表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/98

 伊邪那岐(イザナギ)伊邪那美命イザナミノミコトの国生み神話。

 火之夜藝速男神ヒノヤギハヤノカミを生みミホトを焼かれて死んだイザナミを、黄泉の国まで連れ戻しに行ったイザナギは、「見るな」と言われた禁忌を破りイザナミを覗き見る。

 そこにはおぞましい化物のようなイザナミがいた。


 これは何を意味するのか?


 簡単だ。死んだ人は生き返らない。


「何もしなければ、奥様はあなたの守護霊になった筈です」

「そんな事に何の意味があるのかね?」

 俺の言葉に対し、島崎靖司は何の感情も見せずにそう返した。

 島崎邸の客室で俺と彼はローテーブルを挟んで対峙している。


「意味が有るとか無いとかではないのです。それが摂理と言うものです」

「君に関係ないだろ」

「まあ、そうなんですけどね」苦笑いしかでないね。


「僕に関係なくても、姪ごさんが悲しむ。桜さんが悲しめば僕の妹が悲しむ。だから僕にはあなたをとめる理由があった」

「なかなか苦しい理由付けだね」靖司も苦笑いをする。


「僕が助けたいのは人間ばかりじゃありません。霊も。誰も悪霊にしたくはありません」

 さて、これは言わないとな。


「だから、本来神になる筈の魂を引き留めて、悪霊にする事は許しません。つまりあなたも僕の敵になるわけです」

「強く出たね」靖司は特に表情を変えない。「生きている人も死んでいる人も、全員助けるなんて無理だろ?」

「そうですね。だから僕は、僕の手の届く範囲だけ助けます」

「私は助けを必要としていない」

「このままではあなたは引っ張られる。戻ってこれなくなりますよ」

「……妻がいなくなったときから、もう未練も無いな」

「わかります。しかし、あなたに未練がなくても、あなたが死ねば悲しむ人もいる。例えば、桜さん」

 靖司は黙った。


「僕は桜さんも、あなたの奥様も助ける。もう奥様を解放してください。桜さんを悲しませないでください」

 靖司は反論をやめた。だが納得したわけではない。そんな事は靖司にもわかっている事だろう。心が受け入れない。それは仕方ない。


「奥様は僕がお祭りします。もうここには戻ってこないでしょう」

 いや、守護霊としては戻ってくるだろうけどそういう話じゃない。


「生きることを諦めないでください」

 うん、俺、根気よく説得したよな。


「桜さんを悲しませないでください。……いい大人が子供を泣かせるようなことすんなよ!」


 霊を救うことは得意なんだけど、人を救うことは苦手だ。


「あなたはちゃんと奥様を弔ってください。そして桜さんと話をしてください」


 弔いは死者のためだけじゃない。

 残されたものの悲しみも弔われるべきだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ