話し合いで済ませたい
幼馴染みのたおやかな委員長は、日本家屋の呼び鈴を鳴らした。
結局、俺は三塚瑠璃と最後まで同じ道を歩いた。
スマホの位置情報を確認する。
妹の祐実はここにいる。
最悪だ。
「洋介、島崎さんと知り合いだったの?」
「会ったこと無いね」
「?」
俺の彼女さんの、睦瑞希のとんでもなく強い霊力を感じる。
さて、準備するか。
俺はカバンを開け、御札を手に取る。今日も御札は5枚用意してある。
事前情報が何もない。
祐実も瑞希もしくじったことだけはわかる。
一番の災厄は瑠璃がいることか?
「ごめんください」瑠璃が玄関の引戸に手を掛ける。
鍵がかかっておらず、開いた。
何かが来る。
それは躊躇なく瑠璃に取り憑いた。
これは必然か。
家の奥から走る足音がする。二人。祐実と瑞希だった。霊を追って来たのだろう。
俺は左手で、待て、のジェスチャーをする。
二人は立ち止まり、俺たちを凝視する。
「何が何だかさっぱりわからないんだけど……、俺は高坂洋介。祓い屋でも、拝み屋でも好きなように呼んでもらってかまわない」
俺は瑠璃に、瑠璃に憑いた霊に話しかける。
「一応言っとくけど、供物捧げるから静まってくれない?」
「邪魔をしないなら危害を加えない。出ていけ。そして二度と来るな。3人ともだ」
俺と祐実と瑞希の3人ね。
祐実と瑞希の後ろから女子中学生がやってきて、祐実の後ろで立ち止まる。
祐実の友達だろう。何度か見かけたことがある。
彼女は出ていかなくても良いらしい。祓えないからか?
いや、違うな。
これは荒事なしでも行けるか?
「この家に執着があるようだが? 守り神になればいいだろ?」
「それはできない」
女性の霊か? 何かにとらわれている?
「俺ならお祭りできる」
「余計なお世話だ。それにお前と戦いたがっている」瑠璃に取り憑いた霊が、いや、瑠璃が醜悪に嗤う。
話し合いはムリか。
瑠璃は俺の左前に立っていた。右肩越しに振り替えって俺を見ている。
瑠璃の右手が動いた。予備動作なしから右肘を曲げる。握った拳が俺の鼻先に来るように。
俺は左手を掌にして自分の顔の前に小指側に内旋させて突き刺す。瑠璃の裏拳をガード。
「兄さん!」
「洋介!」
祐実と瑞希の叫び声が聞こえる。
構ってる暇はない。ジャマすんな!
瑠璃が左足を送ると同時に、左拳が右脇を狙う。
俺は御札を持ったまま、右手を脇に下ろし外側に張り出しガード。右足を踏み込み、そのまま右肩から体当たりを仕掛ける。
しかし彼女に、張り出した右肘を左手で取られて上に押し上げられる。
フェイントかよ!
右手を上に上げられると同時に体側に押される。バランスが崩れる。逆に晒した右脇に彼女の左体側が当てられる。
体当たりを自ら後ろに飛ぶことで衝撃を逃がす。
わずかに間合いを取った。
全く勝てる気がしない。




