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非常階段

「おい、お前らなにやってる」島崎桜は威圧するように声をかけた。


 睦瑞希を囲んでいた3年生の女子4人がこちらを見る。学校の非常階段。踊り場は校庭からも校舎からも死角になっていた。


 友人の高坂祐実が無言のまま歩を進める。

 瑞希の髪の毛をつかんでいた女子が、瑞希から手を離して祐実に向き合う。

 間合いに入った瞬間に祐実が相手の顔を右の手のひらで殴りにいく。相手は左手でガードする。

 わざとガードさせた。手のひらで殴りにいったのは相手のガードした手を取るためだろう。手首を小指がわに傾けて手のひらの横で引っかける。そのまま引き込む。

 引き込むのに合わせて曲げた右膝で腹を刺す。

 相手から苦しそうな呻きが漏れる。

 祐実は上げた右足を、相手の裏側に回すように右前に出す。そして相手の足を掬い上げるように、体を左に捻りながら自分の左横に上げる。合わせて引き込んでいた相手の左手を後ろに押した。

 バランスを崩された相手は背中から倒れる。

 すかさず祐実は、上げた右足を戻すついでに倒れた相手の腹を踏みつけた。


 相変わらず流れるような攻撃だ。どれだけ練習すればこれだけシステマチックに動けるのか?

 そして容赦ない。警告も無しで無言で淡々と痛め付ける。


 相手は倒れたまま唸っている。


 祐実は残りの3人を見る。

 見た時には既に蹴りが入っていた。蹴り足を戻さず、二連撃で二人。離れているもう一人に近づくために、蹴り足を踏み出したときには反対の足で蹴りをいれていた。

 わずかに一撃ずつで、3人を沈めた。


 一人目を倒した時点でこの3人は戦意を失っていた。それでも祐実は容赦しなかった。


 他人を傷つけるやつは、自分もやられる覚悟があるだろうから、戦意を無くしたぐらいで許してもらえるとは思ってないだろ?

 当然だな。


「瑞希、美羽、来い」初めて祐実が声を出した。

 瑞希が泣いている早瀬美羽の手を取る。


 祐実が階段を降りてきて、桜の横を通りすぎる。

 その後に瑞希と美羽が続いた。


 踊り場を見上げると、倒れている3年生は怯えたようにうずくまっていた。

 もう瑞希に手を出さないだろう。


 桜は祐実の後を追った。



 祐実は非常階段から離れると立ち止まり、瑞希を振り返った。

「瑞希、何でやられっぱなしなんだ!」祐実は怒気を隠さずになじった。

 瑞希がムッとしてにらみ返す。泣いている美羽の手を握ったままだ。

「美羽が泣かされてるじゃねーか。ダチも守れないのか!」


 おいおい、瑞希は気が強いとは思うがあまりケンカ向きじゃないぞ。確かに髪の毛つかまれてたときも目は殺気を出していたが。

 瑞希は年の割に小柄だ。戦えそうにない。


「おい、祐実。ムチャ言うな。瑞希にケンカなんかできないだろ」突っ込みを入れてしまう。


 祐実は桜を見る。そして、言うか言わないかを迷う素振りの後、

「こいつは私より強い」と忌々しげに言った。




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