お泊まり会
「いや、女の子が着替え無しって、ダメだろ」
睦瑞希の、「彼シャツ」宣言に冷静に突っ込みを入れてみた。
下着も着替えないって事か?
瑞希のお泊まり宣言には誰も突っ込まない。一度、お泊まりした既成事実が有るから。前回も着替えは無かったが、そもそも着替えが出来る状態ではなかった。瑞希がずっと泣いていたから。
「着替え取りに帰ろう。父さん、車出してくれない?」
「……、まあ、瑞希さんのご両親にも挨拶が必要か……」そう言って、父が車を出した。
瑞希の両親はあっさりと瑞希を送り出した。
あまりの簡単さに父は面食らっていた。いや、内心はあきれ返っていたと思う。
瑞希の両親は、子供のお泊まり会程度の認識なんだろう。
俺もその程度の事以上をするつもりはない。けど、それでいいのか?
瑞希は替えの下着や明日着る服。そして仕合で着るジャージを持ってきた。
寝る前に風呂に入らせる。
「一緒に入らないの?」
「入らないよ」
彼シャツをやりたがったので、長袖カッターシャツを貸す。クリーニングした冬服をわざわざ出した。
「ズボンは履かない」と主張してきたが、短パンを履かせた。
俺は暑いのが嫌いなので、短パンとTシャツを寝間着代わりにしている。
瑞希は当然のように俺のベッドに入ってきた。そもそも瑞希の布団は用意していなかったが。
「洋介、腕枕!」
「はいはい」腕枕してやる。
瑞希は嬉しそうにくっついてきた。
灯りを消してさっさと寝ることにする。
「もう寝るの?」
「寝ろ」
朝5時前。目覚ましが鳴る。
まだ暗いので手元の灯りを点ける。
「瑞希、朝だよ」
「んん……」目を覚まさない。
「起きないと不戦敗だよ」
「んん!?」
着替えて家を出る。
妹の祐実は既に家を出たようだ。
薄暗い公園に祐実はいた。準備運動をして待っていた。
やる気は充分なようだ。
「おはよう、祐実」
「おはよう、兄さん」
「……おはよう、祐実ちゃん」
「……お早うございます、姉さん」
祐実は既に殺気を出している。
対して瑞希は何故か余裕ぶっている。
「瑞希、ムリすんなよ」
「うん。大丈夫」
ホントかよ?
「祐実、俺の彼女さんにケガさせないでくれよ」
祐実は返事をしない。
勘弁してくれよ。
「始めていい?」祐実が瑞希に尋ねる。
「いいよ」瑞希は俺から離れて前に出た。
一気に瑞希の霊力が放出する。祐実に霊力の耐性が有ることはわかっている。精霊を通じて周りの物質に干渉した。
祐実の足元の地面が削れる。
祐実は足元がなくなる前に飛び上がって、距離を詰める。
祐実が立っていた場所が、数十センチは削れていた。
近くの遊具を固定していたコンクリートを砕いて、祐実に飛ばす。頭に当たれば死ぬこともあるだろう。
瑞希は当然のように頭を狙って飛ばしていた。
祐実に近付くと瑞希の霊力は霧散する。勢いが落ちたコンクリートの破片を、祐実は軽々とその身体能力だけで避けた。
一瞬で瑞希との距離を無くした。
祐実の右拳が瑞希の顔を強打する。瑞希は勢いよく吹き飛んだ。




