幼馴染みは髪を切る
「私のは下心だから」 三塚瑠璃は睦瑞希を見ながらそう言った。
瑞希は反応した。瑠璃をにらむ。
「瑠璃姉、俺の彼女さんを煽らないでくれ」ため息が出る。
「洋介、紹介してくれないの?」瑠璃が瑞希をにらみ返しながらにこやかに言う。
「これが俺の彼女で睦瑞希だよ。手を出したらただじゃ済まさない」
瑞希が少し意外という表情をする。瑞希の前ではきつい言い方をしないようにしているからかな?
「彼女が俺の幼馴染みの三塚瑠璃だ。瑞希、挑発にのるなよ」
「んー、流石に素人さんを相手にしないかな。洋介がつきあってくれるなら」
ため息しかでない。
「わかった。つきあうよ」
「明日の夜明け。町内の公園で」
「祐実を立会に連れて行く」
「私も行く」瑞希が口を出す。
「ジャマだから来るな」瑞希は俺が負けそうになったら勝手に加勢しそうだ。そして間違いなく、そういった展開になる。
「なかなか面白そうな事になっているね」島崎靖司が楽しそうに言う。
「居合の重鎮が居ていい訳はないので来ないで下さい」瑠璃が釘を刺す。
靖司は残念そうな顔をした。
早朝。俺と妹の祐実はまだ暗い中、家を抜け出した。
近所の公園。幼馴染みの三塚瑠璃は既に来ていた。
長袖長ズボンのジャージを着ている。
竹刀を持っていた。
「おはよう、洋介。祐実ちゃん」
「おはよう、瑠璃姉」俺は挨拶を返す。
「……おはよう……」祐実が困惑気味に挨拶する。
「ごめんね、祐実ちゃん。止めてくれる人がいないとちょっと困る事になるかもしれないから」
「え?……」祐実は意味がわからないという顔をする。
「瑠璃姉はスポーツが嫌いだからね」
「?」
「格闘家だからね」
「どういう意味?」
「あー、祐実は反則って何か知ってる?」
「してはいけない事だろ?」
「うん。祐実はスポーツマンだね。違うよ。減点対象だよ」
「……?」
「負けるくらいなら、反則して相手の心を折りに行く。試合に反則負けしても、勝負に負けは許されない」
「当たり前だと思うのだけど、なかなか理解され無いのよね」瑠璃が同意する。
「だから部活で剣道しないんだよね?」
「所詮は点取りゲームでしよ?」
「そういう事。悪いな祐実。何かあったら頼む」歩いて帰れない覚悟はしている。
瑠璃の前に立つ。いつもより髪の毛が短くなっているのに気付いた。
「瑠璃姉、髪切ったんだ?」
「失恋したからね」
嘘だな。組技になったときに髪の毛を捕まれないように短くしたのだろう。
瑠璃は竹刀を俺に差し出した。「ハンデ」
俺は竹刀を受けとる。竹刀を使わせてもらう程度でハンデとは……。
詐欺もいいとこだろ。




