第76話 校長
石郷丸隆夫は、昂っていた。
千載一遇のチャンスであった。
なにしろ、理事長の娘が誘拐され、それを助けに行った息子の方もピンチになっていたのだ。
これを助ければ、昇級間違いなしである。
理事長に気に入られれば、教頭、いや、校長の座まで狙える。
今までカンニングの冤罪を着せて何人もの女子生徒を食ってきた石郷丸であったが、校長という権力者になれれば、さらにやりたい放題できるだろう。
目標は12700人の女子生徒を食うことである。
前人未到の記録を抜き、日本一の校長になってやる!
「絶対に助けてやるぞ……見ていてください、清野理事長!」
石郷丸はもともと、専業のダンジョン探索者であった。
日本でもトップクラスの、S級と呼ばれるパーティに所属し、難関ダンジョンを何度も踏破してきていたのだ。
その実績を買われ、今の学校に体育教師としてスカウトされたのだ。
こんな弱小ダンジョンを攻略するなど、簡単なことだった。
モンスターが出現する。
イビルアイと呼ばれる、巨大な目玉の悪魔である。
直径一メートルはあろうかという眼球、その周りには無数の触手が生えている。
いや、触手ではない、その一本一本が鋭い牙と毒を持つ、蛇となっていた。
一般的に言えば、かなりの強敵と言えた。
だが、石郷丸の敵ではない。
「うおおおおおりゃあああああっ!」
巨大な斧を振り回し、イビルアイに突撃する。
この斧はブラックアックスと呼ばれる、レア武器である。
以前の探索で手に入れたのだ。
持っているだけで敵の特殊攻撃を97パーセントの確率で無効化する。
イビルアイが人間を麻痺させる光線を発射するが、それをブラックアックスでなんなく無効化し、さらに突っ込んでその身体をあっという間に切り刻む。
「すげー! さすが先生!」
市生が感嘆の声を上げる。
「ふふふ。お前ら、俺に任せておけ! 必ずみのりを助けてみせるぞ!」
そして絶大な権力を手に入れて、学校中の女子生徒をわが物にするのだ!
さあ、次のモンスターはどいつだ!?
どんなやつでもこの斧で切り刻んでやる!
さらに進んでいくと、通路の先に黒いもやもやがあった。
これは悪魔を呼びだすための、デビルゲート。
石郷丸はブラックアックスを構える。
やってくるのは悪魔だろう。
さあ、どんな悪魔だ!?
「流川先生! 防御魔法を!」
「はい!」
流川はぶつぶつと魔法を唱え、敵の攻撃のダメージを軽減させる呪文を唱え始める。
石郷丸はすぐに攻撃できるように、斧を上段にふりかぶって敵の出現を待つ。
そこに現れたのは、一人の女性だった。
白い肌、大きな胸、細い腰、しっかりとした腰つき。
その頭にはバッファローのような角。
なにより、その女が身に着けているのは。
きわめて煽情的な、マイクロビキニであった。
首からはなにか機械のようなものをぶら下げている。
「へへへへ……こんちゃーす」
それを見て、篠田は120キロの巨体を揺らして驚きの声をあげた。
「ダンジョンマスター! 無事だったのか?」




