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来客

 嫌な予感がする。


 高坂祐実はその予感を無視できないと思った。


「姉さん、今すぐ祓えるか? 嫌な予感がする」祐実は睦瑞希に耳打ちした。

 瑞希は嫌な予感が何かわからないって顔をしたが、わずかにうなずいた。

「やってみていいですか?」瑞希が島崎靖司に声をかけながら刀に手を伸ばす。

「ああ、手袋をして」靖司が白の手袋を瑞希に差し出す。

 瑞希は手袋を取らず、差し出された靖司の手首を左手で握った。


 同時に瑞希の霊力が上がる。瑞希の体が白く光るのが見える。その光りは靖司の体も包んだ。

 瑞希はつかんだのと反対の右手で刀をとる。手入れの説明のために、抜き身で箱に入れられていた。

 刀に霊力をのせて払うつもりだ。


 兄の高坂洋介がよくやるやり方だ。

 瑞希にできるのか?


 靖司が瞬時に反応する。捕まれていない左手で瑞希の刀を取った手を押さえる。

「何のつもりかな?」靖司の声。だが靖司ではないのか?

 靖司が言ったのか、憑いている霊が言ったのかわからない。

 何だ? そもそも靖司に憑いているのかすらわからない。

 瑞希はわかっているのか?


 瑞希は捕まれた手を引こうとした。

 靖司がつかんでいる瑞希の指を押さえながら内側に回す。

 刀を離すまいとする瑞希の力に合わせてより刀を握らすことによって指が刀から外れる。

 徒手奪刀だった。


 刀を取り落とした瑞希は、霊力を直接靖司にぶつけようとする。

 おい! 失わないんじゃなかったのかよ!

 思いどおりにならないとあっさり前言を翻す。やはり、この女は信用できない。


 靖司は両手を瑞希と取り合いしながら、腰を浮かす。左足だけでしゃがんだまま片足立ちし、右足で二人の間にあるローテーブルを蹴る。

 テーブルが座ったままの瑞希の胸を打つ。

「くっ!」瑞希が短いうめきをあげて、つかんでいた手を離した。瑞希の霊力が霧散する。


 島崎桜も押されたテーブルが当たったが、瑞希ほどテーブル近くに座っていなかったのでたいしてダメージはない。だが、突然の事に驚いて動けない。


 祐実は瑞希が動いて直ぐに踵を上げていたので、後ろに飛び下がってテーブルを避けた。しかし、両脇に瑞希と桜に挟まれて座っていたため、反撃にでれない。テーブルを飛び越えようかとも思ったが、靖司に見られて断念した。

 空中では攻撃を避けられない。


 靖司は泰然と立ち上がる。

「こんなに老いぼれより、若くて強い依代(よりしろ)があるな」そう言った。

 誰が誰に向かって言った?

 靖司は憑かれていない?


 玄関のチャイムが鳴った。

 若くて強い依代が到着したらしい。


 瑞希は間に合わなかった。

 役に立たない女だ!






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