悪い委員長
「洋介、何か機嫌が良いな」
月曜日の教室。ホームルームが終わって帰る時だった。
友人の飯島勇人が後ろの席から声をかけてきた。
「そうか?」
「なんか楽しそうだ」
「機嫌良いのか?」俺は機嫌が良いのだろうか?
「何かこれから良いことあるのか?」
「予定はある」機嫌が良くなるような予定だろうか?
楽しそうに見えるなら、そうなんだろうな。
「デートだからかな?」
「妹ちゃんと?」
「いや、ちがう子と」
「何? ホントにデートかよ」
いや、妹とだってデートだろ。
「付き合うことにしたんだ?」
「ああ、この土曜日にな」
「そうか、おめでとう。委員長、やっとかよ」勇人はとても喜んでくれる。
でも、委員長ってなんだ? 三塚瑠璃の名前はどこからでてきた?
「瑠璃は関係ないだろ?」
「え?」勇人が固まる。
「?」
「私の事、呼んだ?」
委員長である瑠璃が近づいてきた。
「あ、いや」勇人は言葉を紡げない。
「いや、俺に彼女ができたって話をしてただけ」
瑠璃が固まった。表情が消えて、動かなくなる。
「瑠璃姉?」どうしたんだ?
「あー、女の子の友達って意味じゃなくて、恋人ってことかな?」勇人が念のためといった感じで訊いてくる。
「そうだよ。ちゃんと親にも紹介したし、来週は彼女の家に挨拶に行くつもりだ」
「そうなんだ」勇人は何故かとても困った顔をしている。そして瑠璃を不安そうに気にしている。
ホントに瑠璃はどうしたんだ?
「委員長、大丈夫か?」
「瑠璃姉、気分でも悪いのか?」
瑠璃は震えて落ち着かない目で俺を見る。何かしゃべろうとして口を開きかけるが、「うっ……」と嗚咽のような声しか出なかった。
彼女は唐突に背中を向けると早足で立ち去る。そのまま教室から出て行った。
「瑠璃?!」それに気付いた瑠璃の友人が慌てて追いかける。
「何なんだ? どうしたんだ、瑠璃は……?」意味がわからない。
「ん……」勇人が困ったようにうなる。そして、「これは委員長が悪い。お前は悪くないよ」と、俺に言った。
いや、俺が悪い要素は一つも無かったよな?
「わかんないならいいよ」と言って、勇人は部活に行った。
いや、さすがにわかったけど。
そうだったら、何で今まで弟扱いしてきたんだよ。
ちゃんと言ってくれたら、瑠璃と付き合っただろうか?
付き合ったかもしれない。
だが、今さらそれを考えても仕方がない。
三塚瑠璃は自分の恋に真摯ではなかった。
そう言う事だ。
俺は睦瑞希が待っている校門に向かった。
校門の前で、中学の制服を着た瑞希がいた。俺を見つけて駆け寄りたそうにしていたが、敷地には入ってこなかった。
俺が学校の敷地から出たとたんに抱きついてきた。
「洋介! 洋介!」とても嬉しそう。
いや、勘弁してくれ。
周りの視線が痛い。




