表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/98

家族の肖像

「祐実は俺の大好きで大切な妹だ」

 これは嘘じゃない。


「そうじゃない!」祐実叫んだ。

「私は洋介が好き! 瑞希なんかに取られたくない!」祐実は感情を爆発させる。涙を溢れさせて叫ぶ。


「わかるよ」俺は極力落ち着いて言葉を紡ぐ。「俺は父さんも母さんも、もちろん祐実も好きだ。ずっと一緒にいたい大切な家族だ。でも、いつまでも一緒にいられる訳じゃない。祐実が俺を瑞希に取られたと思うのもわかる。この先、祐実に好きな男の人が出来てその人と家庭を持ったりしたら、俺は寂しいと思うだろうし。父さんも母さんも寂しいと思うだろう。でも、それは仕方ないんだ。子供は家族を持って親になる。そしてその子供は家族から離れて新しい家族をもつ。そうやって続いてていくんだよ」


 祐実は涙を止められないまま、俺の話を黙って聞いていた。


「先の事まではわからないけど少なくとも今は、俺は瑞希と一緒にいたいと思う。祐実もこの先一緒にいたい人ができるだろう。それは寂しくって感傷的な未来かもしれない。それでも人は明日に向かうんだよ」


 これは寝たフリをしている瑞希にも聞かせる。


「想い出補正された甘美な過去に価値なんかない」


「私は未来も洋介と作りたい」祐実の涙は止まらない。「ずっとずっと洋介を愛してる」


「俺も祐実を愛してる。どんな未来であったとしても、俺たちはずっと家族で、祐実は俺の愛する妹だ」


 どれだけ言葉を重ねても届かない。それでも俺たちは言葉を紡ぐ。


「俺の未来は瑞希と作る。祐実の未来はいつか出会う大切な人と作るんだよ」




 家に帰った。

 祐実は自室に引き上げた。

 玄関でおんぶしたまま瑞希の靴を脱がす。

 とりあえず俺の部屋に連れていって、ベッドに瑞希を下ろす。

 瑞希は俺の腕をつかんで離さない。

 瑞希はずっと黙っていたけど寝ていたわけではなかった。ただ拗ねて喋らなかっただけだ。


「洋介」瑞希は泣き腫らした目で俺を見る。

 俺は瑞希の横に腰を下ろして、彼女の頭を撫でた。


「祐実ちゃんが言ってたのは、そう言う事じゃないと思う」

「そう言う事だよ」

 祐実の想いを正しく理解したところで、その想いに答えることはできない。


 瑞希は黙った。


「瑞希、夏休みは何する?」

「洋介と遊ぶ」

「うん。何して遊ぼう?」

「海に行きたい。山にも行きたい。遊園地に、動物園。また水族館も行きたい。キャンプも行きたい。二人で旅行にも行きたい」

「やりたい事が沢山だね」

「ずっとずっと、洋介といたい」


読んでくれて、ありがとうございます。

次回、最終回です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ