家族の肖像
「祐実は俺の大好きで大切な妹だ」
これは嘘じゃない。
「そうじゃない!」祐実叫んだ。
「私は洋介が好き! 瑞希なんかに取られたくない!」祐実は感情を爆発させる。涙を溢れさせて叫ぶ。
「わかるよ」俺は極力落ち着いて言葉を紡ぐ。「俺は父さんも母さんも、もちろん祐実も好きだ。ずっと一緒にいたい大切な家族だ。でも、いつまでも一緒にいられる訳じゃない。祐実が俺を瑞希に取られたと思うのもわかる。この先、祐実に好きな男の人が出来てその人と家庭を持ったりしたら、俺は寂しいと思うだろうし。父さんも母さんも寂しいと思うだろう。でも、それは仕方ないんだ。子供は家族を持って親になる。そしてその子供は家族から離れて新しい家族をもつ。そうやって続いてていくんだよ」
祐実は涙を止められないまま、俺の話を黙って聞いていた。
「先の事まではわからないけど少なくとも今は、俺は瑞希と一緒にいたいと思う。祐実もこの先一緒にいたい人ができるだろう。それは寂しくって感傷的な未来かもしれない。それでも人は明日に向かうんだよ」
これは寝たフリをしている瑞希にも聞かせる。
「想い出補正された甘美な過去に価値なんかない」
「私は未来も洋介と作りたい」祐実の涙は止まらない。「ずっとずっと洋介を愛してる」
「俺も祐実を愛してる。どんな未来であったとしても、俺たちはずっと家族で、祐実は俺の愛する妹だ」
どれだけ言葉を重ねても届かない。それでも俺たちは言葉を紡ぐ。
「俺の未来は瑞希と作る。祐実の未来はいつか出会う大切な人と作るんだよ」
家に帰った。
祐実は自室に引き上げた。
玄関でおんぶしたまま瑞希の靴を脱がす。
とりあえず俺の部屋に連れていって、ベッドに瑞希を下ろす。
瑞希は俺の腕をつかんで離さない。
瑞希はずっと黙っていたけど寝ていたわけではなかった。ただ拗ねて喋らなかっただけだ。
「洋介」瑞希は泣き腫らした目で俺を見る。
俺は瑞希の横に腰を下ろして、彼女の頭を撫でた。
「祐実ちゃんが言ってたのは、そう言う事じゃないと思う」
「そう言う事だよ」
祐実の想いを正しく理解したところで、その想いに答えることはできない。
瑞希は黙った。
「瑞希、夏休みは何する?」
「洋介と遊ぶ」
「うん。何して遊ぼう?」
「海に行きたい。山にも行きたい。遊園地に、動物園。また水族館も行きたい。キャンプも行きたい。二人で旅行にも行きたい」
「やりたい事が沢山だね」
「ずっとずっと、洋介といたい」
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次回、最終回です。




