瑞希の挨拶
日曜日の午前中。もうすぐ10時になる頃、玄関のチャイムがなった。
リビングで父と母と一緒にいた俺は、玄関に向かう。
玄関を開けると、緊張した面持ちの睦瑞希が立っていた。
「おはよう」
「おはよ」
俺が声をかけると、瑞希は少し恥ずかしそうに微笑んで返事を返した。
昨日から付き合いだしたばかり。なんか照れくさいのか。俺もちょっと照れくさい。
今日も彼女は頑張って大人っぽく見える服を着ていた。大学生くらいが着ていそうな感じ。黒の膝より長いゆったりとしたスカート。あまりハデではないが女の子らしい飾りがついた白のブラウス。それに焦げ茶色のカーディガンを着ている。靴も焦げ茶色だ。髪にはなにも飾りがないが、髪の毛自体が綺麗に揃って跳ねていた。
今日は少しおとなし目にしている。俺の家族に会うのが前提なのだろう。
「上がって」
「うん」
彼女は紙袋を持っていたが、そのまま持っていてもらうことにした。
「あれ? 睦か?」
妹の祐実が2階から降りてきた。
「おはようございます」瑞希が挨拶する。
「え? あ、おう」祐実が戸惑ったように、半端な返事をする。
祐実を置いて、瑞希をリビングに通す。
父と母が立って出迎える。
「おはようございます。おじゃまします」瑞希が深々と頭を下げた。
「よく来てくれました。待ってましたよ」そう言って父も頭を下げる。
「これを、父に持っていくようにと言われましたので」瑞希が紙袋を差し出す。
「気を遣ってもらって悪いね」
「何これ?」祐実が悪い夢でも見ているかのような顔をした。
俺と瑞希は二人掛けのソファーに座っている。
父と母、それに祐実が3人掛のソファーに座っていた。
ローテーブルをL字に囲むような配置になっていて、客の瑞希とホストの父が隣に来る席順で座っている。
「洋介、妹さんに言ってないの?」瑞希が小声で訊いてくる。
「あ、うん」
「昨日のうちに言っておいてって、言ったよね?」
「ごめん」言いにくかったんだよ。
だってほら、怖いし。今も祐実が俺達を睨んでるし。
「まあまあ瑞希さん、怒らないで」父がなだめる。
俺は人数分出された麦茶に手を伸ばす。緊張してる。特に妹が怖い。
「確認だけど二人はいつから付き合っているの?」父が尋ねる。
「昨日からお付き合いさせていただいています」
「それはそれは、早速に挨拶に来てくれてありがとう」
「いえ」
「ところで知り合ったのはいつだったのかな?」
「千年ほど前です」
「5日前」俺はすかさず訂正する。
「知り合って5日とは早いね」父が少し呆れた感じで言った。
「無視ですか?!」瑞希が抗議した。




