明日の予定
「ユミ来ないで!間に合わない!」ヘッドホンの向こうから吉川結衣の叫び声が聞こえる。
「ユミ、戻って!」もう一つ、岸田洋 の叫び声。「あっ!……」そしてヒロが死んだ。
「あああっ! もう!」妹の祐実が苛立ったように叫び、そしてユミが死んだ。
「ユミ、今日は乗れてないよ? リアルで何かあった?」岸田くんがボイチャで尋ねた。
恒例のFPS、その反省会。
「悪い」妹の祐実が憮然としながら謝罪した。
俺と祐実は同じ部屋でネットに入っているので、祐実の顔が見える。不機嫌そうだった。
「ごめんね。ユミ。私を助けようとして……」
「ユイ、死ぬのは仕方ないよ。ユミは助けた方がいいか、見捨てるか、正しい判断ができてなかったね」
結衣が気を遣うが、岸田くんはそれを不要と断じた。
まあ、岸田くんが正しい。
「お疲れ」一通り反省会をした後、解散した。
祐実を見る。祐実は何か話したそうにしていた。
「祐実。今日、何かあったか?」
「あったように見える?」
「ん、見える」
「瑞希に聞いたか?」
「聞いた」
「何て?」
「ハンバーガーおごらされたって」
「他には?」
「? いや、特には」
「そうか……」
祐実はそこで黙ってしまった。
「祐実、瑞希をあまりいじめないでくれ」
「何で瑞希の話ばかり聞くの!!」突然祐実が叫んだ。睨み付ける目は怒りと共に涙が溢れていた。
失敗した。
「ごめん、祐実。何があったの?」
「別に」祐実はそっぽを向く。手で涙を拭う。
祐実は下を向いたまま。部屋から出ていこうとしないので、このまま待つ。
「明日、下見に行ってくる」祐実がボソッと呟いた。下を向いたまま。
何か、心霊絡みの用件だとわかる。
「桜……、私の友達が瑞希に相談した。私もついてく」
「瑞希? 瑞希はそんな話をしていなかった」
「ふーん……」祐実は何か察しているのか?
「自分一人で解決したいんだろ? 役に立つと証明したいんだ」
「?……俺にか?」
「いや、……私にだろ」
「意味がわからない」
「バーカ……」
「ヒドイな、おい」本当に意味がわからない。
「私より自分の方が兄さんに相応しいと、私にわからせたいんだろ」
「……ガキか」
「ガキだよ。危ないオモチャを手にしたガキだ」
祐実は従兄弟の一成の警告に囚われているようだ。
「瑞希は子供だ。気にしすぎだ」
「兄さんの前では、可愛い子供のフリをしてるのか?」
「そうだよ。それも含めて可愛い子供だよ」
「……、私と瑞希が戦ったら、どっちが勝つと思う?」
「いや、ケンカしないでくれ」
「ケンカなんかしない」
ガチで殺り合うつもりか?
「私はあいつに勝てるのか……」
「だからケンカするな。あと、俺の彼女をあいつ言うな」
「……私の話を聞いてよ……」
それは無理だよ……。




