第78話 外患誘致に相当する
「おい、待て、まさか俺たちを攻撃するつもりか？ 俺たちは同盟を組んでいたじゃないか！」
市生がそう言う。
〈同盟？〉
〈同盟ってなんだ？〉
〈まさかモンスターとグルになっていたのか？〉
〈いや、そんなことはないだろう。それだけは許されないタブーだぞ〉
もちろん、市生たちがコメント欄を見ることはできていない。
「そうよ！ 私たち、あなたにたくさん人間を提供したはずよ！」
瑞葉がそう言い、篠田も続けて言う。
「そうっす。今までに四人の女子生徒に子供を産ませて、五十人以上の赤ちゃんをお前に食わせたのに！」
「いやー、そうなんすけどね、へへへ……しかし、よく考えると私が食べた赤ちゃんって、ようするにあんたたちがレイプした結果生まれてきたわけで、つまりあんたたちの子供だよね。へへへ、すごいな、監禁レイプしたいってだけで自分の実の子を私みたいな悪魔にくわせたってことでしょ……。悪魔と人間の境目がわかんなくなりますね、へへへ」
〈こいつらなに言っているんだ？〉
〈え、どういうこと？〉
〈まさかとは思うけど、人間をモンスターに食わせてたってことか？〉
〈しかも自分の子供をモンスターに食わせてた！？〉
〈そんな鬼畜、聞いたこともない〉
〈世紀の大事件だぞ〉
〈それだけはやっちゃ駄目なやつ〉
〈外患誘致に相当する罪なんだぞ〉
「おい、ダンジョンマスター！ どういうことだ！？ 今までさんざん俺たちが女子生徒を騙してこのダンジョンに連れてきてやっただろう！ 今回の二宮ほのかだってそうだろう？ あいつ、今どうしてる？ あいつをこのダンジョンに連れてきた俺の妹のみのりは無事か！？」
〈通報しますた〉
〈これは死刑やむなし〉
〈通報した〉
〈俺も通報した〉
〈人類の敵やんけこいつ〉
レイシアは、ジュルリと垂らしたよだれを拭うと、
「へ、へへへ……じゃあみなさん、私に食べられてくださいね、性的に。まずは戦闘不能にしますね」
そして、長い詠唱を始めた。
「暗黒の翼よ、空を裂け！ 次元の彼方で源と源を戦わせよ、その火花をこちらへ呼びよせよ！」
〈最強の呪文だ！〉
〈核爆発の魔法だぞ！〉
〈配信始まったばかりなのにすぐ終わりか！？〉
その呪文を聞いた瞬間、石郷丸は猛然とレイシアに向かってダッシュした。
即座に反応したのは石郷丸だけではなかった。
流川も、対抗して攻撃魔法の詠唱を始める。
「神よ！ 聖なる言葉を我に教えたまえ！ その言霊は悪なる存在を貫き通す！ 神聖なる言葉よ、わが敵の魂に響け！」
〈うお、僧侶系最強の攻撃呪文だ！〉
〈神の祝福を受けた言葉の力で敵を切り刻む、死言葉の魔法だ！〉
〈こんな呪文を使えるなんて、この女超一流じゃねえか！〉
〈あの戦士もすごい速さだぞ！〉
レイシアの詠唱が終わる前に、石郷丸のブラックアックスが彼女を襲う。
飛び退ってよけるレイシア、二の太刀でさらに攻撃を加える石郷丸、それを住んでのところでよけながらレイシアは詠唱を続ける。
「さあ火花よ、我が意のままに舞い踊れ！ すべてを爆発の向こう側へと！」
だが、石郷丸の攻撃をよけながらの詠唱である。
流川の詠唱が終わる方が早かった。
「死言葉！！！！」
ルーン文字で書かれた文字がまさに無数の物体となってレイシアに向かって放出された。
コンマ数秒遅れてレイシアの詠唱も終わる。
「核爆裂！！！！」
