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転生の呪い

「それに……。今となっては僕の方に、瑞希さんへの恨みがあるんだけどな」高坂一成(いっせい)の言葉に睦瑞希がビクッと反応する。


「そこは覚えてるんだ?」

 瑞希は返事をしない。

「千年前、前世の洋介くんが死んだ後……」

「お前が殺した!」瑞希が叫ぶ。

「僕じゃないよ。前世の僕だね」

「……」

「続けていい? 前世の瑞希さんは、一族の秘伝? 秘術かな? を持ち出した」


「死者を生き返らせる呪いの書。だよ。実際には滅びた肉体は再生しない。だから魂だけ復活させる。つまり転生の呪いだね。前世の洋介くんの従者は、呪いをかけたんだよ。前世の洋介くんを復活させるためにね。そして自分自身にも呪いをかけた。再び二人が出会うために。


 これはある程度うまくいった。千年たった今、二人は出会えた。何故か洋介くんには前世の記憶がないけど。僕の想像では、洋介くんは転生を望んでいなかったのが原因かなと思うんだけどね。実際にはわからないけど。


 そして、僕にとっては最悪なことに、千年前の敵にも呪いをかけた。再び出会えたら、仇をとるためにね。これもうまくいったね。再び僕たちは出会えた。但し、敵討(かたきう)ちは失敗だったけどね。


 おかげで僕まで転生の呪いに縛られてしまったってわけだ。洋介くんは記憶がないから、洋介くんにとっては呪いではないだろうけどね」


「その転生の呪いっていう、一成兄さんの妄想はどうなったんだ?」

「妄想、言うな。転生は仏教思想だ。神道では容認できない。明治維新の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で廃棄されたよ」

「結構最近まで有ったんだ。黒歴史ノート」

「黒歴史言うな。いや、黒歴史で合ってるんだけど」


「転生は呪いなのか?」

「呪いだよ。そうだよね、瑞希さん」一成は瑞希に問う。

 瑞希は返事をしなかった。


「この呪いを解けるのは父と洋介くんぐらいかな」

「俺?」

「そう。父は僕たちより年が上だから、その時には帰霊(きれい)してるだろう。だから実質、洋介くんだけかな。今のところ」

 帰霊とは、死んで霊になるという意味だ。


「一成兄さんや瑞希は?」

「自分にかけられた呪いは解けない。死んだ後の霊に対して解呪する必要があるからね。自分が死んでいるから不可能だね。瑞希さんは僕の呪いを解くつもりはないだろうし、僕も瑞希さんの呪いを解くつもりはない。そうだよね、瑞希さん?」

「今殺されてくれるなら、転生できないように魂ごと滅ぼしてやる」瑞希は顔を上げて一成をにらんだ。


 死んだ後の魂を失うことで、転生できなくするという事か。


「洋介くんは僕たちの希望だよ。瑞希さん、せいぜい洋介くんに捨てられないようにね」


 そう言って一成は帰っていった。


 瑞希は俺から離れようとしなかった。

 母が瑞希の家に連絡して、瑞希を家に泊めることにした。

 俺から離れないので、一緒の布団で寝ることになった。

 俺は一晩中、腕の中の瑞希の頭をなでていた。




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