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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
ラリアント防衛戦

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0090話

 モリクからの要請を断った翌日の夜……再びアランはゼオンに乗ってガリンダミア帝国軍が野営をしているだろう場所に向かって飛んでいた。

 本来なら相手の進軍速度を落とすという意味で、昼のまだ進軍している中で奇襲をするというのが一番だったのだが、最初に奇襲をしたのが昼だった以上、向こうも再度の奇襲を警戒しているのは間違いない。 相手が待ち受けている中で奇襲をするのは、それこそ意味がなかった。

 ……もっとも、アランとしては敵を若干でも警戒させるとなれば進軍速度は落ちるので、高度数キロというどうやっても敵の攻撃が届かない場所から岩か何かを落とすなり、ビームライフルを撃ち込むなりといった攻撃をしすれば、どうあっても敵の進軍が鈍ると、そう思っていたのだが……


「ったく、モリクさんに断られたからって、普通俺に直接来るか? いやまぁ、そっちの方が手っ取り早いって言われればそうかもしれないんだけど」


 ゼオンのコックピットの中で、アランが不満そうに呟く。

 そう、昼にほぼ駄目元ではあっても敵に対する嫌がらせ……いわゆるハラスメント攻撃を行おうとしたアランだったが、そんなアランに何人かの面会希望者がいたのだ。

 雲海の交渉担当の人物が相手をしてくれたのだが、相手はこの状況でラリアントに残ってくれている相手である以上、無碍にも出来ない。

 アランとしては、ラリアントは嫌いではないが、それでも自分が死んでも守る! ……と言った場所ではない。

 だが、ガリンダミア帝国軍にアランの力……ゼオンについて詳しく知られている以上、もしラリアントが落ちてしまえば、そして最終的にドットリオン王国までもがガリンダミア帝国軍に占領されてしまえば、アランがガリンダミア帝国軍に指名手配されてもおかしくはない。

 何よりもすでに昨日奇襲をしている以上、ゼオンの力がどれだけのものなのかというのは、アラン本人の手でガリンダミア帝国軍に証明してしまった。

 こうなってしまうと、もう意地でもラリアントでガリンダミア帝国軍を撃退……それもただの撃退ではく、下手にアランにちょっかいを出した場合、大きな被害を受けて割に合わないと判断させる必要がある。

 そのためにはラリアントの戦力はいくらあっても足りない訳で、そう考えるとやはり現在のラリアントの有力者に対して無碍にも出来ない。

 結果として、交渉担当の人物が押し負ける形でアランは面会をすることになり、結局日中の攻撃は不可能となった。

 夜の空を飛びながら、アランは面倒そうに息を吐く。

 そもそも、空を飛べるモンスターがいないのに一緒に奇襲に参加させろという方が無理なのだ。


「っと、見えてきたな」


 地上に見える野営の光。

 普通なら高度数キロを飛んでいる中で、地上に存在する篝火の類はそうそう見えるものではない。


(あ、でも日本にいた頃に、衛星写真とかで夜の海でイカ釣り漁船の光がしっかりと見えたとか何とか、何かで見たことがあったな)


 一瞬そんな風に考えたアランだったが、イカ釣り漁船に光……いわゆる集魚灯と呼ばれているものは、それが一つを点けただけで一般的な家のブレーカーは落ちるといったような代物だ。

 当然のように、そのような明かりと木を燃やしているだけの篝火は、比べることそのものが間違いだといってもよかった。

 ……アラン本人はそこまで詳しい事情は知らなかったが、それでも明かりの強さが違うというくらいは容易に想像出来た。

 ただの篝火が、宇宙から見えるはずもないのだから。

 それどころか、数キロの高度からも見つけるのは難しいだろう。

 それでもしっかりと篝火を見ることが出来たのは、ゼオンのコックピットにある映像モニタが地上の様子を拡大してくれたためだ。


「どうやら、規模的にもここで間違いないな」


 上空から、地上の様子を確認してアランは納得したように呟く。

 これがもっと少人数の……それこそ十数人の規模であればガリンダミア帝国軍とは関係のない別の集団が野営をしているのだろうという思いもあったのだろうが、数千人単位の規模での野営……それも今このときとなれば、そのような存在はガリンダミア帝国軍以外には存在しない。


「ちょうどこっちの都合よく油断してくれている……といいな」


 夜の上空から地上を見ただけでは、それが具体的にどのような状況なのかは、アランにも分からない。

 それこそ油断して酒を飲みながら見張りもろくにしていないのか、もしくはしっかりと見張りをしているのか。

 とはいえ、それでも予想は出来る。

 昨日の日中にアランに奇襲されたばかりなのだから、昨日の今日でそこまで油断をするということはないだろう、と。

 アランとしては、今日の日中には奇襲しなかったのだから、出来れば油断をして欲しいというのが正直なところだ。

 だが、次々と周辺諸国――どれも小国だが――を占領してきたガリンダミア帝国軍が、昨日の今日で油断するはずもない。


「そうなると、昨日の奇襲よりは短い時間だけ攻撃して、さっさと逃げるのが最善か」


 自分がやるべき行動を決め、地上に向かって落下していく。

 とはいえ、それはスラスターを使って全開で地上まで落下していくのではなく、自然落下のような形だ。

 高度数キロの位置から、地上に向かって落下していきながらアランはゼオンにビームライフルを握らせる。

 この状況では、しっかりとした狙いをつけることは出来ない。

 それでも篝火によって野営地のある場所は判明している以上、大まかに狙いをつけることは出来る。

 上空から光が走り、それが次々と地面に降り注いでは爆発を生み出す。

 そうしてビームライフルを連射しながら地上に降下していくと……不意に、パリンッという、まるで薄い氷かガラスが割れたような音がアランの耳の中に入ってきた。

 実際にはビームライフルを連射しているので、そんな音が聞こえるはずはない。はずはないのだが……それでも、その音は間違いなくアランの耳に入ってきた。

 それも、一度だけではない。

 何度も続けて、同じような音がアランの耳に入ってくる。

 明らかな異常。

 それが何なのか、アランにとっても何となく理解出来た。

 似て非なる感触ではあったが、ザラクニアと本格的に戦う前、イルゼンたちと合流するときにゼオンでラリアントへ強引に侵入したときに同じような感覚を味わったためだ。

 つまり、これは……


「結界!?」


 アランの口から、その答えが出る。

 とはいえ、ガリンダミア帝国軍は実戦慣れした軍隊だ。

 その中には、結界を張れるような者がいてもおかしな話ではない。

 もしくは、何らかのマジックアイテムか。

 ともあれ、上空から奇襲をするというのは昨日の日中に見せたのだから、それに対策をするというのはおかしな話ではなかった。


「結界が張っていても、それをでどうにかするよりも前に、攻撃して回避すればいいだけだろ」


 半ば自分に言い聞かせるように、地上に向けてビームライフルを発射しつつ、高度も下がって間合いが縮まったということもあり、腹部の拡散ビーム砲を放つ。

 夜の空にいくつも走る光。

 それは何も知らない者が見れば、綺麗だと言ってもいいだろう。

 だが、実際には命中した瞬間に人の一人や二人は一瞬にして消滅させることが出来るだけの能力を持った凶悪な光だ。

 そんな光が、それこそ雨のように無数に地上に向かって降り注ぐ。

 ビームと腹部拡散ビーム砲を連射しながら、地上に着地するアラン。

 取りあえずは周囲にあるテントを手当たり次第に破壊し、物資や人的被害を増やしてからその場を離脱しよう考え……ふと、気が付く。


「人が、いない?」


 そう、周辺の地面はゼオンのビームライフルによる攻撃で多数のクレーターを作っており、土煙の類も盛大に舞っている。

 にもかかわらず、本来ならパニックになって走り回っていたり、怪我をして地面に倒れていたり、また奇襲してきたゼオンに反撃をするために立ち向かったりとしている者がいなければおかしくはないのに……現在、コックピットの映像モニタは、ガリンダミア帝国軍の兵士の姿はどこにも存在しなかった。

 それこそ、最初からここには誰もいなかったかのような……


「罠かっ!?」


 叫び、背中のウイングバインダーを含めたスラスターを全開にして上空へと戻ろうとする。

 咄嗟の判断ではあったが、その反射的な動きは普通に考えれば十分に早い判断と言えるだろう。

 だが今回の場合は、そんなアランの判断よりも、敵が次の行動に移る方が早い。

 暗闇の中から、巨大な牛……それこ全高五メートルほどもある巨体を持つ狼が姿を現したのだ。

 それこそ、まるで闇を貫くようにという表現が相応しいほどの速度で。

 空中に浮かぼうとしていたゼオンは、当然のように地面に足をついていない。

 そんな状況で、ここまでの巨体を持つ狼の突進を受ければ、空中でバランスを崩すのも当然だった。

 それでも何とか吹き飛ばされずに機体各所に存在するスラスターを使って体勢を整えるといった真似が出来たのは、アランがロボットの操縦――正確には日本にいたときのゲームだが――に慣れていたから、というのが大きいのだろう。

 とはいえ、巨大な狼の方もゼオンを吹き飛ばしただですませるような真似はしない。

 ゼオンが体勢を整えている間に再びゼオンに襲いかかる。

 今度は体当たりではなく、その牙をゼオンの装甲に突き立てんとして。

 狼の全高が五メートルという巨大さであることを思えば、牙を突き立てようとして開いた口は、まさに凶悪と言ってもいい。

 並の人間であれば、それこそ何をすることも出来ずにその牙を突きたれれてしまうだろう。

 だが……アランは、並の人間ではなかった。

 探索者としての能力という点では、どんなに頑張っても並程度の才能しかないのだが、心核使いという点では前世の影響もあって非常に優れた才能を持っている。

 対戦ゲーム……特にゼオンという名前のロボットが出て来るロボットの対戦ゲームにおいて、吹き飛ばされた状態で相手が追撃をしてくるということは珍しくない。

 そんな相手に対してアランがすることは……一番手軽な武器である頭部バルカンを撃つことだ。


「ギャンッ!」


 狼の悲鳴を聞きつつ、アランは何とかゼオンで周囲を見回す余裕を生み出すのだった。

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