瑞希の料理
しばらく話をしてから、瑞希を俺の部屋に連れていった。
彼女が緊張しているのが見えたので、疲れる前にリビングから連れ出した。
妹の祐実がついてこようとしたが、母に止められていた。
「緊張した」瑞希が部屋に入ってすぐため息をついた。
「お疲れ、座って」
普段は床に座っている。彼女にクッション差し出す。
「イスもクッションも二づつあるんだね」
「ああ、祐実がよく入り浸るから」
「ふーん」彼女は何か不機嫌そう。
いや、妹相手に嫉妬とかするなよ。
俺は本棚から文庫本を取り出して彼女の隣に座る。今日は二人で本を読むだけ、という不思議なデートだ。
「俺のおすすめの本。読む?」
「読む」彼女は本を受け取って床に置く。それから自分のポシェットから文庫本を取り出す。
「私のおすすめ。読んで」楽しそうにすすめてくる。
ベッドを背もたれに、二人並んで本を読んでいる。
「瑞希」俺は彼女に声をかける。
「なあに?」甘えた声。子供みたい。いや、子供だ。
「いつもこんな本読んでるの?」日本の古典だった。
「うん」
「読みにくくない?」
「現代語訳だよ?」
「そうだね」
読みすすめてわかった。転生ものだ。古典って幻想小説多いものな。
「嫌がらせ?」
「うん」
うん、かよ!
俺は普通に話題の小説選んだのに。
仕方ないので読みすすめる。
彼女は俺に持たれるような体勢で読んでいたが、そのうち寝転がって俺の膝を枕にした。
と思ったら本を落として寝息をたて始めた。
緊張してたんだろうな。
しばらく彼女の寝顔を見ていた。
胸が呼吸に合わせてゆっくりと上下している。仰向けに寝ていると、真平らにしか見えない。
まだ子供だ。
俺はそのまま本を読み進めた。
「瑞希、起きろ」
11時30分になるところだった。30分以上寝てたか。
瑞希は目を覚ます。
今日の昼御飯はうちの家族と食べることになっている。瑞希は母に食事の手伝いを申し出ていた。
「あんまりムリするなよ」
「うん、ありがと」
俺はダイニングの食卓に座って、母の手伝いをする瑞希を見ていた。彼女は母に借りたエプロンをしている。
そして続き部屋になっているリビングのソファーに座っている祐実が、俺をにらんでいた。
怖い怖い。
父もソファーに座って本を読んでいる。祐実を見て苦笑したが、特に何も言わなかった。
「瑞希ちゃん上手ね。いつもお母さんのお手伝いしてるの?」
「たまにですけど」
瑞希と母は和やかに料理を進める。
いや、彼女は母に気に入られようと頑張っているのだろう。いろいろと本気すぎて怖い。
「瑞希ちゃんと料理できて嬉しいわ。祐実はぜんぜんお手伝いしてくれないんだもの」
「母さん、余計なこと言うなよ!」祐実に飛び火していた。
昼御飯は俺の好物ばかりだった。
「瑞希ちゃんが洋介の好きな食べ物教えて欲しいって言うから。また、教えてあげるからね」
「はい。お母さん、お願いします」彼女はキラキラ笑顔で答える。
いや、嬉しいんだけどね。ちょっと怖いかな……。
特に祐実の視線が。




