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転生侍女は推しを死なせたくない ~気づいたら推しにも騎士にも暗殺者にも愛されていた~  作者: 村沢黒音
第5章 推しとラブコメしています

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58.今後の方針


 話が脱線しすぎて埒が明かないので、いったん休憩をとることになった。

 私は最後の最後まで、レオンとの関係を否定し続けた。みんなにはわかってもらえたんだが、わかってもらえてないんだか。


 とりあえず頭を冷やしてこようと、部屋を後にする。

 廊下の空気はひんやりとしていて、落ち着くのにぴったりの環境だ。地下に作られた要塞の、陰鬱とした廊下。その壁に私は寄りかかって、ため息を吐いた。


 その時だった。こつこつと足音が響く。

 暗がりにゼナの鋭い双眸が浮かび上がって、私は飛び跳ねた。


「あ、ゼナさん……ご、ごめんなさい!」

「なぜ謝る」

「いえ、その……すごく睨んでいましたので」

「この目付きか? これは……」


 ゼナは何かを言いかけて、首を振った。


「……いや。何でもない。睨んでいたように見えたのなら謝る。そして、先ほどのことも」

「え……?」

「私はどうも色恋沙汰というものに疎いようだ。先ほどはおかしなことを言ってすまなかった。レオンとお前は、そういう関係ではなかったのだな」


 私はほっと胸をなで下ろした。

 わかってもらえたという安堵感が胸を満たしていく。


「わかってもらえて嬉しいよ……じゃなかった、嬉しいです」

「お前のことはまだ信用したわけじゃない。何かを隠していることを知っている。それでも、個人的な感情を抜きにして考えれば、お前の予言は外れたことがないというのも確かだ」


 そこでゼナの瞳が迷うように揺れた。


「だから……」


 ゼナの双眸がどんどんと険しくなる。

 ものすごく怒っているように見えて、私の心臓は縮んだ。


 あ……でも、そういえば。


 私は1つ思い出した。フェアリーシーカーにおけるゼナの設定だ。

 そうだ、確かこの子は。


「えっと……ゼナさん。最後に寝たのはいつですか?」


 私が聞くと、ゼナはきっ、と目を尖らせた。

 不愉快そうに眉を寄せて、私を恐ろしいほどの眼差しで射抜く。


「なぜ貴様がそれ・・を知っている!?」


 ひい、と私は息を呑んだ。


 しまった。ゼナに関するこの情報……というか、イベントはまだ起こしていないんだった。

 本来なら竜人族の国のストーリーで開示される情報だった。それなのに、ゼナ誘拐のイベントを私はスキップしてしまったから。


 私が謝ろうと口を開く。

 と、それよりも早くゼナは目を伏せた。


「く……何でもない。今は気が立っている。後はお前たちで話し合え」


 ゼナは私の前を通り過ぎて、奥へと進んでいく。

 廊下の暗闇に飲まれるようにして、その姿が見えなくなってしまった。




 頭も体もすっかりと冷えてしまった。

 部屋へと戻ると、勇者一行も興奮が冷めているようだった。

 私は内心でほっとする。これ以上、レオンとの関係をからかわれたくはない。というか、あんな冷徹男が私の恋人だと思われていたなんて。何かもう……さっきのことは忘れてしまいたい。みんなにも忘れてほしい。


 私の顔を見て、ユークが申し訳なさそうにほほ笑んだ。


「さっきはごめん、ルイーゼ」

「いいえ。わかってもらえたらそれでいいんです」

「それで、今後の方針をみんなで話していたんだ。ルイーゼの言う通り、魔剣を取りに行こうと思う」


 ユークの言葉に続いて、エレノアが頷く。


「問題は、魔人族の国にどうやって潜入するかということです。それに、スフェラ様の復活のための妖精もあと1匹足りていない状態です」

「そうか。最後の妖精はこの国に眠っているんだったな」


 そこでレオンが提案した。


「二手に分かれてはどうですか?」

「確かにワシらも大所帯になってきたからな。その方が効率がよい」


 あとはさくさく進行だった。方針が定まってしまえば、細かい部分をつめていくだけだ。

 私たちは二手に分かれることになった。


 魔剣入手チームは、

 私、レオン、アイル、ユーク、ゼナだ。


 妖精探索チームは、

 エレノア、イグニス、コレットを含むその他のメンバー。


 こんな感じで各々に行動することになった。


 二手に分かれる際、私とレオンはさりげなく皆を誘導して、こちらのチームにアイルとゼナを引きこんだ。女神は復活したらすぐにでも「浄化」を行って、世界を滅ぼそうとするだろう。だが、「浄化」発動の鍵となるのは、アイルとゼナだ。2人を女神復活の場から引きはがすための策だった。


「魔人族の国にどうやって潜入についてですが、先ほど捕えた彼らに協力してもらうことになりました」


 と、レオンが淡々と説明する。

 当然、ユークたちには驚かれた。


 そこで、私たちは魔人族の皇帝がヴィリロスに洗脳されていて、ヘルマンたちはそれを解く方法を探しているのだと説明した。彼らも邪神ヴィリロスを滅したいという意思があり、利害が一致しているために協力ができそうだと話す。

  

 こんな時、一番に否定的な声を上げるゼナちゃんは今は不在だ。しかし、とはいっても相手は魔人族。皆、彼らを信用できるかどうか半信半疑といった状態だった。エレノアには何度も「大丈夫ですか」と不安そうな顔をされてしまう。


 だから、彼らを信用できるのかどうか、もう一度、確認を行うことになった。それはユークがヘルマンたちと話をして判断するということで、今日の作戦会議はお開きとなった。


 たぶん、ユークもヘルマンとわかり合えるのではないかと私は思う。エリックはともかく、ヘルマンさんはすごくまともだし、話も通じるし。

 ユークは勇者なだけあって、心が太平洋よりも広いから。


(ふう……トラブルもあったけど、何か一気に話が進んだ気がする)


 ヴィリロスを倒して、魔剣を手に入れて、スフェラを倒す。

 話がシンプルになって来た気がする。

 それに、光明が見えて来た。ヘルマンさんのおかげで、スフェラを倒す算段が付いたのだ。

 そもそもフェアリーシーカーは王道RPGなんだ。悪を倒して平和が訪れる。そんなわかりやすいエンディングが一番似合っていると思う。


 私は明るい気持ちになって、アイル様に声をかけた。


「あの、アイル様」


 久しぶりにお菓子でも作って、アイル様とお茶の時間を過ごしたい。のんびりまったりと癒しの時間を享受したい。

 そう思って声をかけたのに。

 アイル様は私の顔を見ると、複雑そうに眉を寄せた。さっと視線が逸らされる。


「すまない。少し1人にしてほしい」


 そして、さっさと部屋を出て行ってしまう。


 あれ……?

 何だか、アイル様、冷たくない……?


 3年前のツンツン期を思わせる態度に、私はぽかんとしてしまうのだった。


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