのシャルアンス聖騎士団のリーダー、アラン・ジャスティマではありませんか? それに見たことのない団員まで!」


 この声は……勢揃いねぇ。


「あら、興味ないフリしてちゃっかりアイテムボックスを入手したヴァイトまで私のお迎え?」


 地面に降り立ち、黒い翼をたたむヴァイト。

 彼は私に負けてペナルティをくらってから一時イベントから離れていたものの、封鎖解放後イベントが予想以上に長引いている状況を見て普通に攻略してしまったのだ。メンバーのスリッパーと共に。

 まぁ、『してしまった』と私が言う権利はないのだけどなんとなく。


「ははは、やっぱり便利ですよアイテムボックスは。マココさんも無事入手できたようで何よりです!」


「そりゃどーも」


 流石にあの程度の嫌味には反応しないか。流石ね。


「あっ、キミがヴァイトくん? やあやあ、動画は何本か見させてもらってますよ」


 アランがヴァイトに軽く話しかける。

 私が言うのもなんだけど、見た目が白と黒で対照的な二人よね。


「それはありがたい! これからも好奇心をくすぐる動画をご提供いたしますよ! ……その為と言ってはなんですが、ぜひとも聞かせていただけませんか? その白い剣とのなれ初めでも……」


 営業スマイルから少し影のある笑みに変わるヴァイト。


「やっぱりキミも探してるんだ……【心】の武器を」


「おおっと、勘違いしないでいただきたい。確かに個人的興味がないと言えば嘘になります。が、私のファンの多く……いや、AUOプレイヤーの多くがその特別な道具を求めていることは事実です。ぜひ、情報がほしい……ほんの少しでもです」


「そうだね……強い武器が欲しいよね、みんな。でも、教えてあーげない!」


「……ふふっ、一筋縄ではいかないと思っていましたよ」


「マココさんなら教えてくれるかもよ?」


「えっ!?」


 いきなり私にふらないでよ!


「残念ながら、マココさんが名を冠する(ネームド)モンスター討伐でその黒いブーメランを手に入れたのは有名な話でしてね。スクープにはならないんですよ」


 そういえばそうだったわ。


「まあいいでしょう。初対面で重要な情報を頂けるとは思っていませんでしたから。今回はご挨拶ということで」


「ハハハッ! これからもよろしくね!」


 アランが笑顔で返す。こういうところを見ると大物よね。


「じゃ、こっちはお迎えも来てくれたんで帰りますね。マココさん、あなたは強い。今度も味方として隣で戦えれば嬉しいです。ほら、シロムクも一言」


「強い……以前に荒い。我と肩を並べて戦いのならばもっと腕を磨くことだ」


「最後まで可愛くないヤツだな」


「クロッカスとやら……ただ赤髪の女の動きに合わせてやっていれば良いというものでもないぞ」


「アンタこそ、振り回し過ぎて嫌われないようにな」


「何っ!?」


「まぁまぁ……」


 またケンカが始まりそうなので私が〆るか。


「あなたも強かったわアラン。私と違ってまともにね。だから敵に回したくないと思ったわ。次も味方なら良いんだけどね」


「それは光栄です。では、いずれまた……」


 アランとシロムクはクリカ・ラと共に去っていった。

 白い騎士団長と白いフクロウ。いずれまた出会うことは間違いない。それがどういう状況なのかはわからないけど。


「じゃあ、私たちも町に戻ってこれからのことを決めましょうか」


 イベントが終わってもまだまだ冒険は続くのだから。

これにて2ndSTAGEは完結となります。

途中更新が止まってしまいましたが、また再開しここまで書けたのは読者の皆さんのおかげです。本当にありがとうございます!

振り返りなどは活動報告にまた書こうと思います。


3rdSTAGEはすでに今書いているところです。

プロットといえるレベルかわかりませんが、一応章の流れやオチをざっくりとメモしてありますので、これをもとに今までよりスムーズに執筆出来ればなと。

次回の更新は新章の開幕ということで早めにします(明日にでも)。

長々と書きましたが、これからもAUOをよろしくお願いします!

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