第84話 生命力豊か
顔がおばさん、身体が犬のモンスターと人間のハーフ、ミカクロウが瀕死の篠田を連れてきてくれた。
手も足もおかしな方向に曲がっていて、顔も半分へこんでいる。
「どうする? このままじゃかわいそうやから、殺したるか?」
ご先祖様がほのかさんに聞く。
ほのかさんはうーん、と手を顎にあて、
「でも殺しちゃうのはなあ……。この人がやったことって、しょせん、私の下着で〇〇ニーしたことと、あと私を犯そうとしたことと、あとほかの女の子を犯したことと、それで生まれてきた赤ちゃんをレイシアさんに食べさせたことくらいだから……死なんて、生ぬるいよね?」
正直、赤ちゃん食わせたのは拷問ポイント高いもんなー。
「でも、ここまでぐちゃぐちゃになっちゃったら、さすがに大治癒の魔法だけじゃ回復しきれないんじゃ……?」
俺がそう言うと、ご先祖様は山形名物おしどりミルクセーキをぺろぺろとなめながら、
「うーん、それもそうやな……。せや! いいこと考え付いたで!」
★
ご先祖様がいいことを考え付くわけがなかった。
結局、体の方は治癒不可能ということで、首だけ切り取ってその首をほかの生物の身体にとりつけたのだ。
つまり、ミカハチロウの鼻から生えている八本の足のうちのひとつ、その先っぽに篠田の首をくっつけたのだ。
「どや! どや! ミカハチロウは生命力豊かやからな! 人間の首のひとつやふたつ、余裕で養えるで!」
うわー。
キモいことになったぞ。
そもそも、ミカハチロウは象だ。
そして、その鼻が吸盤がいっぱいのタコの足になってる。
八本あるその足の一つの先に、篠田の生首がくっついているのだ。
「……シテ……。コロシテ……」
涙を流しながらつぶやく篠田、それを見ながら俺はとあることを思い出していた。
「あれ? ミカハチロウの足って、生殖器も兼ねているんですよね?」
「せやで。だから、あの篠田は、いまはミカハチロウの性器でもあるんや」
「「うわぁ……」」
桜子とほのかさんが同時にいやそうな声をあげた。
と、そのとき。
ドアが開いて、隣の部屋からレイシアが出てきた。
レイシアはちょっと涙声で、
「こわれちゃった……」
と言っている。
見てみると、レイシアはみのりの髪の毛を持ってずるずると引きずってきている。
その股間にはレイシアの魔法で生えた男の、なんというか、あれだあれ、あれがあるけど、あまりにも酷使されすぎたのか、なんかもう、しおれちゃって夕方にみる朝顔の花みたいになっちゃってる。
そのみのりは、もはや生気を失った顔で、
「うへへへへ……うひひひひ……あーーーあーーーーー!」
などと意味不明の声をあげながら、声は笑っているのに、目からは大量の涙をボロボロとこぼしながらヒクヒクと全身を痙攣させている。
うーん、さすがダンジョンマスターまで務めたサッキュバス。
レイシアに体力どころか、正常な精神状態まで全部吸いつくされちゃったみたいだ。
これはもう駄目だな。
「お、慎太郎みてみぃ。今度はあいつら、迂回してこっちからきとるで。もう少しで階段や。もう一人くらいやっておくか?」




