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瑞希のコーデ

 俺と瑞希は並んで歩いていた。


 彼女は緊張した面持ちで、少しうつむき加減。


 ショートカットの髪と男の子かと思うばかりのスレンダーな体型。背も低く、年齢より幼く見える。


 その小学男子のごとき彼女は、目一杯頑張って着飾っていた。

 コルセットばりの腰回りが幅のある黒のスカートは、フォーマルかと思うような光沢で膝上の丈を広げる。靴も合わせて、光沢のある黒。

 一転して白のブラウスは透過性の高い柔そうな生地で、ゆったりとした長袖。袖や襟はヒラヒラした意匠が施され、役に立たなさそうな胸ポケットにはまるで大学のクラブチームのようなフォーマルに見えるようなマークが施されている。

 ショートカットの髪には、地味に見える黒だが光沢と凝ったデザインのカチューシャが女性であることをアピールしている。

 ポシェットも子供用ではない。大人があえて可愛いデザインの小物を持ったようなスマートなものだ。


 まあ、なんだ。

 男の子にしか見えない外見を、少しでも大人っぽく、女性っぽく見せるために、頑張った感じ。やりすぎてちぐはぐな印象にならない範囲でのギリギリだろうか。


 これは話題にした方が良いのかな? しかし、変に期待させるのもな。

 難しいところ。


 しかしどうみても背伸びして頑張ったんだろうな。


「睦さん、今日は大人っぽいね」多分これが言って欲しい言葉。


 彼女は驚いたように立ち止まって俺を見る。その瞳はたまった涙でキラキラしていた。


 待って! 何でこれだけのことで、そこまで感極まるの?

「睦さん、ごめん。落ち着いて」俺が慌ててしまう。


 彼女は泣くのをがまんして、口を強く結ぶ。涙がこぼれないように目を見開く。

 少し震えてから呼吸を整え、静かに背を向けてうつ向いた。


 ポシェットから取り出した自分のハンカチで涙を拭く彼女の背中を、黙って見ていた。


 彼女はポシェットにハンカチをしまうと、こちらに向き直る。まだ涙目ではあったが、子供っぽくならないように気を付けながら微笑んだ。


「ごめんなさい。ちょっと嬉しかったのです」

「あ、うん」なんだか申し訳なくて目線を反らす。

「あっ、……」それが彼女を不安にさせたのか、左手を俺の方に伸ばしかける。

 そして、それ以上近づく事ができずに手をとめた。


 目をそらしただけで彼女を傷つけてしまうのか。

 俺は彼女の方に右手を差し出し、微笑みかけた。


 彼女は俺の手を思考が止まったような表情で見てから、嬉しそうに腕に抱きついた。


 手をつなぐ程度のつもりだったのだけど。


 俺はなにも言えずに黙ってしまった。




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