表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/98

敵討ち

「いきなりとはヒドイな」

 従兄弟(いとこ)の高坂一成(いっせい)は少しだけ傷ついたように言った。


 睦瑞希の霊力で作られた光の槍を受けての、第一声だった。生きている人の魂でも祓ってしまと思うほどの光だったのだが、ものともしていない。


 一成は瑞希の霊力を無効にしたのだろう。俺たち一族には霊障への耐性がある。


 瑞希はすぐに対応する。霊力を直接ぶつけて魂を壊せないなら、精霊に働きかけて肉体を壊せばいい。そう結論付けた。


 一成の足元のアスファルトがはがれた。

 一成が跳びすさる。同時に精霊を止める。


 瑞希はブロック塀を壊しブロックの破片を飛ばした。連続して二つ。

 前回のような小さな石ではない。いや、前回のような小石でも頭に当たれば死ぬこともある。

 しかし、今回は確実に殺しにかかっていた。


「瑞希! よせ!」俺は瑞希を引き寄せる。


 一成は精霊に干渉してブロックの軌道を変える。そして身軽に避けた。


 瑞希を彼女の両手ごと抱き締める。瑞希を持ち上げて、一成に背を向けた。

 俺が間に入ることで、一成と瑞希はお互いを見えなくした。


「離して! 洋介! あいつ殺すの!」瑞希が足をバタバタさせて暴れる。両手は抱き締められていて動かせない。


「瑞希、やめろ。あの人は敵じゃない!」


「あいつが、ご主人様を殺した!」

 ここで前世を持ち出すか。


「んー、君の主人を殺したのは僕の前世で、僕じゃないよ?」一成が言葉は穏やかだかキツい口調でとがめる。

「知らないもん! お前を殺すの!」

 瑞希の霊力が強くなる。俺はそれを押さえる。悪霊の方がよっぽどかわいいくらいの呪詛だ。


「えー、理不尽だなー。僕は今回、生まれ変わってから一人も殺してないよ?」

「ご主人様を殺した!」

「千年も前の事を言われてもね。そういう時代でしよ? 今さら罪を問われても困るな」

「千年たっても恨みは消えない! おまえの罪をつぐなえ!」

「君だって何人も殺しただろ? 自分の事を棚にあげて、僕だけ罪をつぐなえって、お前が言うな、だよ?」

「私は……、私は……」瑞希の言葉が弱くなる。嗚咽が混じる。


「うん、今世の君は人を殺していない。昔に人を殺したことを責める気はない」一成は口調を穏やかに言った。

「だから、僕も責められるいわれはないよ」


 瑞希はこらえきれなくなって、子供のように声をあげて泣き出した。

 俺は拘束するように抱きしめていた手を、一旦緩める。左腕を瑞希のおしりの下にしてイスに座るように持ち上げる。右手を脇の下から回して、背中を抱きしめる。手のひらで瑞希の背中をポンポンとした。

 瑞希は俺の首筋に両腕を回して、泣き続けた。


 いつの間にか玄関に両親と祐実がやって来ていた。あれだけ派手にやったら気付くのは当たり前か。


 瑞希は一成を殺せなかった。

 過去に行われた敵討ちのほとんどは失敗しているらしい。

 そういうものだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ