2-7
えーお待たせしてしまったと思います。
本当にすみません。
コサック踊って腰痛めたことにしてください。
この後、久々ザッチョ王子の番外を連続投稿します。
(短いです)
たぶんですがこの話で10万文字を超えるようです。
なのにまだ2日目お昼・・・どうしよう。
読んでくださる方が少しでも気にいってくださいますように。
ヽ(´▽`)/へへっ
2ー7
「つながったよ。試してみて?」
あっさりと神王猊下が私に向かってティーカップを渡した。
「サカタヒラ。聞こえているかしら?」
のぞき込むと確かにサカタヒラが映っている。
まったくこの人はどれだけのことができるのか。
頭が痛くなってきた。
「小姫さま。ご無事の御輿入れ、おめでとうございます。」
私があまりの常識外の出来事に軽い頭痛を覚えていると、
カップの向こうで、サカタヒラがそう言った。
その言葉で私は自分の役割を思い出すことができた。
神王の規格外な行動はいまにはじまったことじゃない。
悩むだけ時間がもったいないわ。
「ありがとう。サカタヒラ。
さっそくなのだけれど、本題に入っても?」
サカタヒラの祝いの言葉に謝意を表明して、さっさと本題にはいる。
「よろしくお願いします」
サカタヒラの答えを聞きながら、部屋に集まった人々の顔をみまわすと、しっかりサカタヒラの言葉を聞くことができているようだった。
すごい仕掛けだなあ。
「まず、サカタヒラに聞きたいのだけれど、どこまで知っているのかしら?」
単刀直入に切り出す。
「では、わたしの知っていることを簡単にもうしあげることにします。
もし事実誤認などがありましたら、訂正をお願いしたいです。」
サカタヒラの知識を得てから、私たちの知識を加えていく、その方法が今のところ一番わかりやすく手っ取り早いだろうと判断した。
「ええ、わかりました、はじめてください。」
そういって先を促した。
「まず、わたしが実害をうけたのは盗作疑惑のことになります。
わたしやわたしの工房がデザインしたもしくは制作までしてそのまま発表されなかったドレスなどが出回っていることです。
これはわたしのところだけでなく、アルシェスの有名なドレスメーカーが軒並み被害に遭っていることがわかっています。」
「え、サカタヒラとリリコだけではないの?」
「ええ、エンリケの工房でも、スロバニス、チャイロー、スザレオン、カルロッタのところでも確認されています。それも、すべて同時期で、だいたい10年前のものから4年前くらいの約6年間
のデザインが対象ですね。」
サカタヒラのきりっとした眉がひそめられる。
すっきり系の美人は怒っても勇ましい、戦乙女みたいだなあ。
「だから、昨日の晩餐は一昔前のものばかりだったのね」
こちらの晩餐会でのひどい有様を思い出して一人ごちる。
「あら?そちらでもごらんになれたのですか?」
サカタヒラが意外なことを聞いた、と言わんばかりに食いついてきた。
「でも?」
私はサカタヒラの言葉に引っかかりを感じた。
「ええ、そのころのドレスの劣悪コピーが近隣諸国で最近ひろまっているのです。
さすがに大姫様の嫁がれた国では広まらなかった様子ですが、
そのほかで、「アルシェス王室御用達、サカタヒラ」のブランドで売られたようです。」
そこまでいってため息をつくと、さらに続けた。
「まず始まった被害なのですが、アルシェスでした。発表・未発表のものに関わらず、できあがってから一ヶ月くらいで劣化した複製が出回ったくらいでした。
まあ流行モノですから、よくあることでしたので、放置しておりました。」
美人で有名な人が着たものなんかは割とすぐにアレンジを加えられてあちこちで見かけられるようになるよね。
特に花街とか、舞台衣装とか。
「まあ私の来ていたドレスが次のパーティで色違いとかでチラホラ見かけるのはよくあることですものね。」
王女が着たというだけでコピーされることがあると言うことは、私自身の人気のバロメーターみたいなものだと割り切るしかない。
たとえどんなに気に入ったドレスでも、人前で着たら二度と着れないし。
気に入ったモノほどコピーが出回るのよね、本当に切なくなるわ。
「ええ、それくらいで目くじらはたてていられませんわ。
ただ悪質だったのはサカタヒラ工房のもの、として売り出し始めたことです。
劣悪な製品をウチのもの、なんて言われて、信用したお客様に怒鳴り込まれたこともありますの。
そして「サカタヒラをだせ!」と言われましてわたしがでていきますと、
「おまえがサカタヒラな訳がない、男だった!!」といってまた逆上する、という地方のポッと出の成金、じゃなくて新興商人が何人か出たのです。
それで調べましたところ、どうもわたしを名乗る偽者が地方で荒稼ぎをしている。デザインもそっくりである、という情報が。
しかしどんな人物がわたしになりすましているか、という肝心な情報がつかめなかったのです。
どうも魔法が使われているらしいということでしたので、わたしごときの魔力では太刀打ちできません。
それで、デザイン流出の方から偽物を突き止めようとしたのです。」
「そうだったのね。」
私がつらそうに言葉を切ったサカタヒラに同情の言葉を投げかけた。
「その後生地屋・糸屋・ボタン屋などありとあらゆるものから取引先を割り出してはなんとか偽物にたどり着こうとするのですがその度に、後一歩の差で逃げられてしまったのですわ。」
「工房にいったらもぬけのカラ」
悔しそうにケイブ・カリヤーがつぶやいた。
きっと何度か同行しているのだろう。
「それは・・・・」
その場面を思い描くだけで悔しさやむなしさを感じる。
これがもし自分が被害者であったならと思うと、どれほどだったか推し量ることさえできない。
「悔しいなんて言葉では言い表せませんでした。
カリヤーさんとともに国境警備に身柄の確保をおねがいしたのですが、間に合わず、夜明けととも国境を越えられてしまったんです。」
「どこへ抜けられたのです?」
「西国ですわ。」
「え?タンジールではないのですか?」
「ええ、この事件が起きたのは忘れもしない、4年前の冬のことでしたもの。その後流れ流れてタンジールではないのでしょうか?
あちこちの宮廷で私の名前をカタってくれたようですから。」
「サカタヒラ・・・・」
「でもっ。大丈夫ですわ。
私は、わ、たしは・・・・・・」
そういって悔しそうに唇をかみしめて下を向いた。
その姿にどれだけの悔しさを身にためてきたのかが推し量れた。
「ええ、いまこそ、その敵をとりましょう、サカタヒラ。
こちらには神王猊下もいらっしゃる。
頼りにはなりませんが、お守り程度の効力はありますわ」
私はさっきのナガルの気持ち悪さを思い出しながら拳を固めた。
「・・ひ・・・姫様っ」
その決意にサカタヒラがふんわりとほほえむ。
ち、ちきしょー。デキル美人の大人女性がだす心からの微笑みオーラ。
クラクラする・・・・。
「さあ、エルリック、ちゃっちゃとサカタヒラを呼び寄せてくださいな。」
オーラに後押しされるように、近くに座っていた、エルリックに伝えた。
「うわー怖い。」
ちょっと、鼻息荒かったかな?
その迫力にちょっとエルリックがたじろいでた、気にしないわ。
「その前に猊下。私の工房から姫様に最高のドレスを差し上げたいのです。その材料も一緒に、とはいきませんでしょうか?」
遠慮がちにサカタヒラが告げてきた。
いったい私、何着の衣装をこの式典に作ってもらえるのでしょうか・・・
「・・・・もうなんでも引き受けるよ。乗りかかった船だし
そのまえにキミのカタシロを作らせてね。
それに国境を越えさせるから。不法入国はダメだし」
お、珍しく常識的な発言だ。
あ、でもそういえば、私が先にエルリックに指摘したんだっけ?
あれ?
まあいいか。
「ああ、猊下。なんておやさしい。不詳の身まで案じてくださるとは。」
感激しちゃってるよ・・・サカタヒラ。
そんな上等なもんじゃないよ?
「さて、じゃあ、今からそっちに行くから、荷物まとめてね。
3コニ以内だよ。それ以上は待たないからね」
そういってエルリックは立ち上がった。
大丈夫なのかなあ・・大規模なことになってるし。
神国の了解とかいらないのかなあ?
「ええ。お待ちいたしておりますわ、猊下。
いっそのこと猊下にも何か一着お作りしましょう」
きらきらとした目でサカタヒラが告げる。
この人は自分で何でも用意できるよ?大丈夫だよ?
「ええ・・いらな・・」
断ろうとした神王をその視線で黙らせてしまった、サカタヒラ。
恐るべし。
「じゃ・・とって着心地がよくて動きやすいのを、オネガイシマス」
語尾が変だし棒読みだし。でもつっこまないでおこう。
これつっこんだら、なんかいろいろなものがでてきてしまいそうな気がする。
「承りました、猊下。サカタヒラの名に賭けまして」
そういって最敬礼を送ったサカタヒラの顔には先ほどまでの悔しさのかけらものこっていなかった。
こうして動き始めた私の結婚・この国の戴冠式。
平穏無事にはすみそうにはないけど、
きっと後世までの語りぐさになりそう。
できればよい意味の語りぐさになりますように。
ちょっと弱気にナリマシタ。
ちょっとじゃないかも。
しっかりしてるようでもまだ15歳。
少しは揺れてます・・乙女ですもの。




