誰に言ってるの?
「こいつは私より強い」と高坂祐実が忌々しげに言った。
「祐実ちゃん!」睦瑞希が叫ぶ。祐実の言葉を止めようとするように。
島崎桜は祐実の言葉に驚いた。そして瑞希が叫んだ事にも。これでは瑞希は祐実の言葉が本当だと言っているようなものだ。
泣いていた早瀬美羽も驚いたように、瑞希を見る。
「お前は何で……」
「祐実ちゃん」瑞希が祐実の言葉を遮る。「お前、って、誰に向かって言っているの?」底冷えするような威圧だった。
この場の全員が息を飲む。
祐実の目が怯えたように揺れる。
「……ごめんなさい。……姉さん……」祐実は瑞希から目をそらした。
これは仕方ない。この瑞希には逆らえない。自分より強いと思ってるなら尚更だ。
「もう良いだろ、瑞希」桜は祐実に助け船を出した。
瑞希は桜に視線を移す。桜には圧をかけてこなかった。
「なんか悪かったな。私たちのとばっちりだろ。お茶でもおごってやるから着いてこい」瑞希はともかく、美羽は可哀想すぎだ。
祐実と二人で一旦教室に荷物を取りに戻る。
「お前、瑞希には弱いのな」
「兄貴に怒られるからな」と強がったが、さっきは瑞希本人にビビってたよな。
「どうせ今日の事も兄貴に告げ口される。こないだのアイスクリームおごらせた事も告げ口された」
「怒られたのか?」
「怒られたよ!」
あの優しそうな兄のどこが怖いのか? いや、祐実にとっては悪く思われるだけで怖いのだろうな。
「やっぱ、アイスクリームたかってたんじゃないか」
「たかってねーよ!」
4人でファーストフード店に来ていた。
桜は美羽にセットをおごってやった。
瑞希は固辞した。原因が桜だけではないと思っているようだ。
「祐実ちゃん。買ってあげる」瑞希は祐実に言った。怒りすぎたと反省したのか? アメと鞭の使い方がうまいな。相手を支配する基本だ。
祐実は値段の高いセットを注文した。わざわざ追加料金でサイズを変更していた。
瑞希は財布を見て青ざめていた。
祐実はこんなに食べるのかよ。いや、さっきの意趣返しだな。
「お前、容赦ないよな?」
「どうせ兄貴が後から払う」
「祐実ちゃん、さっきは怒ってごめんね。それと、助けに来てくれてありがとう」席に座ると、瑞希は微笑みながら祐実に言った。
「別に……。助けたのは美羽だ」祐実はそう返す。
美羽も礼を言うが、そもそもの原因は私たちだと思っているので申し訳ない。
「お前、強いのか? 今度私とやろうぜ」桜は瑞希に手合わせを申し込む。
瑞希は困った顔をした。
「やめとけ。手加減してもらいたくないだろ?」祐実が言った。
それほどか……。




