大好きホールド
俺は三塚瑠璃の腰に抱きついてそのまま押し倒す。
瑠璃も俺に抱きついてくる。
両腕で首に抱きつかれる。両足で俺の腰を挟んでくる。
力任せに瑠璃を後頭部から地面に叩きつけたいところだが、首をホールドされてはそうはできない。地面に叩きつける衝撃が俺の首に帰ってくるからだ。
頭や肩で、抱きついている彼女を押さえる。首をとられているので浮かせるわけには行かない。
左手で彼女の右手をつかみ首から剥がそうとする。同時に右手を俺と彼女の顔の間に差し込み、距離をとろうとする。
瑠璃は右手だけで俺の首をホールド。左手は首から離し、中指の第二指間接を立てて拳を握り、何度も脇腹を殴りにくる。拳を握るときに中指の第一節に親指を挟むことで、中指の強度を上げて、穿を打つ。
俺は瑠璃の上になってマウントをとっているように見えるが、実際には足で腰を挟まれて瑠璃にコントロールされている状態。ガードポジションだ。
俺の打撃は瑠璃に体幹をコントロールされているので力を乗せることができない。逆に彼女は下から打っているが、足で俺を固定できるので打撃を乗せることができる。
今できるのは瑠璃の頭を地面に押し付ける事。彼女の上半身が自由になれば、圧倒的に不利になる。
俺と瑠璃の間に割り込ませた右手で彼女の体を押さえつけたまま、体を離したい。瑠璃の口に右腕を持っていき、口を塞ぐことで呼吸に制限をかける。呼吸を制限されれば体力の消耗が早くなるから。
右腕で瑠璃の口を塞いだ瞬間に、噛まれた。肌の露出を少なくするために長袖のジャージを着ていたが、それでもかなり痛い。半袖なら肉を噛み千切られる程の力だ。
あまりの痛さに右腕を抜こうとした。失敗だった。腕を噛み千切られても口を押さえ続ける。それが正解だった。
腕を抜く事で、押さえていた瑠璃の頭部を地面から浮かせてしまった。
瑠璃に動くスペースができる。自由な左手で地面を押す。体を右に捻る。俺の腰を挟んでいた足も右に捻る。
右腕で俺の首をホールドしたまま。
瑠璃は俺の首を折りにきた。
逆らえず自分から右に捻って首を決められることを避ける。結果俺と瑠璃のポジションは入れ替わり、彼女にマウントポジションをとられた。
首をホールドしている瑠璃はそこで止まらなかった。左手で俺の顔を押さえる。俺の首に回していた右手で左手の肘をつかみロックする。
そして縦方向に飛ぼうとした。
俺も一緒に縦方向に飛ばなけれは首が折れる。仰向けに倒れている俺が瑠璃と同じ早さで飛べるわけはない。
負けたな。歩いて帰れそうにない。生きて帰れるかすら怪しい。
「瑠璃姉! やめて!!」祐実が叫んだ。
瑠璃が飛ぶ寸前で止まった。




