太鼓判
29
待たせていた馬車に乗って、あたしたちは、カルト寺院の敷地を出た。
「あんたら二人、やっぱりいらなかったわね」
あたしは、ランとスーに言った。
「おまえがカルト寺院に行ったのを、知ってて待たされる身にもなれ。寿命が縮むわ」
「ルマレクさんに、本当に連絡をとるつもりなのかと冷や冷やしてました」
「そんなわけないじゃない」
ぷくくくく。
アイアンが、肩を震わせている。
ぎゃはははは。
とうとう、堪えきれないといった様子で笑い出した。
「なに、おまえら、カルト寺院の聖女だったの?」
アイアンの目には、涙が滲んでいる。
「なんか揃って変な服だしてきたなと思ったんだよな」
「はったりよ、はったり。『白い輝き』以外知らない話なんだから、誰にも内緒よ」
「言ったって誰も信じねぇよ」
アイアンは、太鼓判を押した。
「だって、おまえらが、聖女様だぜ」
『聖女』だ『教皇』だと言ったって、信者以外には、意味のない肩書だ。
もともと、探索者は、権威なんか興味ない人種の集まりである。
あたしら三人の経歴を知っても、アイアンの態度は変わらなかった。
「いや、笑いを堪えるのに苦労したぜ」
人の顔を見て、にやにやする。
「へぇ、おまえらがねぇ」
ぷくくくく。
こいつ。
「焼くよ」
あたしの脅しなんか通じない。
ぷくくくく。
アイアンは、馬車が、うちの店につくまで悶えていた。




