日常
睦瑞希はキッチンで俺の母と料理をしていた。
今日は朝から妹の祐実と対人練習した。昼前には家に帰って瑞希を迎える。
瑞希が母に料理を教えてもらう約束をしていたから。
瑞希は自分のエプロンを持ってきていた。昨日も見た、可愛いエプロンだった。
俺はキッチン横のテーブルに座って瑞希を見ていた。
続き部屋のソファーに父と妹の祐実が座っていた。
父は本を読んでいて、祐実は不機嫌そうな顔でこっちを見ている。
瑞希はたまに俺を見て笑いかける。俺も微笑みを返す。
祐実の視線は完全に無視していた。
俺の妹は暇人過ぎる。
食事が終わってから、瑞希を俺の部屋に連れ出した。
今日も母が祐実を止めていた。
「お疲れ、座って」瑞希にクッションを勧める。
彼女はベッドを背もたれに床に座る。
俺は彼女の横に座る。
「だっこ」
「おいで」
彼女は揃えて伸ばした俺の足の上にまたがった。イスの代わりにするかと思ったら、対面でまたがった。俺の首に両腕を回して抱きついてくる。
俺も彼女の背中に腕を回して抱きしめた。
「ムリしないで」
「ムリするよ」
「そうか」
しばらく彼女の背中を撫でる。
「来週はどこか出掛けようか?」
「うん」
「どこがいい?」
「洋介の行きたいとこ」
「動物園とか運動公園とか」
「洋介、そういうとこ行きたいの?」
「瑞希が喜びそうなところに行きたいかな」
「じゃあ、運動公園」
近場でお金の掛からなさそうなところを選んだ。
「お弁当作る」
「それは楽しみ」
「洋介、大好き」
「ありがとう」
「好きって、言って」
「好きだよ、瑞希」
「キスして」
「……」
「どうして黙るの?」
「いや、突然だったから」
「だって、一度もキスしてくれない」彼女がすねたように言う。
仕方ないな。
おでこに軽くキスをする。
彼女が呆然とする。そして、
「子供扱いしないで」と真顔で言った。
「子供だよ」
俺の返事に彼女の目が怒りに揺れる。
子供がして良い目じゃないよ。
俺は彼女の目を正面から受け止める。
彼女は、はっとして、目を瞬く。再び開いた目はすねた目になっていた。
そして俺の首筋に顔を埋め、肩口に噛みついた。
「痛い! 痛い!」彼女の頭をつかんで離そうとしたが、噛まれた肉が引っ張られて痛いだけだった。
「瑞希、ごめん」両手で彼女の背中を抱き締める。
しばらくして彼女は噛むのをやめた。そのまま肩口に顔を埋めたままなにもしゃべらなかった。
彼女の頭を撫でる。
「瑞希、大好きだよ。大切にしたいと思うくらい」




