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第13話 天使の顎門③  ※残酷な描写有り

前話に続いてきつめな表現があります。ご注意ください。

また、前話のあらすじは少々お待ちください。

 砂埃を立てて大型の馬車が疾走していく。


 荷台には木製の柵が檻状になっており、表情に絶望の色をたたえた人々が押し込められている。

 表向きには囚人としての扱いであろうが、無実の人間が大半であろうことは予想できた。

 アイアースは身を潜めていた茂みのあい間から周囲を窺う。かつて、襲われたことのある特殊部隊の類は潜んでいないようだったが、森の中を巡回する警備兵の類は何人もいるようだった。


 周囲の暗がりのありがたさが身に染みる。

 普段であれば孤独を恐れる夜の帳も、今は身を隠してくれる存在。月明かりがややよけいであったが、目立つ場所は早々に駆け抜けるしかないと思った。


 音を立てずに森を抜け、有刺鉄線へと走る。一番外側の物がもっとも厳重になっており、これは斬るよりも持ってきた敷布を被せる方が早い。

 その上を匍うようにして越える。上向きになっていた釘が布越しにアイアースの腹部を傷つけるが、このくらいの傷は慣れたものだった。


 鉄線の境界を抜けると、岩山との間を広大な牧と厩舎が横たわる。今は鉄線の縁に身を潜めているが、揺らめく松明のまわりをうろつく人影がいくつも見える。


 おそらく、牧で働く人間であろうが、部外者が近づけば警戒するに決まっている。必要であるならば、その手のことを容認されているが、そんなことをするためにキーリアになったわけではなかった。


 そう思うとアイアースは、右の手の甲を撫で、目を閉ざして意識を集中させる。


 暗闇の中を、赤い火球が浮かび上がる様が脳裏に浮かんでくる。いまだに脳裏に焼き付く忌まわしい記憶ともに会得した法術。


 あの時は激しい衰弱に襲われたが、今は一瞬の疲れを感じるだけで使役できている。もっとも、調子に乗って使い続ければどうなるのかまでは分からなかったが。

 目を見開くと、手のひらに載るほどの大きさの球体が浮かんでいる。力を抑えているため光は纏っておらず、近くに来てようやく気付くと思われる色彩。

 それがアイアースの手から離れ、虚空をゆったりと移動していく。


 その名の通り、嵐を巻き起こすという強大な威力を誇るが、なにぶん発動まで時間が掛かるのが難点である。ある程度は制御可能だが、作り出して即発動は不可能だった。


 だが、今回のような場合には、それが吉と出る。


 ゆったりと浮かびながら、人気のない牧の方へと移動する火球。やがて、暗がりの中を移動する火球が視界から消える。

 それを合図に、アイアースはかざしていた手の平を思いきり閉ざす。


 刹那。虚空で炎が怒れる龍のごとく蠢き、爆風が周囲の木々や建物に吹きつけ、脆いものを破壊していく。



「おかしいな。手加減したつもりだったんだが??」



 そんなことを呟くアイアースであったが、突然の大爆発に牧や厩舎。そして、狙い通りに岩山の周囲がざわつきはじめている。

 結果的に狙い通りとなったのである。アイアースは周囲の気配を確認すると、堂々と街路を駆け、内部へと侵入する。


 厩舎の周囲には、居住用の宿舎や倉庫などが建ち並び、いくらでも身を隠せる。しかし、アイアースの目的は牧や厩舎ではない。


 建物の影を音もなく走り、岩山へと近づく。


近づくと、小高い丘をくり抜き、要塞化している。くり抜かれた穴からは光が漏れ、ところどころに見張り用の区画が設けられている。だが、その見張り達も突然の事態に動揺しているようだった。


 アイアースは手近の見張り場へと近づくと、一気に岩肌を上る。と、手をかけた場所から、小石が落下し、岩肌を打つ。


 心臓が跳ね上がる。


 思ったときには、腕力で身体を跳ね上げ、顔を出した見張りに肘鉄をお見舞いすろと、その勢いのまま見張り場へと立つ。足もとには鼻を押さえて悶絶する見張り。口を押さえ、首をへし折った。



◇◆◇



「ほう? 中々やるようですね」



 石拭きの廊下に身を任せたジルの耳には、そんなアイヒハルトの声が届いた。


 あの後、ケネスは獣に勝利すると、全身を痙攣させて崩れ落ちた。鎖に繋がれたジルはそれを助け起こすことも出来ず、倒れた仲間にただ声をかけることしかできていなかったのだ。


 その後、ジルは再び獣との戦いを強いられた。


 獣といっても、戦いの直前までは人であったものばかり。亜人どうしの融合や獣への同化などを目の前で見せつけられていくうちに、考える気も失いつつあった。


 そして、続けざまに3体の獣を葬ったジルは、闘技場と思われる場から戻ると、精も根も尽き果て、倒れ込んだのである。


 アイヒハルトの声が耳に届いたのは、そんなときであった。



「ふむ、まだまだ頑張れそうですねえ。丁重におもてなしをしなさい。私は、次の方の様子でも見に行きましょう」



 何事かと思い、アイヒハルトに対して目を向けたジルであったが、再び不敵な笑みを浮かべたアイヒハルトの心情を読むことは出来なかった。



◇◆◇



 松明の揺らめく通路を進んでいくと、岩肌が石壁へと変化していった。


 外面の岩山から監獄内部へと入ったのであろう。先ほどより、不快な気分が全身を包み込んでいる。


 そんなことを思いながら、歩みを進めるアイアースは、ここがどこと似ているのかと言うことを思い出した。組織の本部。特殊なガスによって満たされた北辺の孤島。

 すなわち、自身の第三の故郷と似ているのだった。不快な気分になるのも当然と言える。


 そんなとき、耳に届いた絶叫にアイアースは思わず身をこわばらせる。非常に甲高い絶叫であり、男のモノではなく女性かこどものモノであろう。どこかは分からなかったが、どのような忌まわしい行為が行われているのか、アイアースは考える気にはならなかった。


 しかし、身体は全力でその場へと向かうという衝動に駆られている。


 だが、ここで感情的になれば待っているのは破滅でしかない。一の犠牲で十を救えるならば、一を犠牲にするのは当然であるし、きれいごとを言うのは責任の放棄。加えれば、他から得た力で不可能を可能にしようというのは、能なしの自己満足に過ぎない。実際、そんな都合のいいことが出来るはずもないのだから。



 そんなとき、アイアースの耳に石畳を打つ靴の音が届く。


 周囲を見まわし、上方へと跳び上がる。周囲は凝土石によって固められており、非常に滑らかになっている。だが、石壁の上から塗りつけている以上わずかながらのくぼみは出来る。


 次第に近づいてくる音。音源は三つ。うち一つは足を引きづっているのか、音の続きが長い。そう思いながら下部へと視線を向けるアイアースの視界に入りこんできたのは、監獄の衛兵と思われる灰色の制服に身を包んだ二人の兵士とそれに引きずられるように歩いて行くキュオ族の男だった。


 しかし、男の目は虚ろで、足元もおぼつかなくなっている。目立った外傷はないが、とても正常な状態とは思えなかった。

 アイアースは壁伝いに移動し、男達を視界に捉え続ける。整備はされているとはいえ、元は岩山。通路壁はともかく、天井部分には身を広める岩影がところどころにあった。


 ほどなく階下へ降りていく男達。後に続いたアイアースは、一際広い空間へと辿り着く。


 フロアはいくつもの形に区分けされ、堅牢そうな鉄格子によって封鎖されている。男が押し込まれた房も見ることが出来たが、中にいる者達はほとんど身じろぎする様子は無い。

 男を牢獄へと押し込むと、気を抜いたのか軽口をたたき合う兵士達の姿が見える。

 アイアースは、音もなく男達の背後へと降り立つと、わずかに響く着地音に振り向いた男達。ためらうことなく両眼に向けて両の手を突き刺す。

 ゼリーに指を突き刺したような感触の後、男達は音もなく崩れ落ちる。


 それを、抱え柱の陰にもたれかけさせると、背後に人の気配。反対側に回り込むと、見張りと思われる兵士が、柱越しに後方を窺っていた。正面を向き直ったところで顔を掴み、柱に叩きつける。


 牢獄の中は、様々な人種でごった返していた。


 しかし、敷き詰められるかのように、押し込められている人々のほぼ全てが、先ほどの男のように虚ろな目をしながら座り込んでいるだけである。

 その光景の異常さに目を奪われていたアイアースの耳に、再び足音が届く。

 柱に身を隠し、それが通り過ぎるのを待つと、背後から口を押さえて柱に叩きつける。


 女性兵士であることは少し驚きであったが、かまう気にはならなかった。


 叩きつけられた兵士は驚きと苦痛に目を見開くが、叫び声を上げるのままならず、ただ手にした槍を振り回してアイアースをうちだけであった。

 痛みはそれほどでもなかったが、次第に苛立ちはじめたアイアースは、腹を軽く打つと、兵士は動きを止める。



「殺されたくなければ正直に話せ。いいな」



 アイアースは声を落としながら、そう口を開く。ひどく残酷な気分になっていることを自覚するが、苛立ちを抑えつつ慌てて首を縦に振る兵士を睨み付ける。



「この連中はなんだ?」

「しょ、所長の命令で集められた亜人や犯罪者だ」

「どういう命令だ?」



 そう言って、アイアースは抑えつけた手にさらに力をこめる。叫び声を上げかけた兵士の口を押さえたのち、手を緩める。



「こ、ここの連中は、普通の人間と大差がないから、新薬の実験体になるって」

「新薬? 病気のか?」

「し、知らないわ。今は鎮静剤を打っているから大人しいけど、普段はもっと暴れたりするって……」


 兵士はそう言って目尻に涙を溜めはじめる。アイアースは、先ほど倒した兵士が持っていた牢獄の鍵を手に取ると、兵士を抑えたまま牢獄を開け、兵士をそこへ放り込む。



「ちょ、ちょっとっ!! 助けてくれるってっ!!」

「そんなことを言った覚えは無いな」

「そ、そんなっ!! こいつ等が暴れるっていっているでしょっ。こんな中にいたらっ!!」

「悪いな。私は今、機嫌が悪い。あきらめて寝てろ」



 薬の実験体になっている囚人達。おそらくは無実の者も多くいるであろう。そして、今の兵士がそれの協力していたのかも分からない。ただ、それを考える必要もアイアースにはない。


 再び、兵士を眠らせたアイアースは、他の兵士の死体を別の牢獄に放り込むと先へと進む。


 先ほど耳に届いた絶叫はすでに消え、監獄内はいくつもの呻き声に包まれはじめていた。


◇◆◇



 ふと、それまでとは異なる気配を感じてジルは身を起こした。


 闘技場の観戦席から独房へと連れてこられているが、全身に負ったダメージが大きすぎる。キーリアともなれば傷の回復も常人以上の速度であり、簡単に死ぬモノではないが、衰弱していれば当然死にもする。


 正直なところ、今のジルの状態はギリギリのところであった。


 しかし、身を起こす気になったのは、気配と同時に聞き覚えのある声が耳に届いたからであった。



「キーリアはどこにいる?」



 抑えたものであったが、まだまだ変声期を過ぎたばかりの青年の声。つい先日聞いた声によく似ているような気がしていた。

 気配が近づいてくる。非常にゆっくりのように感じるが、一瞬であったようにも感じていた。


 小窓が開けられ、切れ長の目から鋭い視線が向けられ、視線が交錯した。



「大丈夫か?」

「……ああ。貴様は?」

「昨日会った小僧だ。ちょっと待っていろ」

「無駄だ」

「なに?」



 独房の扉に手をかけた男に対し、ジルは自嘲気味に口を開く。



「ここの鍵は、ヤツの魔力に同調している。ヤツ自身か、ヤツを殺すかしない限り、空けることは不可能だ」

「そうか。だったら殺してやる。ヤツって言うのはだれだ?」


 ジルの言に、男はあっさりと答える。


 身の程知らずというモノか、若さ故の無鉄砲さがなす事なのか。ジルは名にも言うことが出来なかった。

 そして、聞き覚えのある耳障りな声がフロア内に響き渡る。



「これはこれは、おもしろいことをおっしゃる」



 男が驚いたように振り返ると、いつの間にか壁にもたれかかるように、白を基調とした衣装に黒と赤のマントを身につけた男、アイヒハルトが立っていた。

 顔に不敵な笑みを浮かべながら男のことを品定めでもするかのように見つめている。


 この男にとっては、他人は玩具でしかないのだろうとジルは思っている。実際、男を舐め回すように見つめてる目は、好奇心の塊ともいったような光をたたえていた。



「ふうむ。まだ若いようですねえ……。我々の仲間であるよりも、男娼として生きた方が大金を手に出来そうですが。おそらく、母親譲りの」

「貴様っ!!」



 アイヒハルトの笑みが下卑たモノへと変わると、男は剣を抜いてアイヒハルトへと飛びかかる。母親というものが男の琴線に触れたようだった。



「おやおや。その年になっても、乳離れも出来ていないようだ」



 男の剣をいなしつつ移動するアイヒハルト。男の剣伎は、ジルの目から見ても見事なものであったが、アイヒハルトの実力はそれの上をいくと言うことかも知れない。



 実際、ジルの№は9。№5であるアイヒハルトとは間に3人の人間がいるだけなのだが、その差ははるか異次元のようにも感じるのだった。

 獣たちとの戦いのさなか、闘技場の壁を破ってアイヒハルトに攻撃を加えることもジルの力ならば十分に可能だったが、実行に移しかけたときに彼の脳裏に浮かぶのは、四散する自身の肉体だった。



 戦うことなく相手に恐怖を与えるだけの実力の差。しかし、逆上している人間にはそれが通用しない。遠慮することなく斬りかかってくるようにそうしているのである。

 現状、男が次々に剣を繰り出し、アイヒハルトは防戦一方であるのだが、その表情には余裕があり、男の方は額に汗を浮かべはじめている。


 そして、今まで男の剣をいなしているだけであったアイヒハルトが、男が振ふるう双剣を片手に持った剣によって受け止める。

 弾かれることなく、受け止められたそれは、剣どうしが吸い付き合ったかのように動きが止まる。



「ふむ、その程度ですか」



 そう言って、アイヒハルトが剣を受け止めたまま、男を蹴飛ばす。


 目に見えぬ、実際男には見えていないのであろうが、速度で男の原に突き刺さった蹴りによって、男は背後の柱へと叩きつけられる。



「期待したというのに……。所詮は二桁№か……。どうやって私を殺す? そのような無様な姿をさらしているゴミがどうやって?」



 柱の下でむせ返る男を、髪を掴んで起こしたアイヒハルトは、失望と軽蔑の入り混じった声を男にぶつける。


 実際、アイヒハルトは男の力量を計っていたのであろう。自分の楽しみのために。


 剣を構え直したアイヒハルトであったが、男はそのわずかな隙にアイヒハルトの腕から逃れ、一定の距離を取ると、壁に向かって跳躍し、反動を持って高速に移動していく。


 撹乱し、一撃をいれるチャンスを窺うのであろう。しかし、これが通じるのはせいぜい、格上相手までである。

 ふっと、一息吐いたアイヒハルトが一歩前に出る。そして、ゆっくりと剣を振り上げ、それを振り下ろした。


 気がついたときには、男がアイヒハルトの前面で全身を斬り裂かれていた。



◇◆◇



「ふうむ。精鋭達がここまであっさり殺されたというのに……。どうやら、兵士の質に問題があるようですねえ」



 石畳の感触を全身で感じながら、アイアースは耳に届いた声の主を睨み付ける。

 各階にて目にした光景は二度と思い出したくもなかった。八つ当たり気味に兵士達を倒しながらここまでやって来て、ようやくまともな囚人達を見ることが出来た。


 囚人といっても、罪があるとは思えない人間ばかりであり、その中には先日見かけたキーリア達もいた。


 しかし、一人をのぞいて他の二人はすでに虫の息。特に、男の方の衰弱激しかった。


 救出の手段は、先日であったキーリアがヤツと呼んだ男。目元に刻まれた天秤のような形をした刻印。№5アイヒハルトであることだけは分かった。

 そして、他のものを救出する手段は、この男に扉を開かせるか、この男を殺すしか手はない。


 とれる手段は一つ。そう思って、アイヒハルトに挑んだのだが、結果はこの通りであった。



「さて、なんのためにここに来たのですか?」

「ぐ……、言うと思うのか?」



 身を起こしかけたアイアースの側に歩み寄り、そう口を開いたアイヒハルトは、アイアースの応えに顔面への蹴りでもって応える。


 激痛が支配し、仰向けに倒れ込んだ。



「では、尋問はここまでです。――――死ね」



 そう言って、アイヒハルトは剣を振り上げる。しかし、アイアースの実力の不十分差へと不満からか、苛立ちが感情を支配していたのであろう。

 剣を振り上げたわずかは合間が、アイアースには十分であった。



「――――っ!!」



 脳裏に浮かぶすべての火球を思い浮かべ、アイアースが手を強く握りしめる。刹那、監獄全体が揺れる。


 そして……。


「むっ!? ぐわっ!!」


 頭上に現れた巨大な龍のごとき爆炎が突風とともに、アイヒハルトへと襲いかかる。


 剣を振りかぶり、全身ががら空きであったアイヒハルトは避けること敵わず、全身に襲いかかる炎を受け止めるしかなかった。

 アイアースはそれを目にすると、軋む身体を起こして元来た通路を駆け上がる。



「すぐ戻るっ!! それまで無事でいてくれっ!!」



 逃亡。敵に背を見せることの無様さは身に染みている。今自分のいっていることがきれいごとだとアイアースも思う。しかし、このような場所で死ぬわけにはいかないアイアースに出来ることは、ただ逃げることだけであった。


◇◆◇


「ぬううううっっ!!」



 アイアースが姿を消した後、アイヒハルトは自身に襲いかかる炎を掻き消す。松明もすべて消えてしまし、フロアは闇に包まれている。

 わずかな灯りによって見える両の手をアイヒハルトは見つめる。手の甲は、傷一つ無い白磁の肌。しかし、手の平は、真っ赤に焼け爛れ、ところどころ黒ずんでいるようにも見える。

 治癒法術を施したが、黒ずみはじめたところは簡単に元に戻るものではなかった。



「くくく……。舐めた真似を」



 自身が傷を負ったことへの怒りと自身を傷つけたことへの怒り。同時に、自身を相手に一本取った格下への賛辞という複雑な感情が胸を支配する。



「よい。よいぞ……。小僧、貴様は私が直々に切り刻んでやろう。この世に塵しか残らない程度にな。光栄だろう?」



 腹の底から絞り出す声。顔を上げたアイヒハルトは、極上の笑みを浮かべていた。



◇◆◇


 天使の顎門にて、待っていた過酷なる祝福。

 一桁上位との戦いは決して避けられぬモノであったが、道半ばであるアイアースにとって、それは高すぎる壁であった。


 背後へと迫る『死の天使』。そして、一つの出会いと別れは目前に迫っていた。 

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