瑞希の夢
睦瑞希は夢を見ていた。
夢の中で瑞希は泣き叫んでいる。
動かなくなったあの人を腕に抱いて。
夢から覚めた。
涙がまだ止まらない。
夢はあの日から毎日見る。あの人と再び出会い、自分の力の使い方を思い出したときから。
あの人と出会えたのに、どうしてこんな夢ばかり見るのだろう?
もう過去にとらわれる必要はない。あの人と、高坂洋介と未来だけを見つめていこう。
そう、思っているのに。
違うのだろう。そうではない。あの時選ばなかったもうひとつの選択。
あの人の仇をとること。
あの時の選択を間違っていたと心のどこかで思っているのだろうか?
今でもどちらが正しかったのかわからない。
今となっては、考えるだけ無駄なことだ。
……もしも。
もしも、生まれ変わったのが私とあの人だけではなかったら。
もしもあの男も生まれ変わっていたら。あの人を殺した仇の生まれ変わりが私の目の前に現れたら?
これも考えるだけ無駄なことだ。
躊躇なく殺すに決まっている。
岸田くんにとり憑いた悪霊を祓った次の日。
あの人の妹が教室にやって来た。
「妹さん、昨日はありがとうございました」何を言ってよいのかわからなかったので、とりあえず食事のお礼を言った。
あの人の妹は岸田くんの事を尋ねてきた。今日は休んでいる。
「なあお前、放課後、岸田の様子を見てきてくれないか?」
何を言っているのだろう?
彼に憑いた悪霊は祓った。彼の事はもうどうだっていい筈だろうに。
「じゃあいいや。もう一人の方に頼むから」
吉川結衣の事らしい。
「吉川か。呼んできてくれ」
あの女とは口もききたくはないが、面倒なことを押し付けられるなら構わないか。
自分の席に戻ると、友人の早瀬美羽が心配そうにしていた。
私の数少ない、いや、一人しかいない友人だ。
あの人の妹は学校では怖い人と思われている。
美羽に心配ないと答えた。
昨日わかった。
ただのお人好しだ。
あの人と同じで。
そして次の日。
「え? 結衣、岸田くんと付き合うことになったの?」
教室じゅうに声が響き渡る。
教室で一番騒がしいグループだ。
吉川結衣が何故か私を見る。
何のつもりだろう?
再度、結衣が私を見下すような目で見る。
瑞希は暗い感情を覚えた。
更に昼休み。
「結衣ちゃん、お客さん」
この一言でクラスがざわつく。
見るとあの人の妹がいた。
吉川結衣がお弁当を持って、嬉しそうにあの人の妹のところに行く。そして、
「お待たせ、ユミ」と言った。
瑞希は怒りでからだが震えるのを感じた。なぜあの女が、あの人の妹と仲良くしているのか。
私をいじめたあの女が、……。
私のあの力は、生きている人間にも使えるのだろうか?




