表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/98

水族館

 睦瑞希は既に待ち合わせ場所の駅前に来ていた。

 土曜日の朝。9時の約束なのに、今は8時半前だった。


 瑞希が約束より大分前に来ることは予測していた。だから早く来たのだが……。


 彼女は黒のコルセットスカートに半袖の白のブラウス。黒のソフトハットに黒のローファー。ポシエットも黒。

 名一杯大人びたコーデ。

 これも予想していたので、黒のスラックスに白の半袖カッターシャツ。前に買ったイルカ柄のネクタイをしてきた。


「おはよう、瑞希」

 彼女はいつものように抱きついては来なかった。

「おはよう、洋介」そう言って微笑む。

「早く来るなと言ったよね」

「洋介も早く来てる」

 苦笑してしまう。

「今度から家まで迎えに行くよ」


 左腕を差し出す。彼女は右腕を絡めてきた。


「今日はオシャレだね」

「洋介も」

「大学生のカップルぐらいには見えるかな?」

「見えるかな?」瑞希は嬉しそうに笑った。

 まあ、ムリだろ。

 俺はともかく、瑞希は小学生には見られない程度だ。


 今日は彼女を水族館に誘った。

 デートらしいデートは初めてだ。

 いつもは公園とかで親戚の子供を遊んであげる状態だから。


 電車で移動する。

 水族館の薄暗いエントランス。巨大な水槽に出迎えられた。


 壁一面のガラスの水槽の中を多種の水棲生物が回遊している。

 何度も来ているがいつもこの場所から離れられなくなる。


「……キレイ……」瑞希が水槽を見たまま呟く。

「そうだね」

 薄明かりの中を泳ぐ魚は幻想的であった。まるで海の中にいるかのようで。


 ずっと見ている。

 瑞希も俺と腕を組んだまま、水槽を見ている。

 結構な時間見ていた。


「そろそろ、次に行く?」瑞希は飽きてないだろうかと思い、次の水槽に移動するか尋ねた。目は水槽から外さなかった。

「ううん。まだ見てる」瑞希は水槽から目を離さずに答えた。


「……」

「……」


「次行く?」

「洋介が飽きたら次行く」

「俺、なかなか飽きないよ?」

「じゃあ、ずっと見てる」

 二人とも水槽から目を離さない。


「……」

「……」


「ウミガメ……」彼女はウミガメが気に入ったようだ。

「ウミガメだね……」


「……」

「……」


「洋介、大好き」

「大好きだよ、瑞希」

「洋介、愛してる」

「愛してるよ、瑞希」

 俺たちは水槽から目を離さない。


 館内アナウンスが、アシカショーの開催を告げた。


「アシカショーだって」

「アシカショーか……」彼女は水槽を見ている。


「……」

「……」


「……アシカショー見に行く!」瑞希は俺を見て、ニカッと笑った。

「行こうか」俺も瑞希を見て笑った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ