手をつなぐ
オフ会は夕方過ぎ、夕食前に解散になった。
「洋介さん、またねー!」吉川結衣が手を振る。
岸田洋も、結衣につかまれていない方の手を振った。
俺は二人に手を振り返す。
「帰るか」俺は妹の祐実に手を差し出しながら言った。
祐実は驚いた顔をしたが、俺の手をとった。少し恥ずかしそうにうつ向いたが、手を離さなかった。
睦瑞希といるときのつもりで、つい手を出してしまった。瑞希は俺の彼女さんだから、手をつなぐのは何もおかしくはない。
しかし中学生にもなった妹と、手をつなぐだろうか?
最近はつなぐこともなかったよな?
祐実は照れたように黙っていたが、手を離さなかった。
妹と手をつないで家に帰るのは、何年ぶりだろう?
家につく。
「「ただいまー」」二人揃ってただいまの挨拶をする。
何か子供のときみたいで懐かしい。祐実に目を合わせて、微笑みかける。祐実も恥ずかしそうに、微笑み返してきた。
祐実は玄関で靴を脱ぐときに一旦手を離したが、すぐに手をつなぎなおしてきた。
小学生のとき以来の甘えっぷりだ。
最近の祐実は、瑞希や従兄弟の一成に振り回されていた。瑞希ばかりではなく、たまには祐実と二人の時間も作らないとな。
明らかに、瑞希は祐実のストレスになっている。
「お帰りなさい! 洋介!」
可愛いエプロンをつけた瑞希が玄関に顔を出した。
え?
祐実がビクッとして、俺の手を強く握る。
瑞希が駆け寄ってきて、俺の腰に飛び付く。
祐実は俺の手を握ったまま、後ずさりする。
「瑞希? どうしたの?」
「お義母様にお願いして、今日の晩御飯一緒に作らせてもらってたの!」
「いや、聞いてない」
「驚かそうと思って」ニカッと笑う。
「驚いたよ」笑い返す。
「やったー!」
ホントに驚いた。
俺以上に祐実が驚いている。驚きすぎてからだが震えているし、呼吸も激しい。
「瑞希、手を洗ってくるから離して」
「うん」 瑞希は離れる。「もうちょっとでご飯できるからね」そう言って台所に戻っていった。
「祐実、大丈夫か?」
祐実は虚ろな目で虚空を見ている。呼吸が激しい。
祐実を抱き寄せ、顔を胸に埋めさす。わざと呼吸をしにくくすることで、過呼吸を止める。
「祐実、落ち着いて。驚きすぎ」
「兄さん……。ごめん」そう言いながらも俺にしがみついている。甘えているのではなくて、怖がって。
「部屋で休んでろ」祐実の頭をなでて落ち着かせる。
「祐実ちゃんは?」リビングで皿を並べながら瑞希が尋ねる。
「疲れたから、寝るってさ」
「えー」瑞希は不満そう。俺に近付いて、「私の作ったご飯を食べたくないのかな……」と寂しそうに小声で言った。
たぶんね。
ムリに食べさせたら、戻すだろうな。




