FPSの反省会
「ヨウ、待って援護するから!」
「いや、待て!」
「きゃんっ!……、兄さん、死んじゃったよー」
妹の祐実が操るプレイヤーキャラは、俺の目の前に出た瞬間にヘッドショットで死んだ。
「ユミの出落ち感、すごいよね」ボイチャの向こうから吉川結衣が感心したように言った。
「ユミ、真っ直ぐ出ないで。読まれてるから」今度は岸田洋。
「うぅ……」祐実がうなる。
「ユミ、配信とかしたら人気出んじゃない? 死ぬとき可愛いから」結衣が面白そうに煽る。
「私より下手なやつが何言ってるんだ」
「そんなに変わんないじゃん!」
祐実と結衣の戦績は大して変わらない。少し祐実が上か。
俺は二人よりはましな戦績だった。特に救助と生存時間は岸田くんにひけをとらない。
現在、待機場で反省会と言うか雑談。
あれからほぼ毎日のように4人でネットに潜っている。FPSも日課のようなものだ。結構楽しい。
あと毎日するようになったことは、放課後に睦瑞希とデートすること。待ち合わせは学校から少し離れたところにしたが、この前一度正門で抱きつかれた。
気まぐれらしい。
しなくなったことは、三塚瑠璃との会話。あれから避けられている。どうして良いかわからないので、しばらく距離をとることにした。
瑠璃は共通の友人の飯島勇人と、たまに話をしている。今は勇人に任せることにしている。
「結衣、今度またお昼ごはん誘って」結衣が祐実にねだる。
「あー、いいけど」
「明日ね」
「はいはい」それから思い出したように、「あれから瑞希と話したか?」
ん? 何で瑞希の話題を出すのか?
「んー、話してない」そして、少し間を空けてから、「ヨウに怒られたくないから」と弱く言った。
「怒らないよ?」俺、怒ってないよね? この前は、ちょっときつく言い過ぎたか?
「ヨウ……」結衣は話しかけてきたが、言いよどんで黙ってしまう。
みんな口を出さずに、結衣の話を待つ。
「ヨウの彼女、いじめたことあるのに、ヨウは怒んないよね。それどころか優しくしてもらってるような気がする」
ああ、それね。
「俺の彼女をいじめたことは許さないよ。だから謝るな」
結衣が、いや、みんなが息を飲む。
「でもユイにはいいところもあるよ」
「……何?」
「ん……、誰も正しくは生きられないし、間違いはおかす。誠実な人はいない。でも、いや、だからこそせめて自分の大切な人にだけは誠実であるべきだ」
「ユイは自分の恋には誠実だ」
俺の隣で祐実が不安そうに俺を見ていた。
何だろう?
「うん。ありがとう、ヨウ」結衣は涙声でそう礼を言った。
俺は誠実だろうか?
瑞希は誠実だろうか?
彼女はいつでも自分の恋に誠実だ。自分の恋以外の全てを省みない。




