Data.100 TYPE:Breaker
◆現在地
架け橋の砦
黒い炎の中に白い光の粒子が混じる。
強敵ダイダイオウグソクムシが分解され、データの破片へと還っていく。
「勝った……」
『破壊の怪鳥翼』を思わず取り落す。この新形態はピーキー過ぎる。
基本は今までの形態で戦いたいものだけど、切り替えとかできるのかしら?
あまりに攻撃力ばかり求めてしまったせいで、もうこの形態で固定されてしまったとか……。ステータスを見てみるか。
てか、今まで接続形態でステータス画面を開いたことなかったわね。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:マココ・ストレンジ
レベル:70
レイス:接続者
ジョブ:邪悪なる悪魔<TYPE:B>
―――装備―――
●武器
破壊の怪鳥翼:☆X
●防具
ワイルドバトルウェア:☆X
―――技能―――
●任意
【邪悪なる噴火】LvX
●常時
【悪戯心を持つ者】
【真・回帰刃術】EVOLv25
【解体】Lv32
【回復魔術】Lv2
【腕力強化】Lv35
【アイテムボックス】
気になる事が多すぎる……。えっと、上から攻めるか。
種族の『接続者』は接続形態だからかな?
ジョブの邪悪なる悪魔は初めて接続形態になった時ノリで名乗ってたような記憶がある。
気になるのは<TYPE:B>ね。BということはAやCもあるということなのでは?
思考をめぐらせながら<TYPE:B>の文字をツンツンする。
『TYPE:Breakerから他のTYPEへ切り替えますか?』
「ええっ!?」
しゃ、しゃべった!?
えーっと……。
「き、切り替えてください」
『了解しました。TYPE:Cloverへと切り替えます』
すると、全身が炎に包まれ一瞬で私の姿が変わった。
これは……以前から使っていた接続形態の姿だ。ゴスロリアーマーにX字のブーメラン、間違いない。
こちらでもステータスを開いてみる。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:マココ・ストレンジ
レベル:70
レイス:接続者
ジョブ:邪悪なる悪魔<TYPE:C>
―――装備―――
●武器
四枚の死翼:☆X
暗黒雷電ブーメラン:☆X
HSブーメランDB(×6):☆X
●防具
黒霧の盾:☆X
ゴスロリアーマー:☆X
●装飾
邪なる首飾り:☆X
―――技能―――
●任意
【獄炎灰塵旋風】LvX
【連鎖縛糸炎】LvX
【暗黒物質堕龍回帰刃】LvX
●常時
【悪戯心を持つ者】
【真・回帰刃術】EVOLv25
【解体】Lv32
【回復魔術】Lv2
【腕力強化】Lv35
【アイテムボックス】
TYPE:Cか。Cloverの頭文字をとっているようね。
こっちはBと違って武器や防具が一つではなく、変身前の装備が変化したものがいくつかある。
そして、どちらの形態も常時スキルは据え置きで任意スキルは専用のものに変わっているみたい。
そうなると気になるのは『X』。
恐る恐る『X』の文字をタッチする。また何か聞けるかも……。
『Lv及び☆欄に表示されるXには装備及びスキルの所持者のレベルが代入されます』
また喋ってくれた。落ち着いた女性のボイスだ。今までの無機質なシステムボイスと少し違い人間っぽさがある。
さっきは驚いたけど、冷静に効くと落ち着くいい声質ね。
まあ、それはさておき……『X』には私自身のレベルが入るようだ。
今、私のレベルは70だから『LvX』は『Lv70』といった感じかな。これってすごくない?
接続形態の異常な強さはこれに支えられてたのね。
ふむふむ、大体のことはわかったわ。
今回得た新たな姿は接続形態のバリエーションで、以前の姿(TYPE:C)の完全な上位互換または進化した姿というワケではない。
攻撃力は段違いに上がった代わりに防御力・機動力は致命的にまで低下している超アタッカー形態だ。
汎用性はCの方が圧倒的に上なので、Bの使いどころはよーく見極めないと文字通り死ぬ事になりそうだわ。
「普段はとりあえずCの方に変身すればいいかな……って、うわわっ!?」
急に巨大な蟻が襲い掛かってきた!
どうして……じゃない!
まだ虫の残党が残ってるんだった。王の敗北に一時的に行動を停止していたみたいだけど、どうやら王亡き後もその遺志を継ぎ前へ前へと進みだしたみたい。
護衛の虫たちの中には門を飛び越えられるタイプもいる。王がいなくなった今、単独で首都に向かうかもしれない。
「クロッカス、いける?」
「なんとかな。早めに終わらせてやるとしよう」
「同感」
体力も魔力もスタミナも残り少ない。
しかし、王は討ち取った。このまま油断せずに残党を片付けるとしましょうか!
> > > > > >
「開門!!」
金剛大門の門が開く。
重厚な門は一部の人間の命令でのみ開き、正当な手段で開かれる場合は自動ドアのように軽快に開く。逆に無理に押し開こうとすると見た目通りの重さが襲い掛かる仕組みになっている……らしい。
もちろん私にも門を開閉する権利は与えられている。
なので虫の軍団の残党を狩り終えた今、その権利を行使してみたってワケね。
「マココさーん!!」
門が開ききるといきなりアチルが抱きついてきた。
胸に顔を埋め、両腕でギュウッと締め付けてくる。
接続形態を展開してるままだったら酷いことになってたわ……アチルが。
「うわーん! 無事でよかったですー!」
「アチルこそ無事でよかったわ。最後まで助けてくれてありがとうね」
「そ、そんな私なんて大したことしてませんよ!」
「いいや、本当に助かったわ」
今度は私が逆にアチルをギュウッと抱きしめる。
「あっ、マココさん……」
アチルの顔が赤くなる。
「い、痛いです! 背骨ががが!」
「ご、ごめんなさい……。慣れないもんで加減がわからなくて……」
すぐにアチルを解放する。
「ううっ……でもマココさんの熱い気持ちは伝わりましたから……」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
「もー、マココさんばっかりアチルちゃんとイチャイチャしててずるーい!」
私とアチルの間に入ってしたのはエリカだ。
何はともあれ元気そうで何よりね。
「エリカもよく頑張ってくれたわね。ありがとう」
「まあサポートが精一杯だったけどね。火力の大事さを痛感したわ」
「私の火力も私自身より武器が特別ってのが大きいけどね。ね、クロッカス?」
「よくわかってるじゃん! まっ、マココの性能の引き出し方も悪くはないがな」
「うー、そういうところを見てると他のプレイヤーがネームドウェポンを欲しがる理由がよくわかるなぁ? いいなぁ?」
エリカは羨ましそうにクロッカスを眺める。
「私たちはまだまだだね、クララ」
「……悔しいけど認めざるを得ないわ。正直カッコよかった。どうすればあんなに強くなれるの?」
クララは私ではなくクロッカスに聞いている。
「わからねぇ! ノリだノリ! ……俺はむしろお前みたいに遠くからスマートに仕留めるスタイルに憧れるがな。どうしても俺たちじゃ力だけのゴリ押しになりがちだ。だがしかし、それが合ってるとも感じてる。結局自分に合った方向に能力を伸ばしていくのが強くなる近道だろうさ。この世界じゃ誰かの真似事はあまり良くないからな」
……真面目に考えてるじゃない。素直に感心するわ。
「自分に合った方向……か。クココココ! ふんっ、そのうち追い抜いてやるんだから! 余計なことを教えたと後悔するがいい!」
こっちは素直じゃないなぁ。そこがまたかわいいんだけど。
「せいぜいやってみるこった。楽しみにしてるぜ」
さて、ひと段落ついたところで気になるんだけど……。
「ベラとかユーリは? まさかやられちゃったり……」
「いえいえ、お二人は……」
「ここにおるでー! ちょいと病み上がりのお嬢さんのお世話をしてたところですねん」
「ゴーレムたちの修復作業を始めようとされるので止めるのが大変でした……」
ベラそしてユーリの声とともにキィキィ……という木製の何かが軋む音が聞こえる。
「シュリン……」
門の創造後、倒れてしまったシュリンが目の前にいる。
車イスに乗り、普段と変わらぬ表情を浮かべるその顔をしばらくジッと見つめる。
「…………」
「…………」
……まだ何も言えることはないって事なのね。
「もう体は大丈夫なの?」
「ええ、おかげさまで。情けないところ見せちゃったわね」
またしばしの無言。
「シュリンが創ってくれた門のおかげでアクロス王国は救われたわ」
「ふふっ、みんなの力があってこそよ」
なんとなくぎこちなかった空気も少しずつ緩み、みんなで勝利を喜び合った。
その後はまずゴーレムたちを修復し、戦利品のドロップアイテムを集めるという予定がたてられた。
シュリンは皆の心配をよそにゴーレムたちをミボボと共に直していく。
今回の戦いで気になった事はたくさんあるけれど、シュリンことに関しては待ち続けるわ、彼女から話してくれるまで。
いつの間にかDataも3ケタに突入!
その割に説明回ですが、これから3rdSTAGEも中盤に突入していく予定なのでこれからもお付き合いただけると嬉しいです!




