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第66話 締まりがええからなあ

「数の暴力って、ここでも効きますねえ」


 俺が言うと、ご先祖様が感心した表情を見せた。


「せやな、慎太郎、お前、こういうの好きよな。前のダンジョンでもよく使ってたし」

「結局、戦いってのは数なんですよ。コスパを考えればこれが最強」


 俺はアグラをかいていた。

 なんでかっていうと椅子になっていたみのりがさすがに力尽き、床にべったりと寝そべってしまったからだ。

 しょうがないからそれを座椅子代わりにしてアグラをかいていたのだ。

 俺はみのりの肩甲骨あたりに尻を置いている。


「ひゅー、ひゅー、ひゅー、お願い……息ができないの……ひゅー、ひゅー、お願い……そこどいて……ひゅーひゅー死んじゃう……死んじゃうからぁ……」


 みのりの嘆願する声を聞いて俺はかわいそうになっちゃった。

 だから、安心させるために声をかけた。


「大丈夫だよ。死なないよ。死ぬ直前にほのかさんに回復魔法をかけてもらうから。ほんとに死にそうになったら教えてね?」


「助け……助け……ひゅーひゅー…………」


 安心してくれたみたいで、静かになった。


「お、あいつら地下四階に来たぞ。んーとじゃあ次はどうしようかなあ。このダンジョンのマップってある?」


 レイシアに聞くと、四つん這いでご先祖様とほのかさんの椅子になったまま、彼女は答えた。


「い、一応あります……」

「ふーん。このモニターに映せる?」

「いや、紙なんで……」


 紙かあ。

 ペーパーレス化を推進しているこのデジタル時代に紙だなんて、エコじゃないなあ。

 世の中ではレジ袋も有料になっているんだぞ。

 ま、それってたいしてエコになっていないそうだけど。

 それを決めた政治家は許せないな。許せない、ってのは許すことができないって意味だ。


「大丈夫や。紙の地図でもデジタル化できるでぇ。スキャンすればええだけや」


 ご先祖様がそう言って、隣の部屋へ行くと、紙の地図を持ってきた。

 A4サイズの紙が十枚。

 うーん、しょぼい。


「でもどうやってデジタル化するんですか? スキャナーとかあります?」


 ほのかさんが聞くと、ご先祖様はぺったんこの胸を張ってガハハと笑った。


「まあ見てなや。おい、レイシア、この地図を見ろ」


 ご先祖様は四つん這いのレイシアの目の前に地図を置く。


「ええか、ずっとこの地図を見てろよ、目を離すんやないぞ」


 そういってモニターからなにかコードを引っ張ってくるご先祖様。

 コードの先の端子は変な形をしていた。

 丸いボールのようなものがいくつも連なっている端子だった。

 一番先のボールは直径1センチ、次のボールは直径2センチ、それがだんだんと大きくなっていて、根元のボールは直径5センチくらいだ。


 それを見てレイシアは喉の奥から「ひっ」と声を出した。


「なあに、大丈夫や。お前、サッキュバスなんやろ? このくらいへーきへーき」

「待って! せめて、せめてローションを……」

「サッキュバスなんやから気合で腸液ださんかい!」


 そしてそれをレイシアに体の中にずぶずぶとねじりながらいれていくご先祖様。


「ぎゃわわわわわわああああああああ!」


 叫ぶレイシア、笑うご先祖様。

 桜子は眉をひそめて、


「ちょっとかわいそう……」


 そうは言うけどさ。


「こいつ、人間の赤ちゃんを何十人も殺して食ってるんだぜ」


 俺が言うと、「それもそっか」と納得したみたいだった。


 一番大きなボールがレイシアの体内に挿入された瞬間に、モニターの画面がプツッと変わり、そこに地図が表示された。


「ほー、これが地下四階の地図か……」


 廊下がなく、小さな小部屋がいくつも並んでいる階層だった。

 どういう仕組みか知らんが、現在市生(いちお)たちがいる位置まで表示されている。


「んー、電源が足らんなあ……」


 ちらっとみのりを見るご先祖様。

 みのりは俺たちの尻の下で、


「コヒュー、コヒュー……」


 となんとか呼吸しているみたい。


「じゃあこれはこっちやな」


 ご先祖様はモニターからコードを引っ張り出す。

 そのさきっぽはおぞましい形をしたプラグだ。

 それをもって、みのりの側へ。

 で、ほとんど意識もうろうのみのりのスカートをペロリとめくって、ズブリ!


「ぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 俺と桜子のケツの下で手足をバタバタさせるみのり。


「きついか? この体勢は締まりがええからなあ。苦しいかもなあ」


 さて。


 俺たちは地図を見ながら作戦を練ることにした。

 地下四階だと強い悪魔はまだ呼び出せないしなあ。

 


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【奴隷買いの救世主】
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