オフ会
「オフ会したい!」ボイスチャットの向こうで吉川結衣が言った。
FPSの反省会をしているときだ。
オフ会か。したこと無いな。
「いや、リアルで知り合いなのに、オフ会する意味って有るのか?」
「ヨウとはリアルで会ったこと2回しかない!」結衣が俺に反論してくる。ヨウは俺のプレイヤーネームだ。
「僕もヨウとは1回しかない会ってないから、会いたいですね」岸田洋も結衣に同意する。
「ユミもやりたいよね?」結衣が妹の祐実にも同意を求める。
「ヨウとは毎日会ってるから」
祐実は今も俺のとなりにいる。
「そんなにやりたいの?」
「やりたい!」と結衣。
「やりたいです」と岸田くんも。
そんなわけで、土曜日の昼にオフ会が開催された。
駅前で昼前に待ち合わせ。
俺は妹の祐実と一緒に家を出る。
「一緒に出掛けるの久しぶりだな」
「兄さん、最近は瑞希とばかり会ってるからな」
「そうだな」
「瑞希はいいのか?」
「祐実とダブルデートだからジャマするなと言っておいた」
「デートって言うな」
「いや、デートだろ」
「今日はオフ会だろ」
「岸田くんと吉川さんは付き合ってるから、ダブルデートでもあるな」
「あ……。瑞希にオフ会って事、言ったか?」
「いや。言ってない。そんな必要ないだろ?」
「……、そうだな」
祐実は睦瑞希にこだわりすぎだ。
「ヨウ! やっほー!」結衣が手を振ってきた。すごくおしゃれしてる。右手で岸田くんの腕を抱いていた。
「高坂さん、こんにちは」やはりおしゃれでイケメンな岸田くんが挨拶してくる。不登校中とは思えない陽キャぶりだ。
そういえばこの三人、見た目良すぎだな。居心地悪いぞ。
「やあ。岸田くん、吉川さん」
「おう」祐実は短く挨拶する。
「こんにちは、妹さん」岸田くんからしたら、祐実は俺の「妹さん」らしい。
「やっほー、ユミ」結衣はプレイヤーネームで呼ぶ。
「結衣、学校でも妹さんの事、プレイヤーネームで呼んでいるの?」岸田くんが結衣に尋ねる。
「いや、学校ではさすがに……。妹さん、て呼んでるよ?」
祐実は苦笑していた。
食事の後、カラオケ屋に行く。
カラオケをしに行くのではない。ゲームチームのオフ会らしく、オフでゲームをするためだ。
岸田くんがボードゲームをいくつか持ってきていた。
なかなか盛り上がる。たまにはアナログなゲームもいい。
「洋介さん」さんざんゲームをやった後、岸田くんが真面目な顔をして口を開いた。
俺たち兄妹を名字で呼ぶのはややこしいので、岸田くんと結衣は俺の事を、洋介さん、と呼んでいる。ちなみに祐実の事は、妹さん、のままだ。
「洋介さん。そろそろ学校に行きます。夏休みに入る前に……」
「うん。いいと思うよ」自分で決めたのならね。
岸田洋は前に進むことを選んだ。
俺のまわりは、後ろを向いているやつが多すぎる。




