独り占め
「兄さん! 兄さん! 助けて! 撃たれてる! ヤダヤダ! あっ……」祐実が死んだ。
睦瑞希が俺の家に挨拶に来た日。妹の祐実はずっと不機嫌だった。
それでもゲームに誘うと、いそいそとノートパソコンを持って俺の部屋にやって来た。
岸田洋と吉川結衣もネットにインしている。今プレイしているFPSのランクマッチは3人チームなので、一人づつ休憩しながら交代で回していた。
チームが全滅して待機場に戻ってきた。
「ユミ、今日はプレイが雑だよ。ちゃんと集中して」岸田くんが強く言った。
「わかってるよ」祐実が不機嫌に答える。
「ユミ、何かあったの?」結衣が尋ねた。
「別に」と、やはり不機嫌に返す。
「ああ、俺に彼女ができたからすねてるんだ」
「すねてねーよ! 何言ってんだ! ざけんな!」祐実が怒鳴ってくる。
ボイチャとリアルのダブル音声で耳がキンキンする。
「え?! ヨウ、彼女できたの?」結衣が驚く。
「いや、ヨウに彼女いなかったのも驚き」岸田くんが言った。彼の中で俺はモテる男らしい。
何でそう思うのかはわからないが。
「えー、ショックー」結衣が不満そうに言う。
「ユイには関係ないだろ。お前彼氏いるだろ」
俺に彼女がいて何が不満なのか? 結衣には、岸田くんというイケメンな彼氏がいる。
「いや、わかるよ、ショックなの」岸田くんも不満そう。
「何言ってんのお前ら」意味がわからない。
「だってヨウを独り占めなんてずるい」と結衣。
「そうだね」と岸田くんも同意。
「いやホント、何言ってんの?」
「黙れよ。兄さんは私の兄さんだから」祐実もドスのきいた声で参戦。
いや、言ってることは正しいんだけどな。
「ねえ、ヨウの彼女ってどんな人? 美人? 可愛い感じ? きっと素敵な人よね?」結衣が訊いてくる。
「大人の女性ですか? ヨウに釣り合えるような人って」
「ハードル上げんな。お前らも知ってる子だよ」
「? 誰? ヨウにふさわしい人なんて思い付かない」
「うん、釣り合いそうなのはユミくらいしか思い付かない」
「妹はダメだろ、さすがに」
「何でだよ!」祐実が抗議する。
いや、ダメだろ。
「ユミ、落ち着いて。声に出てるから」岸田くんが祐実をたしなめる。
祐実は、ハッっとした顔。心の声だったのか。
「これ以上ハードル上げるの禁止。あとお前ら、俺の事好きすぎだろ。ありがとう」
みんなが静かになったところで、
「睦瑞希だ」と簡潔に言った。
「え?」結衣が静かに困惑した。
「意外。あー、でもヨウは顔とか見た目で選ばないか」と岸田くん。
あれ? 何か俺の彼女をディスってない?
「ヨウ」結衣が言いにくそうに口を開く。
「私、睦にひどい事した。まだ、謝ってない。どうしよう?」不安そうに訊いてくる。
「謝らなくていい」俺はできるだけ冷静に答えた。
「えっ……」結衣の怯えたような声がボイチャから返ってきた。




