外伝1 リリコの場合
大変間があいてしまい申し訳ありません。(スライディング土下座)
ようやくぼちぼち書けそうなので、リハビリを兼ねて
過去話を語らせます。
せ…設定思い出すためじゃないんだからねっ
外伝1
百合子の物語
私が服というものに興味を持ったのは小学5年の時だった。
忘れもしない、小学5年の夏休み8月6日のことだった。
私は母親の実家に夏休み中預けられていた。
父親は商社に勤めており、めったに顔を合わせない人で今ではかおも思い出せない。
思い出すのはダークスーツの背中だけ。
母親はキルト作家として活躍していた。
在宅はしていたが、私と遊んでくれるようなことはあまりなかった。
おとなしく母の縫物を見ている限り放置される。
あの時裁縫の技術を知ることができたのは大きいと思いますし、育ててくれてありがとうって思ってますよ。
いやー、こうやって客観的になるとさみしい家庭に聞こえるね。
いま思うとだれかほかの人の人生みたい。
だって私はこちらでの生き方が本来だと思っているしなあ。
変よね?
こちらに流されてきた、異邦人なのに、こちらの方が生きている実感があるなんてね。
そりゃここについたときは、さんざん騙され、利用されましたよ。
それは姫が悪いわけじゃないし。
何も知らない私が悪かったのだし、信用を悪用したあいつらが悪い。
信頼を裏切ったあいつらが一番悪い。
いつか自分の手でしっかり復讐したいと思ってますから。
だからもう姫が罪悪感を感じることはないんです。
もう何も知らない異世界人じゃないんです。大丈夫ですよ。
捕まえたら私にも復讐させてくださいね、よろしくお願いします。
他力本願ですみません。
あ、話ずれましたね。
なんでドレスに興味を持ち始めたか、でしたね。
小学5年というのは10歳くらいの子供のことなんですよ。
夏休みというのは、暑すぎて勉強するのが困難な時期に学校全体を休みにする時期ってことです。
だいたい2月間くらいですね。
その間にやるべき課題も出ますからまるっきり休みってわけじゃありませんよ、姫。
父も母も忙しかったので私にかまう時間がなかったんですねえ。
小さい時は夏学校に預けられてましたよ。
ああ、山や海で遊びながら自然の中で生活する方法を学ぶんです。
乗馬とかも習いましたよ。
また話がずれますね。
あの小学校5年の夏は、父も母も私の夏休みをすっかり忘れてたらしいんですよ。
で、親戚に連絡を取り、祖母の家に2週間行くことになりました。
その他の期間は塾ですよ。
塾は、ええと、より良い上級な学校に行くために勉強する場所、かな。
その祖母の家で私は運命の出会いをしたんです。
祖母は昔タカラジェンヌだったんですよ。
タカラジャンヌっていうのは、女性だけの演劇集団に在籍していた人、っていう意味です。
そう、女優だったんですよ、うちの祖母。
歌もうまいし、ピアノもいけましたし、日舞もできたんですよ。
あ、ピアノってのは鍵盤楽器でこちらでいうと・・ええとマサジオでしたっけ。あれです。
で、日舞っていうのは、あ、あちらのダンスの一種です。
どんな感じ・・一人でゆったりと踊る感じで、手先足先まで神経細やかにおどるんですよ。
私にはできませんよ。無理です、やりません、できません。
それで!
祖母に連れられて、宝塚、女性演劇集団の舞台を見に行ったんです。
その時の演目があちらの世界の歴史もので、女優さんが着ているドレスがすごく素敵で。
着てみたい、なるのが普通の反応らしいんですけど、祖母もそのつもりで楽屋で着せてあげるつもりでいたらしいですけど。
私は着るよりどうやって作るのか、って方に興味が行ってしまって、
主役女優さんがせっかく目の前にいるのに、お針子さんに話を聞いてました。
主役の女優さんなんて同じ生き物と思えないほど綺麗で、その人の着たものを一時でも私みたいな不細工が着たらあのキラキラした雰囲気がなくなっちゃう、って本気で思って固辞しましたよ。
女優さんが苦笑いしてましたよ。
その代りと言ってはなんですけど、お針子の主任をよんで下さいまして。
根掘り葉掘り聞きました。
どういう縫い方するのか、パターンはどうするのか、お針子になるためには何が必要なのか。
主任のひと、上野さんは厭な顔しないで丁寧に教えてくれました。
絶対に・・10年後・・・同じ・・・職場で、は、働こうね・・って・。
す、すみません。
泣くつもりなかったんです。
元いた世界に何の未練もないんです。
だけど、上野さんと一緒にドレス作りたかったな。
ちゃんとお礼も言いたかった。
それだけが本当に心残りです。
私に生きがいを与えてくれて、目標を示してくれて。
そのための技術のつけ方も教えてくれた。
こうして姫様のドレスを作れるのも、上野さんのおかげなんです。
だから、・・・もしできるなら。
お礼を言いたい。
祖母はこちらに流される前になくなってますし。
両親には何とも言いようがないですけれど。
こちらで生きていくことができる、その礎となった上野さんにお礼を言いたいなあ。
あ、すみません。私の話ばっかり。
そういえばあの偽サカタヒラたちには私が流されたとき持ってたスケッチブックを盗られちゃったんですよね。
バックは鍵だったのでそのまま持ち出せたんですけどね。
大した枚数の絵はかいてませんし、一回書いたデザインは忘れないので、いつでも再現できるんですが。
新作として発表されたら・・困るなあ。
あ、ウエディングドレスのデザインもあったんですよ。
こんな感じの。
あいつらが持ってきたら笑っちゃいますけど。
私が姫様のおそばにいるって知ってるからそんなことはしないかなあ。
まあ、今私とサカタヒラ先生が作っているこれに比べればよくないですし。
こちらの布では作れないと思いますよ。
作ったらとても重くなりますしねえ。ダマスクっぽい生地が主流じゃ無理がありすぎる。
タフタはこっちで作り始めたけどまだアルシェス独占状態だし。
織り方習っといて本当に良かった。
上野さんありがとう。
姫の晩さん会のドレス着心地どうでした?
よかった。
ひ、姫様っ・・・何を。
上野さんに感謝をしてくださるのですか。
姫様・・・あ、ありがとうございます。
頑張りますね。
最高傑作を作って見せますよ!
残念な王子が霞むドレスをつくりますともさ!
次はサカタヒラの予定。




