桜の相談
「お前、って、誰に向かって言っているの?」
睦瑞希の言葉に、高坂祐実は恐怖を感じた。
瑞希の霊圧が一気に上がる。
前に従兄弟の高坂一成が見せた、精霊に干渉すると言ったあの霊力を思い出す。
兄の洋介は、必要以上に怖がらなくてもいい、と言った。
霊力の強い祐実には耐性があるとの事だ。
実際、一成があの霊力を使ったとき、周りに座っていた親戚たちは特に驚いたそ素振りは見せなかった。一成の霊力を知っていて、自分達に耐性があるのを知っているのだろう。
そして一族相手にはその霊力を使わないといだろうという信頼関係。
祐実と瑞希にはそれはない。
「……ごめんなさい。……姉さん……」
引くしかなかった。
瑞希の霊力は大きい。
非常階段にいる瑞希の霊力の高まりが、離れた教室にいる祐実にまで伝わった。
あの時、瑞希は霊力を使おうとしていたのだろうか?
実際には使わなかった。
兄の洋介は使わない。悪霊でさえ失おうとしない。
一成に、生きている人に使おうとも思わない、と言ったのは本心だろう。洋介だから。
瑞希はどうなんだろうか?
洋介が人に対して霊力を使わないから、瑞希も使わなかったのではないかと思った。
全く意味が違う。
洋介は優しいから使わない。
瑞希は洋介に嫌われたくないから使わなかった。
友人の早瀬美羽が泣いている事よりも、洋介に嫌われないことを優先した。
この女は信用できない。
祐実は、瑞希は洋介に相応しくないと思っている。
「瑞希、相談がある」
友人の島崎桜が真剣な声で瑞希に話しかけた。
ファーストフード店での事だ。
「何ですか?」瑞希は桜には丁寧に対応している。
「お前、霊感があるんだよな?」
「……、ありますよ」
「会って欲しい人がいる」
桜から、この話題がでるとは思わなかった。
祐実も美羽も不審な表情で桜を見る。
桜は祐実たちの視線を気にもせずに瑞希を見ていた。
瑞希は少し考えてから、「いいですよ」と答えた。
「桜、お前、霊とか信じるのか?」祐実はつい口を出してしまう。
「あー、信じてないんだけどな。だが、どうしても気になってな……」桜は罰が悪そうな顔をする。
桜は祐実が霊的な物に懐疑的だと思っているのだろう。今まで、祐実はそんな話題に興味を示さなかった。
もしかしたら祐実の小学生の時の噂を聞いて、話題にする事を避けていたのかもしれない。
小学生の頃に幽霊が見えるとか行って、そのせいでいじめられていた。そう噂で聞いていた桜の気遣いだったのか。
逃げた事の弊害だった。祐実は桜に本当の事を教えていない。
教えていたら祐実に相談していただろうか?
そうすれば瑞希に関わらさずに、洋介と祐実で解決できたはずだった。




