表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/98

瑞希の食事

 昼御飯時まであまりにも早すぎたので、とりあえず歩いていた。

 俺が目当てにした店は、バスでも使うような距離だったが急ぐ必要もない。


 睦瑞希は何の文句もないような幸せそうな顔をして、俺の右手にしがみついている。

 たいした会話もしなかった。喋ればお互い不快になるような話題になるような気がした。


 目当ての店に着いた。開店していたので昼食には早いが入ることにした。

 当然のように客は俺たちだけだった。


 窓際の4人テーブルに座る。

 彼女は俺の腕を離さなかったので、並んで座ることになった。

 俺は左手だけでメニューを開く。彼女の両手は俺にしがみつく事でふさがっていたので、手を出してこない。


「何にする?」

「ご主人様のおすすめは何?」

「この店ならスパゲッティかな。バジル系の」自然に会話が成立した。おい待て。「あと、ご主人様はやめろ」


「二皿違うの頼んで半分こしたい」

「いいよ」

 バジルとトマトソースの二皿とサラダを注文する。

 取り皿は3枚づつ出してくれた。


 当たり障りのない、食べ物の話題で待ち時間を過ごす。

 暇潰しにスマホでゲームでもしたい。この話題の無さ、いや、どの話題が地雷になるかわからなさが怖い。


 先にサラダがでる。

 彼女は腕を離さない。

 さすがに左手だけで箸はもてない。

「睦さん、食べよう」

「はい」返事はするが、腕を離さない。


「手、離して」

 しばらく待って、やっと彼女は名残惜しそうに手を離した。

 俺は一礼し、あまり大きく音を立てないように一拍手して「いただきます」と言った。彼女も真似をして、「いただきます」をした。




 食事が終わるとすぐに彼女は腕にしがみついてきた。

「混んでくる前にでようか」

 彼女は手を離さない。

「ごちそうさま、が、できないから離して」片手では拍が打てない。

 彼女は手を離す。


 さすがにこの愛情表現はやりすぎだ。ちょっとイラつく。

 何をそんなに怯えているのか。


 会計する間も、腕に抱きつかれたままだった。右手の動かせる範囲が狭すぎてやりにくい。


 店をでる。


「睦さん、なにかやりたいことある?」

「ずっとご主人様といたいです」


 用事がすんだから帰ろう、が、できない。

 ていうか、

「だから、ご主人様はやめろ」

「なんと呼べばいいの?」不満そうに訊いてくる。

「普通に名前で呼べばいいだろ」

 瑞希は少し考える。

「洋介?」

「そうだよ」

「洋介」

「ああ」

「洋介」

「何?」


 あれ? 呼び捨てか?

 ま、いっか。

 なんか嬉しそうだし。


「洋介。ずっと一緒にいたい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ