なんとも思わない訳じゃない
「瑠璃ちゃんはまた憑かれたのかい?」
運転席の父が言った。
父の運転する車の中。意識の無い瑠璃を家まで送る途中。
「ああ」
「瑠璃ちゃんは不安定だからな」
そうだな。
霊に取り憑かれやすい体質だ。それは精神状態にも影響される。
「何か不安定になる事でもあったのかい?」
これには答えられない。
瑠璃の家につく。
父が瑠璃を運ぶ。祐実もそれについていった。
瑠璃の介抱のために祐実が残る。
父だけが戻ってきた。
俺は車で瑞希と一緒に待っていた。瑞希はずっと俺にしがみついたままずっと静かに泣いていた。
父に病院につれていってもらう。父は一旦家によって保険証をとってきた。
「そのケガは霊障だね」
これも答えられない。
「洋介にケガをさせられるなんて、よっぽどだな」
俺は返事をしない。瑞希が体を固くした。
「瑞希さんだね?」
瑞希がビクッとする。
「いや、俺のミスだ。事故だよ」瑠璃に気を取られなかったらケガなんかしなかった。
「……ごめんなさい」瑞希が泣きながら謝った。
「大丈夫。たいしたこと無い」
「瑞希さんはもう少し自覚した方がいい。洋介にこだわりすぎだ。前世なんてものに囚われてるから、正しい判断ができない」
「父さん、もういいだろ」
「前世なんて、そんな意味のわからないことで洋介を振り回さないでくれないか」
「父さん! 後で瑞希にはないちゃんと言っておくから」
父は深く息を吐き出した。それでもまだ苛立ちを押さえきれないようだった。
「瑞希さん。子供にケガをさせられて、何とも思わない親なんていないんだよ」
瑞希が俺にしがみつく。
そしてまた声をあげて泣き出した。何か言ったが聞き取れない。
「父さん!」俺は抗議する。
父はそれ以上は喋らなかった。
病院の診察室から出ると、待合室で父と瑞希が同じソファーに座って待っていた。
瑞希はもう泣き止んでいた。
ケガは大したことはなかった。祐実の見立て通り、骨には異常無かった。
そう伝えると、父は会計に向かう。
瑞希は俺に抱きついてきたが、何も言わなかった。
瑞希を彼女の家に送ってから帰宅する。
祐実は帰ってきていた。
祐実の友達の事を訊くと、島崎桜は家の人に迎えにきてもらって帰宅したらしい。桜の叔父さんは意識を取り戻して、そのまま家に残ったとの事だった。
「瑞希は兄さんを助けようとして、瑠璃姉に霊力を使った。兄さんは瑠璃姉をかばってケガをした」と両親に説明した。
事実なんだけどね。
「俺のミスだよ。普通ならケガなんかしなかった」と言って祐実を見る。
祐実は視線を反らさなかった。
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