瑞希の希望
睦瑞希は夢を見ていた。
これは夢だとわかる。
これは現実ではない。でも、現実に有った事。
初めて霊力を使ってから、夢をよく見るようになった。
この前に島崎桜の叔父さんの家で、霊力を使ってから更に夢を見るようになった。
過去に有った出来事を夢に見る。
これが夢だとはわかる。同時にこれが過去に有った事実であることもわかる。
何度も転生した。その時の千年間に渡る記憶。
何度も死んで、何度も生まれ変わった。
何度も殺されて、何度も殺した。
特におかしな話ではない。そう言う時代だ。その時の家族、友人、仲間が何人も殺された。
その時の家族、友人、仲間を守るために何人も殺した。
私が殺されることは少なかった。私を殺せる人間はそんなにいなかった。
それでも私の霊力を越えてくる強者がいた。数で押され、何とも出来ない事もあった。
大都市一つを燃やし尽くす焼夷弾の雨の中で、私に何が出来るというのか。
洋介の従兄弟、高坂一成が私の目の前に現れた。
魂の形を見間違えるわけがない。
ご主人様を殺した男だ。
私の霊力を無効化してくる。殺せない。
「君だって何人も殺しただろ? 自分の事を棚にあげて、僕だけ罪をつぐなえって、お前が言うな、だよ?」
この男もこの千年の間の記憶があるのか。
何人も殺して、何回も殺されたのか。
この男は転生は呪いだと言った。
間違いなく呪いだろう。
転生という呪いを望んだ私は正気ではなかった。あの時の私は気が狂っていたのだろう。
「今殺されてくれるなら、転生できないように魂ごと滅ぼしてやる」
この男はご主人様の仇だ。それは間違いない。
だが、これ程の呪いを受ける罪を犯したのだろうか?
この男は今死にたい訳じゃない。
私は今死にたい訳じゃない。
天寿を全うしたいだけだ。
「洋介くんは僕たちの希望だよ。瑞希さん、せいぜい洋介くんに捨てられないようにね」
今度こそ洋介と一緒に生きたい。今度こそ洋介と一緒に死にたい。
次に死ぬときは、お互いの魂を消滅させて、永遠の死を得たい。
無限の転生と言う呪いから解放されたい。
洋介は唯一の希望だ。
私と洋介の永遠の死を邪魔する女が二人いた。
一人は幼馴染み。
三度も洋介を自分のものにしようとした。
二回目の時には、あの女を殺そうとしたが洋介に邪魔された。
三度めは、霊を取り込まずに生身で洋介を殺そうとした。しかし、殺せなかった。彼女は一度も人を殺したことがない。私と違って。
彼女は洋介と戦って満足したのか、洋介に執着することをやめ、他の男を選んだ。
もう、私には関係ない。今度洋介に手を出すなら殺す。
もう一人の女。高坂祐実。洋介の妹だ。
「姉さん。仕合をしたい」あの女は私との決着を所望らしい。
どちらが洋介に相応しいかわからせる。




