瑞希のいる食卓
土曜日の夜。
今日も睦瑞希が高坂家にやって来ていた。
頻繁に来ている。
いつも通り瑞希は母とにこやかに夕食を作っている。
瑞希が来ると、夕食が俺の好物になるので嬉しい。
でも瑞希は無理しすぎだ。嫁アピールがすぎる。
そして瑞希が来ると妹の祐実が不安定になる。ムダに瑞希に対抗したりするが、全く勝てていない。
瑞希が食事を作った日は、祐実の食事が細くなる。あげく夜中に吐いていた日もあった。
「祐実ちゃん、おかわりは?」瑞希が尋ねる。食の細い祐実を気に掛けている。いや、気に掛けているアピールか?
「もう食べれないから……」明らかにいつもより食事量が少ない。
食事が終わって瑞希が片付けをしている間も、祐実はテーブルに座ったままだ。
台所から追い出された母は、父とテレビを見ている。どうでもいいニュースが流れていた。
俺はテーブルに座ってスマホをいじっている。ゲームをしながら、たまに瑞希と会話したり、無言で瑞希と目を合わせて微笑むだけの簡単なお仕事だ。
洗い物を終えた瑞希が自分用の可愛い柄のエプロンを外しながらテーブルに戻ってきた。
「お疲れ」
「うん」
瑞希が俺の左横のイスに座る。俺と父の席は向かい合わせにある。その横のテーブルの短辺が瑞希の席だ。
今までは家族分の4脚しかイスがなかったが、最近は瑞希の席が出来て、普段から5脚のイスが用意されている。
俺の右横に座っていた祐実が思い詰めたような表情で瑞希を見る。
「姉さん。仕合をしたい」
瑞希が無言で祐実を見る。
「瑞希は格闘技は出来ない」俺は事実だけを伝える。
「祐実、瑞希ちゃんとケンカしちゃダメよ」母は場を読めない温いことを言った。
「母さん、祐実と瑞希さんの問題だ」父は母をたしなめた。
「あら?」
「洋介、どうする?」父が俺に振ってくる。丸投げか?
「祐実、瑞希はケンカなんて出来ない」
「でも霊力は使える」
「祐実には耐性があるって言っただろ?」
祐実が黙る。
「いいよ」瑞希が平然と言った。「いつやる?」
「明日の夜明け。近くの公園で」
「瑞希、やめておけ」
「洋介、大丈夫」
何が大丈夫なんだ? わかってるのか?
瑞希は時折見せる子供らしくない目で祐実を見る。
祐実は怯えたように目をそらした。
何をやってるんだこいつらは……。
父は呆れたように首を振った。
「洋介、お泊まりする!」瑞希が楽しそうに言った。
祐実は、「明日早いから」と言って、さっさと風呂に入って自室に引き上げた。
瑞希に、「送っていこう」と言ったら泊まっていくと言い出した。
「明日早いから!」泊まる気、満々だ。
前に一回泊まっていったので、ハードルが下がっている。
「瑞希ちゃんの親御さんに連絡しないといけないわね」母があっさりと許可した。
父が苦笑したが、なにも言わなかった。
「着替えは?」
「洋介の服貸して! 彼シャツ!」
どこでそんな言葉覚えてくるんだ。中学生が……。




