表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/98

ビアグラス

「彼女さんは祓える人だよ」

 祐実の言葉に従兄弟の一成(いっせい)の顔から微笑みが消えた。


「へえー」

 陽気さが消えた一成の言葉に祐実が戸惑う。

 考えてから喋れよ。


「関係者かい?」

「一族じゃない。そういう家系でもない」仕方なしに俺が返事をする。

「一族以外に祓える人は珍しいね。洋介くんぐらいの霊力(ちから)かい?」

「どうだろ。俺より強いかもな」適当に答える。


「ああ、お兄さんに彼女ができたから祐実ちゃんは機嫌悪いんだ」一成は祐実に話を振る。

「ちげーよ!」祐実があっさりとのる。

「祐実ちゃん位に可愛い娘なのかな?」

「ガキだよ! 私より年下のガキ。転生したとか言い張る変なやつ」

「祐実!」さすがに止めに入る。


「転生?」一成が不思議そうな顔をする。そして、「面白い娘だね」と笑った。

「子供の戯言だよ」俺は面白く無さげに言いきった。


「前世は何だったんだろうね? 転生した人なんて会ったこと無いからか会ってみたいね。前世とか見えるのかな?」

「俺は見えない」無いものは見えない。


「私も見えない。本人は兄さんの従者だったって言ってる」祐実もバカにしたような口調で言った。


「従者? ……洋介くんの従者?」何か考えている。

 何だ?

「その娘に合ってみたいねー」一成は緩く言ったが、真剣な色があった。

「いいだろ、別に。俺が誰と付き合おうと」

「うん。洋介くんとずっと付き合ってくれるなら良いかな」

「先の事はわからないな」


 一成は俺と瑞希の子供なら、一族の役に立てると思っているのだろうか?

 いやいや、俺と瑞希の子供とか、何を考えてるのか。瑞希は子供だ。子供相手に俺は何を想像した?


「兄さん、死ね」祐実がガチな声色で悪態をついた。

「えー、何でだよ?」

「気持ち悪い」祐実は本当に気持ち悪そうな顔色になる。

兄妹(きょうだい)そろって生々しいこと想像してるみたいだけど、違うよ?」一成は呆れたように言う。


「してねーし!」祐実は真っ赤な顔をして怒鳴る。

 んー、瑞希、ごめん。


「一族以外に僕や洋介くんぐらいの霊力を持っている人がいることが危険だと言ってるんだよ。洋介くんが面倒見てくれるなら安心だけどね」

「どういう事?」祐実が訊く。

 祐実には教えてないから意味がわからないだろう。


「叔父さんも洋介くんも、祐実ちゃんに教えてないんだ? 過保護だねー」

 叔父さんとは、俺や祐実の父の事だ。


「洋介くんぐらいの霊力(ちから)なら、人の魂に干渉できる。霊を失うことができるなら、人の心を壊すこともできる」

 一成が当たり前のように言った言葉に祐実が息を飲む。


「俺は失ったことはない。できるかどうかも試したことはない」

「洋介くんらしいね。でも洋介くんの彼女はどうかな? 僕ぐらいの霊力(ちから)があるなら精霊を通じて、物理的な干渉もできるかも知れないよね?」

「どういう事?」祐実が青ざめた顔で尋ねる。


 一成は酒を飲み干すと、空のグラスを机に置いて手を離す。

 一成の霊力が高まり、祐実が恐れの色を浮かべる。

 周りにいた親戚たちが会話をやめて、こちらを注目する。


「こういう事だよ」

 机の上のグラスが誰も触れてもいないのに割れた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ