瑞希の家族
「洋介! いらっしゃい!」
睦瑞希は玄関のドアを開けたとたんに抱きついてきた。
予想していたので、軽く受け止める。
土曜日の昼前。
先週の日曜日に瑞希が高坂家に挨拶に来たので、今日は俺が睦家に挨拶に訪れた。
瑞希は先週の土曜日に俺と会ったときに着ていた服だった。つまり頑張って大人びた服装。
この服は前日に慌てて買いに行ったらしい。
俺も昨日慌てて買い物に行った。
スラックスや白のカッターシャツはあったが、ネクタイが気に入らなかった。
学生服がブレザーなのでネクタイはあるが、それでは安っぽいと思えた。
それで母とネクタイを買いに行った。
瑞希が喜びそうなイルカが何匹か泳いでいるキャラクターネクタイを買った。普通のネクタイよりかなり高かった。
それと手土産も買った。
「瑞希、離れてくれる?」
「うん」彼女は少し離れる。
「あ、イルカさん!」さっそくイルカ柄のネクタイに気づいて、ネクタイを持ってはしゃぐ。
ネクタイを引っ張んなよ。
畳の部屋に通された。
作法に則って座についてから、挨拶をする。
瑞希の両親は二人とも普通のサラリーマンだった。
座礼の作法がわからず、なんだかわからない返礼をしてきた。
しまった、もっと普通に挨拶しておけばよかった。
「高坂さんは、お茶か何かされてるのですか?」
「いえ、本家が神社ですので」
つまり平安時代の作法なので、現代に合っているかは知らない。
「楽にして」と正座を解くように勧められたが、「慣れてますので」と断った。
「洋介、神社なの?」
「本家がね」
「へー」
「今までの流れでわからなかった?」
父はちゃんと神道と仏教の思想から、霊と転生が相容れないと説明したはずなんだけどね。
「うん」
ま、子供だからね。
「霊は神道思想、転生は仏教思想。わかった?」
「わかんない!」元気に返事された。
ま、子供だからね。
「瑞希は神主さんのお嫁さんになりたいのかな?」瑞希の父が尋ねる。
「ううん。洋介のお嫁さん!」
「神社は本家のいとこが継ぎますので、僕は奉職しないですね」
「無視しないで!」
昼前に訪れたのは食事に招待されたからだ。
瑞希は彼女の母を手伝って食事を並べる。
食事を勧められる。
一礼一拍手して「いただきます」をした。
瑞希も真似をした。さすがに慣れたみたいだ。
唐揚げやスコッチエッグ等の揚げ物が多かった。手間が掛かっている。て言うか好物。
「瑞希も手伝ったの?」
「うん。洋介の好きな料理。洋介のお母さんに教えてもらったから!」
「そう。ありがとう。おいしいよ」
彼女は嬉しそうに笑う。
食事は和やかに進んだ。うちの食卓より賑やかだった。おおむね瑞希が賑やかだ。
食事が終わり、一礼一拍手で「ごちそうさま」をする。
瑞希も真似した。
「お粗末様でした」瑞希の母が言った。
瑞希は黙っていた。
俺の母の作法を覚えているようだった。
瑞希の頭を撫でた。




