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幼馴染みはよくまたがってくる

 幼馴染みのたおやかな委員長、三塚(みつか)瑠璃は霊に取り憑かれていた。

 日本家屋の玄関先、俺との間合いは極わずか。


「洋介!」睦瑞希の声が聞こえる。

「手をだすな!」俺は叫ぶ。

 瑞希の霊力は強すぎる。そして不確実に思える。



 瑠璃との間合いを詰める。左足を送り、左手を(しょう)にして瑠璃の目を穿ちに行く。

 彼女は右手で受ける。右手の掌を内側から差し込み、外に旋回させ軌道をずらす。

 左手の穿ちはフェイントだ。右手の掌で瑠璃の胸を打ちにいく。右手に持っている御札を張り付けるために。

 彼女は左足を左斜め前に踏み込む。左手掌で俺の右腕に添わせて内側に押し込む。押し込まれた右腕が俺の左手と交差する。

 彼女は左半身になって、俺の左手を押さえていた右手を抜く。俺の左手は交差させられた自分の右手が邪魔で反撃に移れない。

 彼女は左に側屈する。俺に向かって下げられた頭の後ろから、いきなり彼女の右手が現れた。自分の体で右拳の軌道を隠していた。

 右拳に気付いたときには既に目の前だった。

 鼻先を強打される。

 ふらついたところを、彼女の左手が大きな円を描くように俺の体を薙ぎ払ってくる。彼女の払いに逆らわないように右に逃げようとしたが、彼女の左足が置いてあった。爪先を立てて俺の足をひっかける。

 俺が背中から倒れるのと、彼女が俺に馬乗りに乗ってくるのは同時だった。


 またマウントかよ。


 俺は左手を彼女の太ももと俺の腹の間に差し込もうとする。

 彼女は右手で俺の左手首をつかんで押さえる。

 右手で彼女の左脇腹を殴りに行く。

 彼女は左手で内側から外に流す。

 両手をコントロールされて体が開いたところに、彼女は覆い被さってくる。

 彼女の額が俺の鼻先に打ち付けられた。

「ぐっ……」

 頭突きに意識が飛びそうになる。

 まずい。


「洋介!」瑞希の叫びが聞こえる。そして霊力の高まりを感じる。

 だから、手をだすなよ!


「瑞希! 失うな!」妹の祐実の叫びが聞こえる。祐実が駆け寄る。物理的な手段で加勢しようとしているのか?

 瑞希よりは当てになる。俺たち兄妹は霊を消滅させないという、共通の認識がある。

 瑞希にはない。


 瑠璃は左手で俺の右手をつかみ、地面に押し付ける。右手に持っている御札を厄介と考えたのだろう。

 瑠璃の太ももと自分の腹部の間に滑り込ませていた俺の左手を、彼女は太ももを閉めて動きを封じる。

 マウントから抜け出すための一手が悪手となっていた。

 彼女は空いた右手で首を絞めにきた。親指と人差し指で、わずかのずれもなく、頸動脈を閉める。


 祐実は間に合わない。


「洋介!」瑞希は我慢する事を止めた。

 最悪だ。




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