エピローグ
「クジラさん、見に行きたい!」
俺の彼女さんが思い付いたように言った。
ホエールウォッチングはお金もかかるし、確実ではない。クジラを飼育している水族館なら一泊したら行けるか?
夏休みのバイト代のほとんどをつぎ込んで、彼女の分の旅費も工面する。
子供っぽい彼女さんを喜ばすのは大変だ。それは悪い気はしない。
夏休みの終わり際。電車で半島の南端を目指した。
水族館でクジラを見るために。
海の入り江自体が巨体な生け簀になっている水族館だった。
柵のない海岸。海面との段差は1メートル位。
海岸から海を覗くと、目の前にシャチがいた。ヒレを振ってくる。
「もしかして、エサをおねだりされてる?」
「そうかもね」
「おっきい!」
「大きいね」
「落ちたら、食べられる?」
「落ちてみる?」
「んー、やめとく!」彼女は始終楽しそうだ。
半島の先端近くの民宿に泊まった。
岬を散歩する。
半島を廻る航路上を、外洋航路の船舶が一列に連なっていた。
それが面白くてずっと見ていた。
「そろそろ移動する?」
「んー、洋介が飽きるまで見てる」
「俺、なかなか飽きないよ?」
「じゃあ、ずっと見てる」
夕日が水平線に沈もうとしているところだった。
南に張り出した半島なので、朝日が水平線から昇るところも見れるだろう。明日は早起きしないとだな。
「洋介、大好き」
「うん。瑞希、大好きだよ」
二人とも水平線を行く船を見ている。
「洋介とまた会えてよかった。千年、ずっと会いたかった……」
また、転生かよ。うんざりして、嫌みでも言ってやろうかと彼女を見る。
……軽口を叩ける雰囲気ではなかった。
彼女は水平辺を見つめながら、ただ涙を流していた。
「……瑞希」彼女を呼ぶ。
彼女は俺を見る。
「千年前のご主人様と、俺とどっちが好き?」
「え?……」彼女は不思議そうな顔をした。
「……洋介、千年前の自分に妬いてんの? 可愛い!」
「な?!」彼女の言葉に動揺する。え? これって図星か?
「洋介の方がずっとずっとカッコいいよ!」からかうように言ってくる。
「そう……」なんか恥ずかしい。というか嬉しい。
「洋介、お願いがあるの」彼女が一転して真剣な表情になる。
「何?」
「私が死んだら転生しないように、魂を滅ぼしてほしいの……」
「俺は失ったりしない。する気もないよ?」
「お願い。転生の呪いを断ち切って欲しい。洋介との記憶を最後に、幸せのまま滅ぼして……」
「……。瑞希を幸せにするよ? 約束する。俺の残りの人生を瑞希の為だけに使ってもいい」
これってプロポーズだよね。
「でも、魂を滅ぼすことは……。失うことはするつもりはないな」
彼女は絶望したような表情を浮かべた。
いや、最後まで聞け。
「あの、瑞希……。俺、呪いを解くのは得意なんだけど?」
「え?」
「……。もしかして俺の事、信じてなかった?」
「……、ご主人様殺した男も、呪いを解くには魂を滅ぼすしかないって……」
「ああ、一成兄さんも、瑞希も滅ぼすのが得意だよね。でも、俺は滅ぼしたことないから。呪いは解く方が得意だから」
瑞希が呆然としている。涙の跡は乾いている。
彼女に泣き顔は似合わないな。そう思った。
「……洋祐、大好き……」
「うん。俺も大好きだよ」
「洋介、愛してる!」彼女はニカッと笑った。
「瑞希、愛してる」俺も笑い返した。
…………………………………………………………………………終劇。
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