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瑞希のデート

 睦瑞希はスマホを睨んだまま固まっていた。

 自室のベットの上に、座っている。

 メールの送信ボタンを押すだけで30分はためらっている。


 金曜日の夕方。

 岸田くんにとり憑いた悪霊を祓ってから2日たっている。

 あの時借りたハンカチを返さなければならない。

 いや、ハンカチは口実に過ぎない。

 あの人に会いたい。


 あの人の生まれ変わりの、高坂洋介に会いたい。


 送信ボタンを押す。


 そして不安に襲われる。


 あの人は生まれ変わりを信じない。無視されたらどうしよう。


 返事は早かった。だが、ハンカチは妹に学校で渡すようにとの事だった。

 もう一度メールを送る。

 こんなことではあきらめない。


 だって千年も待ったのだから。


 今度は約束を取り付けた。明日の11時に駅前。


 そこで気がつく。


 デートに着ていく服がない!



「お母さん! 服買って! 明日デートなの!」


 母は車を出して服を買いに連れていってくれた。食事は後回しだ。


 ショッピングモールに着く。閉店まで1時間と少し。

 量販をさけ、ショップに入る。若い人向けで、小さなサイズも揃っているところ。

 子供服の店の方がサイズが合うのはわかっている。


 店員に希望を伝えた。

 高校生とデートして釣り合う服。ガーリーもボーイッシュも求めていない。


 母はデートの相手が高校生と知って驚いていたが、そんな話しは後だ。

 何とかそれらしい服が買えた。靴も髪飾りも揃えた。いつも着ている服とは値段の桁が違った。




 当日、駅に早く着いた。あの人を待たせるわけにはいかない。しかし1時間も早いのはやりすぎだった。

 それでもずっと私はあの人の家の方向を見ていた。あの人もきっと早く来る。


 あの人は来てくれた。

 思わず抱きつく。


 ハンカチを返すと、あの人は直ぐに帰りたがった。


 でも思い直して食事に誘ってくれた。私が泣きそうになっていたから。あの人は生まれ変わっても優しいままだった。



「睦さん、今日は大人っぽいね」

 あの人の言葉に足が止まる。


 あの人は優しい。

 こんな子供にも、ちゃんと相手してくれる。

 私が大人に見られたいのをわかっていて、大人っぽいと言ってくれる。


 何でこんな子供なんだろう。何でこんなにちんちくりんなんだろう。何でちゃんと釣り合えるような年齢に生まれ変われなかったのだろう。

 出会えたのがもっと大人になってからだったら……。


「睦さん、ごめん。落ち着いて」


 私は泣くのをがまんしてあの人に背を向ける。

 ハンカチで涙を拭く。


 くやしい、くやしい……。

 あの時の私は、あの人にもっとふさわしかった。


 こんな子供じゃ嫌だよ!




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