祐実の反抗
「祐実ちゃんほど霊力が強い子は思い当たらない」
従兄弟の一成はそう言った。
祐実は黙って酒を注ぐ。会話は俺に任せるらしい。
「霊力で選ばなくてもいいだろ?」
「洋介くん、うちの一族で祓える人間がどんだけいる?」
「……さあ?」実際知らない。
「親父と僕と洋介くんの3人だけだよ」
そうなのか? 少ないのか多いのか?
一成の言う親父とは、一成の父でこの神社の宮司をしている伯父さんの事だ。
「昔はもっといたらしい。このままでは祓える人間がいなくなる」
「それはそれでいいんじゃないかな?」
「そうかい? 霊障で人が死んだりしても?」
「わからない人には事故や自殺にしか見えない」
「殺人とかね」そう言ってグラスを空にする。無言で祐実にグラスを差し出す。
祐実は黙って酒を注ぐ。
どんだけ飲むんだ。
「洋介くんも祐実ちゃんも、それでいいと思ってないよね?」
「良いも悪いも、全部は救えない」
「そうだね。でも、僕たちみたいなのが増えたら救える人も増えるかもね?」
「それでも祐実は関係ないだろ。霊力が強いものどうしの子供だからって、霊力が強いとは限らない。逆もある。俺の父は祓えないし、母に至っては一般人だよ」
「そうかもしれない。でもそうじゃないかもしれない」
「他を当たって」
「んー、残念ながら同年代に祐実ちゃんほどの子はいないな」そう言って酒を飲む。
「祐実ちゃんが美人なのもお嫁さんにしたい理由だね」そう言ってグラスを空にし、祐実に微笑みながらグラスを差し出した。
「飲み過ぎ。酔っぱらい」祐実はそう言いながらもお酌をする。酔っぱらいの戯言で押しきるつもりのようだ。
「一成兄さん。祐実の霊力目当てなら反対させてもらう」俺はそう言った。そして祐実を見て、「祐実が美人だからっていう理由だけだったら、祐実次第だったけどね」と続けた。
祐実は驚いたように俺を見る。そして不機嫌そうな色を浮かべた。
さっきまでは、軽く流してたのに?
俺が不思議そうな顔をすると、祐実は突然俺の脇腹をグーで殴った。「一成兄さんと結婚なんかしない!」
「痛てっ! なんだよ祐実」
「ふんっ!」とそっぽを向く。
なんだよ。
「洋介くんは要らないことを言わない方がいいな」と一成が楽しそうに苦笑する。
「一成兄さん、心配要らないよ。兄さんの子供があとを継いでくれるから」と不機嫌そうに言った。
何を言い出すんだ。焦る。
「それは?」
「兄さんの彼女は強い霊力を持ってるから」
俺への嫌がらせにしては、たちが悪すぎる。
「彼女さんは祓える人だよ」
一成の顔から微笑みが消えた。




