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アイオライト  作者: 冬野ほたる


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【07】 ナオコ 1



 三人姉妹の真ん中。

 姉と妹よりは放っておかれて育ったと思う。よくいる放任中間子。


 だからってわけじゃないけど、空気はよく読める。

 勘も鋭いほうだと思う。

 じゃんけんだけは……本当に弱いんだけどね。





 だからなんとなくは、わかっていた。






△▼△▼△


 

 ナチはカシワギが好きだ。

 いつから? たぶん、一年生の終わりにはもう好きだったんじゃないかと思う。


 本気かどうか……まではよくわからない。だって、先生って『先生』の仮面をかぶってる。『生徒』のナチは素のカシワギを知らない。素のカシワギをみても好きだと思うのなら、本気なのかな。


 あのコはわりと好きと嫌いがはっきりとしている。

 とくに嫌いなのは、いきってるコたち。

 そういうコは外見的にもわかりやすく主張したがるよね。


 それをナチは子どもじみてると切って捨てる。


 わたしに言わせれば、わかりやすいのはカワイイと思うよ。逆に大人にとって扱いずらいのは、ぱっと見だけじゃわかりにくい、ナチみたいなコじゃないかな。

 

 でも、ナチのことは好き。

 大人からしたら扱いにくくても、友だちとしてはいいヤツだし。ちょっとだけ尖ってるかもしれないけど、悪くはない。意地が悪いとかじゃないしね。なんていうか、ある意味まっすぐで正直なのかも。

 話してると楽しいよね。たぶん、この先ずっと付き合ってゆける相手だと思う。

 



 入学式でサチを見たときには、すぐに髪の色に目がいった。薄い茶の中にもちょぴり赤みが混じっているような色。太陽の光に透けるとその赤みが際立って、ブラッドオレンジの果汁の色みたいだと思った。

 よく見ると目の色も薄かった。青みがかった薄い茶色。訊くと、おじいさんがヨーロッパの国の出身だと教えてくれた。

 

 とにかくサチは成績が良い。

 なんでこの学校に入学したんだろう。もしかすると、第一志望の本命校に落ちて、二次試験を受けた入学組かもしれない。そのへんの事情は訊かないよ。話したくないかもしれないから。


 うちの学校は致命的に人気がない。毎年のように募集人数にとどかなくて、定員割れを起こしている。

 不人気の理由なんか単純。茶畑と住宅街の中にあって、周りには遊ぶようなお店も施設もなんにもないし、制服は可愛くないし、校則も厳しいから。なのになんでか、わたしたちの代は女子の数が多かった。


 まあ、サチが二次試験組なら、そのおかげでわたしたちは友だちになれたわけだけど。


 ふたりは大切な友だちだと思っている。


 だけど……ナチに対するサチの気持ちは。


 もしかしたら少し、違うのかもしれない。







 

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― 新着の感想 ―
[一言]  カンのいい三人め!  バランサーとしては重要なポジションだと思います。  でも、いろいろ気づいちゃって、苦労しそう(苦笑)
[良い点] ナオコ視点で、サチとナチの関係を客観的に見ることが出来ました。 表現がふさわしいのかは分かりませんが、ナオコは三人の中では一番『普通』の子なのかな、と感じています。 (大人からしたら一番…
[良い点]  ナオコ。ここまではサチナチの目を通しての姿しか出てきていませんでしたが。  よく見ていますよね。そして言ってもいいことと言わない方がいいことをちゃんとわかってる。  わかりやすいのは…
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