叱ってあげて
睦瑞希は妹の祐実に殴られて吹き飛んだ。
「瑞希!」俺は慌てて駆け寄る。
瑞希はビックリした顔で上体を起こす。俺を見ると、
「洋介!」と叫んだ。
座っている瑞希の隣に膝をつく。
瑞希は勢いよく俺に抱きついて、大きな声をあげて泣き出した。
「祐実ちゃんが殴った! 祐実ちゃんが殴った! 叱ってあげて! 洋介、祐実ちゃんを叱ってあげて!」
いや、仕合受けたのお前だろ。
俺は祐実を見る。
祐実も呆然として、突っ立っていた。何が起こったのか理解できないようだ。
「祐実、手加減しろと言っただろ。素人相手に本気出すとか、大人げないぞ」
「……え? ……えぇ……」祐実は納得いかないといった感じだ。
「瑞希、祐実を叱ってやったからな。もう泣くな」頭をよしよしする。
「……、ごめんなさい。勝てると思ってなかったから、手加減するなんて思い付かなかった……」祐実が言い訳をする。
「祐実には霊力の耐性があるって教えたよな。単なる物理的な肉弾戦になるってわからなかったか?」
「……、わからなかった……」
本当にわかってなかったのか……。
「あ、でも、瑞希にはちゃんと言ってなかったんじゃないか?」
「瑞希は調子に乗ってたからな。祐実に負けて、大人しくさせないと危なっかしかったから」
「わざと負けさせたの? 可哀想じゃない?」
「祐実が、ちゃんと手加減してくれると思ったんだよ!」
「……、ごめん」
「あと、祐実が瑞希に萎縮してたからな。そんな必要はないのに」
「あ、うん……」
「父さんも止めなかっただろ? 祐実がケガする可能性が僅かでもあったら、父さんは止めている」
瑞希はなかなか泣き止まない。
空が明るくなってきた。そろそろ散歩してる人とかに会いそうだ。
「瑞希、帰ろう」
「抱っこ」
「おんぶな。背中に乗って」長く抱っこしているには瑞希は重たい。いくら小さくても中学生だからな。
おんぶして歩いてるうちに、瑞希は泣き止んだ。静かすぎる。泣きつかれて寝てしまったのか? 朝が早かったからな。
「瑞希、寝たの?」
「呼び捨てにするな」
「……、姉さん寝たの?」
「寝たかな?」
しばらく無言で歩く。
「兄さん」祐実が俺を呼んで立ち止まる。
俺も立ち止まって、祐実を見る。
祐実は思い詰めた顔で俺を見ている。
「兄さん。好きです。瑞希じゃなくて、私を選んでください」真っ直ぐに俺を見てはっきりと言った。
「……」
俺が答えられずに黙っていると、祐実が泣きそうな顔になる。黙ったままではいられない。
「祐実、俺は祐実が好きだよ。祐実は俺の大好きで大切な妹だ」
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