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第17話 狼虎の咆哮①  ※残酷な描写有り

ひどい描写があります。苦手な方はご注意ください。

 指先に力をこめてもそれは動かぬままであった。


 アイアースは、上方を見上げ、岩壁にわずかに現れる凹凸を見つけるとそれに指をかけ、身体を運んでいく。

 途中、冷たい風が身体を突き抜け、崩れた砂礫が顔に当たる。思わず下げた視線の先は切り立った崖であり、遙か下方では急流となった川が唸りを上げている。

 ここは、地下に監獄がある岩山。正面から見るとややなだらかに見える岩山であったが、裏側はご覧の通りの急峻な崖であった。


 アイヒハルトを討つと息巻いたのはいいが、捕らえれたキーリアや亜人達を放って置くわけにもいかない。仮にアイヒハルトを討ったとしても、生き残った手下達が証拠隠滅のために彼らを虐殺する可能性は十分にある。


 しかし、監獄に戻るにしても正面から乗り込むのは自殺行為。昨夜、フェスティアに敗れ去ったアイヒハルトが単独で自分への追撃を続けているはずもなく、監獄の兵士達を動員して山狩りを始めるというのがおおよその予想であるし、舞い戻ってきたときに備えて正面の防備は固めているはずであった。

 そこでアイアースが選択したのは、後背の崖からの侵入。危険すぎる賭けであるが、ここで撤退してところで任務を放棄を理由とした粛清が待っているだけである。

 潜入と調査は果たしているが、殲滅の指令は果たしていない。組織が絡んでいることは間違いないが、こんな事態になった以上、アイアースがアイヒハルトのどちらかが消える以外に決着はない。

 教団狂信派が絡んでいると思われる施設。殲滅を願うのは共存派の意向であろうが、それに自分が差し向けられたのは、最悪死んでくれた方がいい人材だからであろう。

 処断か報償か。今のアイアースの待つのはその二つだけである。



(期待されたもんだ……) 



 そんなことを考えつつ先へと急ぐアイアースであったが、一歩間違えば大惨事は間違いない。突風に何度か煽られかけたこともある。


 慌てずに急ぐ。言うのは簡単であるが、今は、それを実践していくしかない。


 そうしていくうちに、岩山の頂が見え始める。ゆっくりと手をかけ、頭を出すと、視線の先には哨戒中の兵士。しかし、背後の崖ではなく、監獄の入り口の方へと視線を向けている。


 そんな時、アイアースの眼前に黒い巨大な影が舞い上がる。


 慌てて身を伏せると、視線の先では黒、青紫、白、緑、黄土の計五頭の飛竜が旋回しており、載っている竜騎兵が警備兵に向かって手で合図をしている。

 アイアースが視線をこらすと、先頭の黒い飛竜に跨がっているのは、他ならぬアイヒハルトであった。


 昨夜負ったはずの傷がどうなっているのかは分からなかったが、現状動けるまでに回復をしているのはたしかのようである。

 そして、アイヒハルトが監獄から離れるならば、こちらとすれば好都合。それに、はじめは脅威と思っていた飛竜に対しても、現状を見るに少しは安心できる。



 飛竜に対し、旋回しながら指示を出していつところを見ると、飛竜達も野生のモノが調教されて部隊に編入されているものと推測できる。

 本来の竜騎士は、竜と一心同体であり、人竜一体の攻勢と制空権が合わさった結果が恐るべき脅威となるのである。

 今、帝国に竜騎士と呼ばれる人間は両の手で数えるほどしかいないはずであり、今目の前を旋回して空を舞う兵士達は正確には飛空猟兵と呼ぶのが正しいのであろう。



 と、旋回していた飛竜達が方々へと散っていく。野生の竜と言えどその速度は健在であり、ほどなく周囲山岳の影へと入りこんでいく。

 それを見たアイアースは、岩場から削り出された見張り場へとあがり、兵士へと接近する。異変を察したのか、こちらを振り向いた兵士の顔を掴み、岩に叩きつける。

 白目を剥いて気を失った兵士の首を折ると、その場に座らせ、見張りを続けているように偽装する。小細工ではあるが、そのままにするよりはマシである。


 ひどく疲れて眠っているとでも思ってくれればいい。


 再び、監獄内部へと進むアイアース。警備の兵士は少なくなっており、不意を突かれた兵士は抵抗も襲撃を伝えることも敵わずに蹴散らされていく。


 そうしている間に、昨日訪れた最深区画へと辿り着く。


 しかし、駆け寄った独房に人の姿はなく、乾いてどす黒くなった血だまりが残されているだけであった。



「くそっ! 遅かったか」



 思わず扉を殴りつけるアイアースであったが、そんな彼の耳に届く声。


 視線を向けると、残された房に閉じ込められている囚人達がアイアースへと視線を向けている。



「キーリア達は?」

「その壁に通路があるの。その先に実験室があって、そこへ連れていかれたわ」

「分かった。今は……」

「そうね……。一応、私達は罪人よ? それでも助けるの?」

「ここは罪を償うための場じゃない」

「そう。でも、もう手遅れ……動くこともできないしね」


 近寄って口を開いたアイアースに対し、レア族の女性囚人はそう言って腕を差し出す。


 本来、ティグやレアは腕や腰付近の体毛と耳、尾以外はさほど人と変わらない。しかし、彼女が差し出してきた腕は、醜く変容し獣の如く鋭く爪が伸びている。



「奴らがやろうとしている実験は、私達亜人を本来の獣へと戻して家畜にするつもりなのよ。本能のままに人を襲うようにね」

「なんだと? ……生物兵器と言うことか?」

「そうね。戦争で敵の兵士を本能赴くまま食らうようにして、使い捨てにできれば万々歳なんじゃない? 大型獣は滅多に現れないから、自分達で作ればいいってことだろうし」

「ふざけやがってっ!!」



 女性の言にアイアースは、さらに苛立ちが募る。


 たしかに、かつては亜人に対する差別はあったと聞いている。地域的には人間至上主義や人種ごとの至上主義も残る言われている。

 かつて知る世界において、この世界よりも平和に暮らす人間が多い世界であってもそれはあったのである。


 頭では分かっているが、自身の身体を流れる血が怒りを煮え立たせる。



「あなた、優しいのねえ。外に出れば亜人に対してめずらしいモノを見たという目をする人も多いわよ?」

「俺の母親はティグ族です」

「え?」



 女性の言に、アイアースは短くそう応えると、天井から垂れている鎖を掴んで一気に跳躍する。

 それを待っていたかのように石壁が動き、数人の兵士が、ぐったりした女性を引きずるようにフロアへと入ってくる。


 女性は、捉えられていた三人のキーリアの一人である。顔色も悪く、すでに虫の息であることが見て取れる、



「結局、こいつはどうするんです?」



 女性キーリアの首に掛かったロープを抑える兵士が、それを外しながら口を開く。

 支えを失った女性キーリアは、顔面から崩れ落ち床に血が飛び散る。ほんの僅かの咽せが彼女がまだ生きていることを示していた。



「死んだらそれまでだ。牢にぶち込んでおけばよかろう」

「へー、それじゃあ……」



 兵士の言に、最後にフロアに入ってきたキーリアが答える。

 昨夜、火炎法術によって自分とティグの母子を吹き飛ばした巨漢のキーリアである。途端に、アイアースの脳裏に血塗れになりながら自分を逃がしてくれた女性の姿が浮かび上がる。

 奥歯を鳴らすアイアースの姿を視認することなく、その兵士は静かに身体を震わせる女性キーリアに下卑た視線を向ける。



「さっきまでさんざんやっていただろ。……まあ、どのみち虫の生きだし、お前らの好きにすればいい」

「さすが。グロフ様は話が分かるぜ」

「全身に刻印を埋め込まれた化け物に近いというのに……モノ好きだな」



 グロフの言に、兵士達は聞きとして女性キーリアを引き起こすと、衣服をはぎ取って、手を鎖に繋ぎ、身体を引き上げる。

 女性キーリアはすでに抵抗する意志も気力なく、目尻から涙を流すだけ。その表情は絶望に染まっている。

 そんなキーリアの姿を取り囲む兵士達は、普段何をやっているのかが簡単に予想がつく様子で、鞭や棒の類を手に取り、満足げな表情を浮かべている。



「最近はこういうのもあるんだぜ?」



 そう言った兵士の一人が、手にした筒を掲げる。筒には細い管が取り付けられており、その管は取っ手のついた金属製の箱へと繋がっている。



「まったく、好きだな」



 壁に身を預け、様子を見ているグロフであったが、その表情は嫌に明るい。彼も普段から囚人達に凄惨な拷問を貸しているサディストである。

 手をくだす気はないが、兵士達の行為を咎める気もないらしい。

 そんな間に、もう一人の兵士が箱に松明を押し込むと、取っ手を思い切り下ろす。


 すると、筒から紅蓮の炎が噴き出し、その炎が女性キーリアに襲いかかった。



「あああああっっっ!?」

「うわっ!! あぶねえっ!!」



 両の足を焼かれ、悲鳴を上げる女性キーリア。反対側に陣取り、彼女の肉体を嘗めるように見つめていた兵士達も危うく巻き込まれ駆け、石畳に転倒する。



「あぶねえじゃねかよっ!!」

「悪い悪い。次はお前らがやれよ?」

「へっ、そう来なくっちゃ。簡単に死んでくれるなよ? 姉ちゃん」

「そうそう、これからがお楽しみなんだ。俺達全員がやり終えるまでは耐えろよ」



 喜々とした様子でそう告げる兵士達。しかし、彼らの喜びは、天から届く声によって、永遠なる中断を余儀なくされる。



「やれせねえよっ!!」



 アイアースは、自身が捕まっている鎖を引き抜くとそのままフロアへと落下し、筒まわりに集まる兵士達の首にそれを巻き付け、思いきり縛り上げると、反対側の鎖を思いきり引き上げる。

 何が起こったのか分からないまま、兵士達は首を締め上げられ、天井へとつるし上げる形で縊り殺される。

 アイアースはそのままキーリアを吊す別の鎖を叩き斬ると、落下する彼女を抱き、独房へと連れて行く。



「あの男っ!! 貴様ら、ヤツを止めろ」



 グロフは、そう言うと兵士達をけしかけ、自身は階上へと続く階段へと向かう。



「治療は私達がするわ。房の側に」

「封じられてないのか?」

「攻撃は無理だけど治癒は許されている。治ればそれだけ長くいたぶれるからみたいだけどね」



 レア族の女性囚人がそう告げると、彼女と隣接する房の囚人も頷く。

 アイアースは、グロフの声が耳に届いたこともあり、彼女達にキーリアを託すと、身体に上着を掛け、兵士達に向き直る。



(こいつ等に、母上達の剣はもったいない)



 そう思ったアイアースは、兵士達に向かって床を蹴る。

 思いがけない突進に目を見開く先頭の兵士の腹に腕を突き刺し引き抜くと、床を蹴ったときに跳ね上げておいた鞭が鮮血に染まりながら両の手に収まる。


 ためらうことなく両の手の鞭を振るう。唸りを上げて飛びかかる鞭は、アイアースを取り囲む兵士達の衣服を破り、皮膚を引き裂き、肉をえぐり取り、鮮血を舞い上がらせる。

 先ほどのまでの行為を後悔したモノもいるであろう。相応の報いであるが、相手は神ではな以上、慈悲などを期待出来るはずもない。


 アイアースが鞭を収めると、血塗れの肉塊となった兵士達が一斉に崩れ落ちる。

 それを見たアイアースは、鞭を握りしめ、キーリアが吊されていた鎖を手に取ると、グロフが立ち去った階段へと向かい、後を追おう。


 途中分岐がいくつかあったが、勘を頼りに走り続ける。こういう時は勘が冴える。彼のみに流れる血が無意識のうちに強敵を求めているのかも知れなかった。



 そうしているうちに、明かりが差し込む出口が見える。

 そこから飛び出すと、烽火台へと向かうグロフの広い背中が目に映る。アイアースの姿を目にした兵士達が一斉に声を上げるが、それにかまわずアイアースは鞭を両手にグロフへと飛びかかる。



「ふぐおっ!?」



 突然、首に巻き付いた何かによって絶息させられかけたグロフは、潰れる蛙のような声を上げ、アイアースとともに階段を転がり落ちる。

 グロフを下敷きに階段から落ちたアイアースに対し、集まってきた兵士達が剣を振るう。下敷きになっているグロフにかまう気はないようだったが、アイアースは跳躍すると、持ってきた鎖で兵士達をうち、着地点に倒れこんだ兵士の首を踏みつけ、それを叩き折る。



「ぐっ……。所長に合図だっ。急げっ!!」



 アイアースが兵士達を叩きのめしている隙に立ち上がったグロフは、烽火台の兵士に対してそう口を開く。

 それを耳にしたアイアースは、蹴倒した兵士を尻目にグロフに背後から跳び蹴りを見舞うと、そのまま跳躍し、ブーツに仕込んだ大型ナイフ2本を手に取ると烽火台の兵士に向かって投擲する。

 陽の光を受けながら飛ぶナイフは、二人の兵士の米神へと突き立ち、二人が崩れ落ちる。



「うおっ!?」



 それを見ながら落下するアイアースであったが、突如足を引っ張られる形で地面に思いきり叩きつけられる。


 石を削りだした施設であり、地面も当然のように岩。全身が軋みをあげ、痛みが襲ってくる。

 そのまま胸ぐらを掴み、首を絞めるように引き起こしてきたのは、他ならぬグロフであった。憤怒の表情を浮かべ、こちらを睨んできている。



「やってくれたな。小僧」

「自業自得だ」



 そう言って、アイアースはグロフの腹部に膝を見舞うが、一瞬目を見開いただけのグロフは、口元に嗜虐的な笑みを浮かべると、アイアースの脇腹にお返しとばかりに膝を見舞う。



「げふっ」



 思わず絶息したアイアースは、そのまま石壁に向かって投げつけられる。


 身体を捻った足を着き、反動を使って再びグロフへと飛びかかる。グロフも同じように地面を蹴り、アイアースと思いきりぶつかり合うが、ここは体躯の差か、アイアースは吹き飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられる。


 倒れ込んだアイアースに向かって来るグロフ。


 アイアースは左腿に差したナイフを抜くが、構えたところを蹴り上げられ、再び掴みあげられる。

 グロフは憤怒と嗜虐の両方の入り混じった不気味な笑みを浮かべながら、アイアースの腰回りをへし折るべく締め上げる。

 軋む身体に激痛が走るアイアースは歯を食いしばって、頭をグロフに叩きつける。一瞬力が弱まった所で、着地し、グロフの目を狙って正掌を叩きつける。しかし、わずかに頭部を引いたグロフの目には届かず、互いにつかみ合ったまま膠着する。


 しかし、徐々に目へと指を動かすアイアースの動きを悟ったグロフは、アイアースの腰を掴むと再び思いきり投げつける。

 弧を描いて地面に叩きつけられたアイアースに猛然と迫るグロフ。


 アイアースはしゃがみ込んだままグロフの突進を受けると、肩に抱えるようにしてその巨体を回転させ、地面に思いきり叩きつける。

 思わぬ攻撃に、なすすべ無く顔面から地面に落ちたグロフは、鮮血を滴らせながらも起き上がる。しかし、アイアースはそれの背後に組み付き、首をへし折るべく腕を回す。

 しかし、強靱な肉体はティグの血を引くアイアースを持ってしても、それを許さずさらなる抵抗を試みている。


 腕に力をこめ、暴れるグロフを抑えるアイアースの目に、先ほど兵士達を滅多打ちにした鎖が映る。

 それを手にしたアイアースは、グロフを抑えたまま首に鎖を巻き付け、思いきり引く。しかし、グロフも目を見開いて抵抗し、アイアースの腹部に肘を叩き込む。


 激痛に歯を食いしばりつつも、アイアースはさらに鎖を巻き続け、外れぬように縛り続ける。

 だが、そのわずかな細工が反撃の機会を生む。鎖をさらに引き絞ったアイアースは、うっかりグロフの身体から離れてしまったのだ。


 顎に食い込むグロフの肘。一瞬、視界が暗転したアイアースであったが、すぐに襲ってくる激痛に強引に意識を覚醒させられる。

 再び、腰を締め上げられ軋む肉体。次の瞬間には、身体の中で何かが壊れたような感じが全身を襲う。



「がああっ!?」

「どうだっ!! 苦しいか小僧っ!! 苦しめ、もっと苦しみ続けて死ねえっ!!」



 それまでの攻撃の数々に、全身がボロボロになっているグロフであったが、そこはキーリアである。膂力はまだまだ健在であり、同じキーリアでもまだまだ少年の骨格から成長しきっていないアイアースの全身を砕くことも十分に可能であった。


 そうして、さらに加えられる力。


 目を見開いたアイアースは、無意識下に右手に宿る刻印へと意識を集中させていた。


 次の瞬間。



「っ!?」



 赤い火球が浮かび上がるとグロフの体内に吸い込まれていく。



「な、なんだこれはっ!?」



 慌ててアイアースを引き離し、衣服をまさぐるグロフ。その光景と見ていたアイアースは、軋むからだに顔を歪ませながら口を開く。



「火炎法術の四段階の応用だ。と言っても、無意識下でのことだからどうやるかは分からん」



 唖然とするグロフに対してそう口を開いたアイアースは、地面を蹴ると大きく跳躍し、回転しながら蹴りをグロフの顔面へと叩き込む。

 不意を受ける形で蹴り飛ばされたグロフは、そのまま監獄の外壁から咆哮をあげながら、落下していく。


 そして、鎖が岩に引っかかる形で止まり、グロフの呼吸を永遠に停止させたのと同時に、体内へと押し込まれた火炎球がその力を解き放ち、内部からグロフの身体を轟音とともに四散させた。



 轟音が監獄を揺らしたその時、すでにアイアースは内部へと舞い戻っていた。


 拷問を受けたキーリアが治癒法術を受けている様子を一瞥すると、アイアースは先ほどグロフが触れていた壁の一画をまさぐる。

 わずかに奥へと押すことのできる石。奥へと押し込むと、石壁がゆっくりと滑りはじめる。


 ぽっかりと空く通路。


 振り返ったアイアースは、囚人達に対して頷くと、通路内部へと足を向ける。

 松明の明かりが不気味に揺れるなか、アイアースの靴音だけが響き渡る。なにか、不気味な気配が全身を支配していく。

 そして、アイアースに耳に届いてくる嗚咽混じりの咆哮。


(な、なんだ?)



 心臓が跳ね上がる。しかし、歩みを止めることなく奥へと進むアイアース。そして、わずかな光ともに一際広めの空間へと足を踏み入れる。




 アイアースの目に飛び込んできたのは、巨大な体躯を群青の毛で覆い、両の手を鎖で縛り付けられたまま涙を流す巨大な狼の姿であった。

アイヒハルトとの決着は次回になります。

明日も同じぐらいの時間の投稿できたらと思っていますので、お楽しみに。

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